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渋谷焼肉散歩No.1 「渋谷」の世界的知名度を「和牛」で底上げ。「炭治郎」と「サムライ」<後編>

和牛の美味しさを食べ放題で存分に味わえる焼肉店、「炭治郎」と「サムライ」。
気の合う仲間と訪れたい昔ながらの焼肉屋の風情「炭治郎」に、観光客や団体客の居心地の良さを追求した「サムライ」。両方のお店に共通するのは、鮮度と品質にこだわった「和牛」の肉の存在です。

後編では、最高級の和牛の味わい方と、焼肉店を経営する川嶋章さんのビジネスに焦点を当て、お伝えします。

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最強の食べ放題コース。主役の「和牛」はどれから食べる?

前編でお伝えしたように、「炭治郎」も「サムライ」も、アラカルトよりも食べ放題コースが川嶋さんの推しです。

「和牛ってどうしても高いというイメージがあって、10代や20代、場合によっては30代でも敬遠される印象があります。もっともっと和牛を庶民的、一般的に食べるものとして認知していただきたいと思っています。」

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方々食べ歩いて、焼肉に詳しい川嶋さん。提供している肉、特にA5 ランクにこだわった和牛には絶対的な自信があるようです。食べ放題コースのおすすめの楽しみ方をお伺いしました。

「まず、和牛のカルビ。初めに一口は食べてくださいね、でもカルビだけの食べ放題はあまりお勧めできません。脂が多くてたくさん食べられませんから。
次は上タン。タンは、柔らかくて一番美味しいところはだいたい2-3人前しか出せないものなんです。匂いもなくて、柔らかくて、美味しいです。希少価値があるので価格が高騰しています。
あとはハラミ。脂身と赤身の中間、歯ごたえがあってクセがない、っていうのが面白い。
ロースももちろんお勧めです。安いロースの肉はパサついたり固かったりしますが、和牛A5ランクのロースになると、サシが入って見栄えもよくて柔らかい。白いご飯と食べると、本当にもう最高です」

肉の旨みと白いご飯。聞いているだけで本当にお腹が空いてきます。食べ方にもコツがありました。

「最初は岩塩、一番元祖の食べ方で始めるのがお勧めです。肉そのものを味わって、飽きてきたら、タレをつけて楽しんでください。
あとはやっぱり、こだわっていただきたいのが焼き方です。鮮度に自信があるので、レアやミディアムレアがお勧め、両面しっかり焼く必要はありません。切り方や厚さによりますが、上ロースなどは3秒とか4秒、それぐらい。」

どうしても焼きすぎている人が多いそう。

「それが一番悩んでいるところなんです。焼き過ぎは美味しくないし、焦げたらもったいない。お客様の自由ではあるのですが、本来は一組一組、きちんと焼いて差し上げたいぐらいです。
本当に興味を持って質問してくださるお客様も中にはいらっしゃいます。そうなると、色々語りながら焼いてあげたり、こうしてみてください、食べてみてどうですか?とか、会話を楽しむことができるんですけど。」

炭治郎とサムライは、基本的にメニューは共通ですが、サムライのコースは少しお高め。スペシャルメニューが追加されているのが理由だそうです。

「そう、骨つきのカルビと極上タン一本焼きというのが限定になっています。
骨つきのカルビって、扱っている焼肉屋さんは限られています。単品のみの焼肉店でも、どこの店でも出せるわけじゃないんです。」

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「そして、極上タン1本焼き。牛タンは、タン先からタン元まで固さが変わってきます。コリコリして固いところから、だんだん柔らかくなって、最上級の柔らかい部分は、1本で3人前が限度のいわゆる最上タン。そのタンを一本丸ごとお出しするというパフォーマンスです。3-4人での注文をお願いしていますが、美味しさをわかっている人は、ぺろっと食べちゃいますね。」

希少価値がある部位は原価ももちろん高価。コストパフォーマンスで考えると最上コースはやはり一番お得なのだそうです。頑張ったご褒美、記念日のお祝い、特別な日に選びたいコースです。

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休みなしでも疲れは感じない。仕事は好きですね。

食べ放題のメニューを説明してくださる川嶋さんは、熱が入って、しかもとても楽しそう。肉談義はもちろんですが、ビジネスに対する真摯な熱意が見えて、言葉の端々から実力のあるビジネスマンであることがわかります。

「仕事は好きですね。熱意がないとやってられない、仕事だと思ったら無理かもしれません。食べ歩きが自分の趣味でもあるので、やりがいもあるし、疲れは感じません。正直、サラリーマンの方が疲れます。
サービスも管理も、人がいない時は自分が出るので、12月から休んでないですね。昨日も、満席の店を2人で回しました。」

休みなしに頑張っていても、疲れで消耗しない働き方。どうやったらその境地にたどり着いたのか、川嶋さんの経歴をお伺いしました。

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川嶋さんは中国のご出身で、日本の大学を卒業されて、中日のベンチャー企業にお勤めの後、独立して株式会社イースタイルを立ち上げました。BtoCのネットビジネスに始まり、共同出資で中国のレストランをプロデュースしました。独自の飲食店の開発に乗り出したのは新型コロナがきっかけだったそうです。

「中華のレストランが閉店となり、輸入関係が一切途絶えた時、今後何をやっていこうか、考えました。
私自身食べるのが大好きで、ラーメン店さんとか焼肉屋さんとか、美味しいお店を探す食べ歩きが趣味なんです。また、学生時代はアルバイトでレストランのサービスの仕事をしていました。リーガロイヤルとかマンダリンオリエンタルとかオークラとか、高級ホテルばかり。
食べるのが好き、美味しいものがわかる、サービスも経験している。やっぱり飲食店がやりたいと、改めて思いました。」

炭治郎やサムライを案内していただく時に、川嶋さんが「清潔感」とか「居心地のよさ」を意識されていたのは、高級ホテルでのサービスのご経験あっての視点かもしれません。

「業態にこだわりはなかったのですが、市場のリサーチをした結果絞ったのが、寿司屋と焼肉屋でした。焼肉はずっと食べ歩いてきて肉の良し悪しもわかってきてましたし、付き合いのあった肉の仕入れ先に「焼肉店をやりたい」と言ったら快く相談に乗ってくれました。」

そうして始まったのが、2021年のコロナ禍真っ只中、新宿歌舞伎町で居抜きの物件を改装してオープンした炭治郎でした。

コスト管理と差別化を重視。ターゲットは明確にしないと儲からない。

川嶋さんのお話を伺っていると、肉の美味しさを語る時の熱意と同様に、ビジネスに対する意識が常にピンと保たれているように感じます。

始めてまだ3年目にして5店舗をオープン。ハイスピードで成長してきたコツはどこにあるのでしょうか?

「個人経営ですので、コストは第一に重視しています。スタート時は投資金額をどれぐらい回収できるかが重要なので、居抜きの物件を狙ってお店を作るというのが私の考え方です。現在5店舗あって結構評判もよく、資金的に貯めてきたタイミング。積極的に拡大の方向に進もうというところです。」

見た目のこだわりや思い入れの強さで初期投資を上げることなく、居抜きの物件を活かして最低限の改装でスタート。賢明な判断です。

「新しいお店はどうしても、10何年も続いている老舗のお店とは知名度や口コミで勝負になりません。食べ放題に、プラスアルファとして和牛の食べ放題を入れることで、大半の店とは差別化できるんじゃないかと思います。」

提供する肉に対する絶対的な自信は、信頼の置ける仕入れ先との良好な関係にあるようです。炭治郎では、扱ってきた肉のラベルを数多く見せていただきました。

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「これからの商売は、焼肉店に限らず、差別化が絶対必要です。誰と勝負するのか、ターゲットが誰なのかをはっきりしないと、商売は儲かりません。
食べ放題のシステムも、お客さまに食べていただいて、本当に価値があるかどうかを判断してもらうような、そんな時代になりつつあると思います。」

狙った客層にどれだけの満足を提供できるのか。サービスを受け取る側もクオリティを重視し、偽物は淘汰され、正直な本物だけが生き残っていく世の中になってきているのかもしれません。

渋谷で起きている好循環。全てが詰まっている、センター街の存在。

「ビジネスの転機を迎えられたのがこの店、サムライだと思っています。」

渋谷についての印象をお尋ねすると、こう答えてくださいました。

「新宿でビジネスを始めた後、たまたまセンター街にいい物件があって渋谷に炭治郎をオープンしました。そこから商売自体が成り立ってサムライをオープンし、予想以上に海外からの観光客にも恵まれて、うまく行っています。コロナ禍の後で、昔に比べたら決していい時代ではないのに、本当にありがたいと思っています。」

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渋谷にお店を構えることになったのは、良い物件との偶然の出会いが発端とのことですが、その渋谷で、3店目をオープンする計画があるそうです。

「実は、センター街に今年の秋頃竣工予定の新しいビルに、3店目を出そうかと思っています。渋谷にお店を出したことでつながった縁から新しい物件を紹介していただいたり、どんどん好循環が起きているなと感じています。」

同じエリアにお店があると、マネジメントの面でもメリットが多いそう。

「私が元々持っているスキル、プラスこれまでの経験による人脈、そしてたまたまの大衆性が全部、渋谷のセンター街に詰まっているという感じがしています。将来的にはエリアを広げていきたい気持ちもありますが、でもまずは渋谷でもっともっとやっていきたいとい思っています。」

次のお店も焼肉店を検討されているそうですが、川嶋さんの頭の中には将来的な新しい展開も見えているようです。

「焼肉に限らず、焼き鳥とか中華、ラーメンや寿司にも興味があります。正直なところ、業態はなんでもありなんです。経営の仕方、売り方さえわかっていて、そして美味しい、美味しくないがわかれば、ハズレはないと思っています。「何をどこでやるのか」の大事な「どこ」が、自分の考え方を含めて、今は渋谷のセンター街が一番向いてるのかなと思っています。」

お客様を存分に喜ばせながら、ビジネスも成り立たせる、そんな活気あるコンセプトのお店なら、渋谷であっても渋谷を出ても、ぜひ足を運んでみたいと思います。

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和牛というブランドは、渋谷の知名度を上げる入口となりうる。

最後に、川嶋さんから見た渋谷の今後についてお聞きしました。

「日本の『渋谷』が、外国人を受け入れることでもっと盛り上がればいいなと思います。外国人に対して、優しいメッセージがもうちょっとあると面白いかなぁと。私のお店では英語を話すスタッフを入れたり、英語のメニューを作ったりしています。」

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「和牛というブランドは、渋谷の世界的な知名度を上げる入口になりうると思うんです。そんな中で、炭治郎とかサムライが貢献できたら嬉しいなと、そんな風に思っています。」

 

インバウンドを意識した炭治郎とサムライ。この2店は、外国から訪れた観光客同様、我々日本人にとっても、和牛の美味しさを味わい、再認識できる、格好の場所です。ぜひ一度、食べ放題コースで和牛を堪能してみてくださいね。

炭治郎 渋谷店
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13271689/
東京都渋谷区宇田川町30-3 アトラス渋谷ビル 4F
050-5589-2320

焼肉サムライ 渋谷店
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13289416/
東京都渋谷区宇田川町12-7 渋谷エメラルドビル 4F
050-5600-9974

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谷井百合子(たにい・ゆりこ)

taniiyuriko会社員からライターへ転向。腰の軽さと興味に乗っかる行動力で、ビジネストレンドやブックレビュー、食や旅にも題材を広げている。
興味のあるジャンルは、カフェ、本、料理、工芸、建築、など。渋谷界隈で出会った美味しいものや素敵なものを、テンションの上がった気持ちものせてご紹介します。

 

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