渋谷駅から歩いて5分ほど。オルガン坂から区役所に向かう路地に入ったところに、麺屋ぬかじはあります。
ここにライターの八田さんと、私、たかなしが行ってきました。
到着したのは午後3時半頃。この日、お店はランチタイムが午後4時までだったのですが、お店の前には3、4人ほど並ぶ人の姿が。渋谷で人気のラーメン屋さんと聞いていたので、早速それを実感することになったのでした。
まずはこだわりのラーメンとTKGをいただきました!
いよいよ私たちの順番がきて、メニューの中から「ラーメン」と「つけ麺」を選び、お店の中へ。
店内では、厨房に入った店主の貫井宏さんとパートナーの由美さんが真剣な表情でラーメン作りを進めていました。
席はカウンター席が7、8席ほど。お客さんはみなさん背中を丸くしてラーメンをすすっている様子。ああ、いいにおいに満ちています。
私たちが座ったのは、一番奥の席。目の前にはこんな小さなフクロウの置き物があって、「かわいい~」。
小さな花瓶に黄色い花が生けられていたり、グラスもおしゃれだったり、小さなところ一つひとつに目が行き届いていてそれが居心地の良さにもつながっているようでした。麺屋ぬかじのおふたりが大切にしたいことが何となく伝わってくる、そんな店内です。
お店の細やかな気遣いとこだわりに、私も「そういうところ大事にしたいな」と思っていたら、ラーメンがきました。
こちらがラーメン。
つけ麺です。
私はつけ麺を食べたのですが、クリーミーな濃厚スープが中太麺とよくからみあって、のど越しも絶妙で、「おいしい!」。
この濃厚スープ。後味がさらっとしているから、箸が進みます。麺もコシがしっかりとしているので結構なボリューム感だったのですが、全部食べることができました。
「濃厚だけどくどくなくて、最後までスープが飲める味わいを追求しています」と貫井さん。なんと7時間かけてスープを作っているのだそうです。
そしてチャーシューが厚い! 思わずそれを貫井さんに伝えると、「そこにもこだわっていて、薄くならないように気を付けているんです」と返してくれました。もちろん貫井さんの手作りで、肉厚ながらも柔らかくて、手間暇かけて作られているのがわかるほど。
ラーメンをおいしく食べた私たち、「ごちそうさま!」……ではないんです。実はここ麺屋ぬかじでは、生卵と白いご飯が無料でサービスされるのです。それを卵かけご飯にして食べるのが常連さんのもう一つの楽しみなのだそうです。そして、卵かけご飯、別名「TKG」というんですね。
見てください。この生卵のツヤ。ピカピカに光ってます。
この生卵に、自家製のさんま出汁の白醤油をかけて。
ごはんにかけるのですが、卵がとろっとろです。卵かけご飯、貫井さんも大好きなんだろうなと思いながら、「いただきます!」をして、おいしく食べました。おなかいっぱい!
自分が「うまい」と感じる味をベースに、何度でも食べたくなる味を追求
貫井さんたちが麺屋ぬかじをオープンさせたのは2010年4月。場所は世田谷区でした。当時はつけ麺からのスタートだったそうです。その後、ラーメンを生み出します。その頃はすでに濃厚スープを創り出していて、さらに味に改良を加えていった結果、今のこだわりの濃厚スープができあがっていったと言います。
「ベースは最初から自分がうまいと思える濃厚スープでした。ただ、世田谷は女性や高齢者の方が多かったのもあって、みなさんに喜んでもらうために濃厚だけど最後までスープが飲み切れるさっぱり感は外せない要素でした。レシピを見直しながら、出汁の比率を豚のゲンコツよりも鶏ガラを高めていったりして調整しました。ここが麺屋ぬかじのスープのポイントの一つですね。
2011年に渋谷の宇田川町にお店を移してからも、おかげさまで女性のお客様にも多くご来店いただいています」
女性や高齢者の方でも最後の一滴まで飲み干したくなるスープ。それを作る過程は、貫井さんの人柄や物事に対する姿勢を表すように、真摯で、丁寧さを感じさせるものでした。
まずラーメンのスープの味を決める、ベースのスープとタレ。ここに貫井さんの大きなこだわりがありました。
「スープとタレは2010年のオープン時から継ぎ足しています。毎日、鍋の3分の1は残していて、鍋をからにしないようにしています。その方が、僕が求めるどっしりと安定感のある味わい、コクと深みが出せるんです」
オープン時から続く秘伝のスープとタレに、その日新たに作ったものを継ぎ足して、麺屋ぬかじでしか出せない濃厚だけどくどくないスープを作りだす。ラーメン屋さんといえば、毎回、スープを作ると思っていた私にはとても新鮮な話でした。
「継ぎ足していったときに、味の軸がぶれないように微調整するのですが、この工程もすごく大事ですね。継ぎ足しだからこそ生まれるコクと深み、そしてじわーっとくる味わいをいつも楽しんでいただけるようにしています。鍋に継ぎ足していくほうが手間がかかって大変なんです。つけめんとラーメンでスープも違いますし。でも、大きなこだわりです」
今年、オープン10周年を迎えた麺屋ぬかじ(おめでとうございます!)。10年間、こんなにも手間暇かけてスープを作っていることを知って、貫井さんのラーメンとお客さんに対する愛情や思いを感じ取ることができたのでした。おいしさと食べやすさを追求した麺屋ぬかじのラーメン、ぜひ一度食べてみてほしいです。
後編は8/26公開です。創業からのストーリーなどを詳しく伺っています!
【麺屋ぬかじ】
東京都渋谷区宇田川町3-12 monostep2 1F
営業/昼:11:00〜16:00
夜:18:00〜20:00
※水・土曜日は昼営業のみ
定休日/日曜日
https://twitter.com/yns0629
https://www.facebook.com/menyanukaji
八田吏(はった・つかさ)
ライター。
NPO法人で、産後の社会問題に関する調査研究に携わる。個人活動として短歌の会を隔月で開催。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。
たかなしまき
フリーライター。OL、業界紙記者、海外ガイドブックや美容雑誌の編集者を経て、現職。愛媛県で生まれ育っていた時から都会に憧れていたわたしにとって、渋谷界隈は歩いた分だけ東京のおもしろさに出会える街。現在、神奈川県在住ですが、何かと渋谷や表参道に出没しています。ふらーっと路地に入って探検したり、人間観察したり、気の向くままに歩くのがお気に入り。