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CULTURE

渋谷鉄道散歩No.4 渋谷ダンジョン地下編ー地下5階に潜む「地宙船」の秘密ー

こんにちは。中学生ライターのたいちです。前回の記事「複雑化する渋谷ダンジョンを攻略する」では、渋谷駅の地上を4つの方面に分けて攻略していきました。地下編となる今回は、地下鉄駅の深さが決まる理由について、また、渋谷駅地下に潜む謎のアートについて、お伝えします。

渋谷駅はやっぱり深かった

東急東横線渋谷駅が、副都心線との相互乗り入れ開始に伴って地下化したのは2013年。僕はまだ保育園児でした。まだ小さかったのですが、ホームを出た時の景色が大きく変わったこと、また、ホームから地上までが急に遠くなったことを覚えています。遠く感じたのもそのはず、東横線渋谷駅があるのは地下5階なのです。一般的なビルやデパートでも、「地下5階」はあまり聞かないのではないでしょうか。その深さを改めて味わうために、ホームから地上まで上がってみます。

ホームから、まずはエスカレーターを上がります。(B5→B4)
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広いコンコースを上がります。(B4→B3)
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そしてエスカレーターを上がれば、改札口です。(B3→B2)
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改札口は地下2階にあるので、ここからさらに2階分のエスカレーターを上る必要があります。(B2→B2→1階)
IMGP0233やっと地上につきました。
改めて上がってみると、東横線は本当に深いですね。小さい頃の自分が「遠い」と感じたのも納得です。

地下鉄駅の深さはどうやって決まる?

渋谷駅の深さに感服したところで、気になるのは他の駅との比較です。
ここで、地下鉄駅の、深さのランキングを見てみましょう。

1.六本木駅:大江戸線 42.3m
2.東中野駅:大江戸線 38.8m
3.国会議事堂前駅:千代田線 37.9m
4.後楽園駅:南北線 37.5m
5.新宿駅:大江戸線 36.6m
6.永田町駅:半蔵門線 36m
7.東新宿駅:副都心線 35.4m
8.中井駅:大江戸線 35.1m
9.雑司が谷駅:副都心線 33.8m
10.中野坂上駅:大江戸線 33.4m

なんと、渋谷駅はランク外でした。ちなみに渋谷駅の深さは約30m程度です。

渋谷駅は、道玄坂や宮益坂、金王坂を下った、いわば「渋谷」という谷の谷底にあります。もともと高低差があるため、地下に掘り進む必要がなかったのではないかと僕は考えています。

さて、このランキングを見ると、大江戸線の駅のランクインが非常に多いことがわかります。なぜ大江戸線の駅は地下深くにあるのでしょうか。

答えはずばり「大江戸線が新しくできた路線だから」。下図を見ると、新しい路線ができるたびに、どんどん深く潜っていることがわかります。新しい路線は、既存の地下鉄路線や水道管などをくぐって通す必要があるため、地下深くに建設されるのです。
スクリーンショット 2021-08-10 9.50.38(国土交通省https://www.mlit.go.jp/common/001187587.pdfより)
東横線の渋谷駅も同じように、既存の路線(半蔵門線)を避けるために深くなったと考えられそうです。

通りかかるたびに気になる半球の秘密

さて、僕には前々から気になっていたものがありました。それは、ヒカリエ改札付近を通るときに見かける、謎の半球型の構造です。皆さんも見たことがありませんか?
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これは表参道ヒルズの設計などで有名な安藤忠雄が設計したもので、正式名称を「地宙船」といいます。地下の宇宙船、ということでしょうか。
渋谷駅を歩いてみると、他にも似たようなカーブを描いた構造があちこちにあることがわかります。
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実は、これらを合わせると・・・
IMGP0312-2こんな風に、一つのきれいな形ができるのです。渋谷駅の渋谷ヒカリエ改札付近に模型のパネルが展示されています。ぜひ見つけてみてください。

地宙船の隠れた機能とは

このように洗練されたデザインの地宙船ですが、単なるアート作品ではありません。実はある機能が隠されているのです。地宙船の真の価値を知るために、駅構内のある場所に行ってみましょう。

ヒカリエ改札から地下4階(ホーム階の1つ上)へ、そこから「田園都市線ホーム」と表示のある方面に進んで行くと・・・
IMGP0317左側に薄明かりが見えます。天井に隙間があいているようです。

地宙船はエコな換気設備

実は、この天井にあいた隙間と地宙船には同じ役割があります。それは自然換気の役割です。

地宙船の正体は巨大な吹き抜け。ホーム天井の隙間も、吹き抜けにつながる空気の通り口です。列車の冷房装備から出される熱が地下に溜まってしまうのを防ぐため、このような自然換気の仕組みをつくって緩和しているのです。

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三層にわたって構築した楕円形の吹き抜けと地宙船の殻は開放感のあるデザインに加え、自然換気を効果的に機能させる役割を担っています。
列車から排出される熱い空気は楕円形の吹き抜けを上昇し東急文化会館跡地部分に設けられる「空堀(からぼり)」状の地下空間を解して外に排出され駅構内の温度上昇を抑制します。同時に外からの空気を取り込み換気が行われます。自然換気による環境負荷低減効果がはかれます。

比較的新しい駅だからこそ、環境に配慮した仕組みが充実しているようです。

地宙船の謎探検となった今回の取材を通し、地下が深いために空気がこもりやすいという課題が、技術とアートの両面で解決されていることがわかりました。ただの機能だけでなく見た目の面でも工夫をしているのは、駅が、旅行など楽しみのために利用する人も多い場所だからかもしれません。

みなさんの近くの駅にも、不思議な形の構造がありませんか?調べてみると面白い秘密があるかもしれないので、ぜひ注目してみてください。

たいち

taichi都内に住む中学生。小学校時代の塾があったので、渋谷には週に3日は通っていました。鉄道、歴史がもとから好きで、最近アウトドアに興味が出てきました。中学生になって行動が自由になってきたので、これからいろんな所に行ってみたいです。

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