濃厚だけどくどくない。そんなスープにこだわり、実際に創り出して、そのおいしさで渋谷の多くの人たちを魅了する「麺屋ぬかじ」。
前編は、その濃厚スープのこだわりを店主の貫井さんに教えてもらいました。
こんな変わり種の麺も恒例だそうです。ビールも一緒に飲めるお店としても人気です。
そんな麺屋ぬかじですが、では、どんなふうにお店が始まったのでしょうか。気さくで温かな雰囲気の貫井さん。後編ではその話を丁寧に聞かせてくれました。
「絶対にラーメンで幸せにする」。ゆるぎない覚悟から始まったふたりの麺屋ぬかじ
貫井さんのキャリアはレコード屋さんへの勤務から始まります。その後、別の仕事を経て、ラーメン店にアルバイト入社をします。
「社長に魅力を感じて働き始めました。アルバイトから社員になったのですが、ずっと社長を支える仕事をするつもりでいました。でも、ある時、店を離れないといけない状況になったんです。当然、僕は社長について行くつもりでしたが、社長はそうさせなかった。今思えば愛情だったんですけどね。『もう一人でできるんだから独立しなさい』って背中を押してくれたんだと思います。必然的に一人になって、『よし!やってやる!』と思ってからは迷いはありませんでした」
ラーメン店に勤めていた時に、パートナーの由美さんとも結婚していた貫井さん。「店を出すなら妻とふたりで」と強く思った貫井さんは、由美さんに相談しますが、最初は反対されたそうです。
「両親にも反対されました。でも、『絶対に成功させるから』って土下座をする勢いで頼み込みました。それで妻にも勤めていた会社を辞めてもらって、ふたりで始めたんです」
それが2010年4月。世田谷で麺屋ぬかじをオープンさせたふたり。その後、2014年に宇田川町に移転させます。渋谷への出店は、大きな覚悟がともなったものの、でも、理想の家賃と環境に出合えれば、挑戦できる自信があったそうです。
「たまたまつながったのがこの宇田川町の物件でした。もともと僕は音楽が好きで20年前に宇田川町のレコード屋さんで働いていたこともあるので、絶対にここがいい!と思いました」
個人店らしい、サービスと雰囲気のよさでお客様をもてなしたい
貫井さんの話を聞いていると、渋谷と宇田川町への思いがじんわりと伝わってきます。
「ありきたりだけど、渋谷という街が好きです。いろんな街があるけど、渋谷って特に場所によって顔が違いますよね。その中で宇田川町は、渋谷の中で一番、文化の香りを感じます。音楽とかファッションとか、公園通りを歩けばおしゃれな洋服屋さんが並んでいるし。宇田川町には昔、レコード屋さんがたくさんあったんですよね。実際にお客様もいろんなお店の方が多いです。レコード屋さん、電気屋さん、洋服屋さん。話をしていていると僕も楽しいんです」
渋谷でお店を続けるうえで大切にしたいことも、由美さんと話をしているそうです。
「この前もふたりで話したんですが、世田谷でお店を出していた時と変わらず、いいサービス、いい雰囲気の中でお客様にラーメンを召し上がっていただくことにこだわっていきたいと思っています。世田谷は個人店や夫婦でやっているお店が多いんです。その名残もありますが、どちらかというとチェーン店が多い渋谷で、逆に個人店らしさを大事にすることで、麺屋ぬかじらしい魅力もお客様には感じていただけたらいいなと思いますね」
「お店のあるべき姿、飲食店のあるべき姿を追求していきたいです。また来たくなるようなお店にしていきたいですね。ラーメン代を払っていただいて、ラーメンだけを出すお店にはしたくない。ラーメン代以上のものをお客様が受け取れるようなお店にし続けたいです」
麺屋ぬかじを始める当初は反対していたかもしれない妻の由美さんも、貫井さんの一番の理解者となって、一緒に歩み続けている様子が伺えます。
お店からもラーメンの味からも伝わってくる、落ち着いていて、居心地がよくて、味に丁寧にこだわることを形にしている貫井さんたち。ぜひこれからも一人でも多くのお客さんにおいしいラーメンを食べてほしい、そう思います。
パルコからもすぐ近くです。歩いている途中で見つけたら、いいえ、ぜひ麺屋ぬかじ目的で、一度行ってみてくださいね。
【麺屋ぬかじ】
東京都渋谷区宇田川町3-12 monostep2 1F
営業/昼:11:00〜16:00
夜:18:00〜20:00
※水・土曜日は昼営業のみ
定休日/日曜日
https://twitter.com/yns0629
https://www.facebook.com/menyanukaji
八田吏(はった・つかさ)
ライター。
NPO法人で、産後の社会問題に関する調査研究に携わる。個人活動として短歌の会を隔月で開催。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。
たかなしまき
フリーライター。OL、業界紙記者、海外ガイドブックや美容雑誌の編集者を経て、現職。愛媛県で生まれ育っていた時から都会に憧れていたわたしにとって、渋谷界隈は歩いた分だけ東京のおもしろさに出会える街。現在、神奈川県在住ですが、何かと渋谷や表参道に出没しています。ふらーっと路地に入って探検したり、人間観察したり、気の向くままに歩くのがお気に入り。