みなさまこんにちは。シブヤ散歩新聞・編集長の界外(かいげ)です。
9月22日、23日に開催された日本写真芸術専門学校と専門学校日本デザイナー学院の合同学園祭に行ってきました。
訪れたのは、Future Light Projectという写真とデザインを駆使して社会貢献活動を行っているサークルの展示ブース。
実は、このサークルが行っている「ワンコインポスタープロジェクト」について「おもしろい活動なので取材をしませんか?」とお誘いを受けてインタビューに来たのです。メンバーの田中琴実(たなか・ことみ)さんと今江咲子(いまえ・さきこ)さんにお話を伺いました。
被災地の「今」を撮り続けるサークル
Future Light Project(以下FLP)は、2011年に起こった東日本大震災と同じ年に、有志の学生たちが集まって結成されたサークル。メインの活動として、毎年、宮城県気仙沼市に行って町やそこに住む人たちの姿を撮影・取材し、学園祭や外部のギャラリー等で東日本大震災復興支援写真展等として発表しています。現在、サークルの参加人数は10人で、学園祭では今年で8年目という写真展が開かれていました。
ワンコインポスタープロジェクトって?
ワンコインポスタープロジェクトは、FLPから生まれたプロジェクトのひとつ。ワンコイン=500円? 一体どんな活動なのでしょうか。FLPメンバーと有志のみなさんが手がけたというポスターを見ながら、田中さんと今江さんが説明してくれました。
田中さん(左)と今江さん
「渋谷区にあるお店や企業のPRポスターを私たちが学んでいる写真やデザインの技術を使って制作して、地域貢献をするというプロジェクトです。4年前に立ち上がりました。一口500円から制作し、東日本大震災の復興支援金とFLPの活動への理解と、ポスターの完成度を加味して、最終的な金額を決めていただきます。そしてここで得たお金は、気仙沼市での取材費等に活かされています」(今江さん)
完成したポスターは、主に学園祭で展示されますが、お店や企業にも指定サイズのポスターと一緒にデータが渡されるため、宣伝ツールとして活用することができるそうです。
学生さんにとっては、地域貢献とともに、現場に出てお客さまの要望に応えるという実践の場でもあります。だからこそ苦労すること、発見することもあるのではないでしょうか。実際のところを聞いてみました。
お客さまの要望に応えるということ
専門学校日本デザイナー学院グラフィックデザイン科2年生の田中さんは、飲食店と特許事務所のデザインを担当しました。
「それぞれご要望が違っていて、たとえば特許事務所さんの方は、斬新なイメージにしたいといったご要望だったので、斬新なイメージって何だろうって考えるところから始めました。期待に応えようとするところからスタートして、ものづくりの過程そのものが楽しかったし、喜ばれたのでやりがいがありました」
「学校では正直、課題としてデザインすることがほとんどなので、先生に提出したら終わりですが、この活動では制作後にお店や企業の方が飾ってくれるなどその先があるのが特にうれしいです。私は来春で卒業ですが、もしまたやれるとしたらやりたいですね」
今年、はじめて参加したという今江さんは日本写真芸術専門学校1年生。カメラマンとして飲食店と美容系企業を担当したそうです。
「お店や企業さんから明確にこうしてほしいという要望はなかったのですが、私たちが自由にやったほうが、発想ゆたかなものができあがるのと、経験になるだろうという配慮があったと思います。後から振り返ると、撮影の準備や段取りが足りなかったなあと反省しています。状況に合わせて臨機応変に動くなど、十分にしていたつもりがまだ甘かったなあと。本当に丁寧にていねいにやっていかないとと思いました」
「この活動が本当に地域の役に立てているのかという不安もあります。学生にあわせてくれているのではないだろうか、本当に相手の方が望んでくれているのだろうか、と思ったりもします」
こんなふうに、おふたりとも異なる意見を聞かせてくれました。こんな形で学生さんたちが感じたり考えたりできることも、ワンコインポスタープロジェクトの良さなのではないでしょうか。
仕事として本気でやり遂げたい
「お店や企業さんには、学生だから500円からではなく、仕事相手として発注していただけるとうれしいです。どんどんご要望を言って下さると嬉しいです」(今江さん)
「今回、飲食店さんではチラシも一緒に作ったのですが、同じようにDM、HPやSNS用の素材など、ポスター以外にも使っていただけるとうれしいですね」(田中さん)
今江さんは「ワンコインポスタープロジェクトは、新入生が加入しても続いてくと思うのですが、いろいろな現場が体験できるし、商品や人を撮るためのライティングの勉強になります。実際にお客さんがいるので、自分の好きなものを撮るのではなくて、望まれているものをちゃんと返すといういい経験になると思います」とメッセージをくれました。
専門学校日本デザイナー学院の学生さんには、田中さんが「FLPは、日本写真芸術専門学校が主体となったサークルなので、デザイナーにとっては、写真をどううまく見せるかという勉強にもなると思います。写真をうまくみせた文字の入れ方もあるでしょうし、撮影の立ち会いも勉強になるので、がんばってほしいですね」と言ってくれました。
来年はまた別の学生さんがワンコインポスタープロジェクトに参加します。お店や企業とどんなポスターを作り、またどうつながりを生むのか、楽しみです。
インタビュー/界外亜由美(かいげ・あゆみ)
シブヤ散歩新聞・編集長。クリエイティブ・ディレクター/プロデューサー/コピーライター。三重県の伊賀市、忍者の里出身。ちなみに、界外(かいげ)は本名です。東京に来て10数年目。いつ来てもワクワクする渋谷の街が好き(いまだに渋谷駅で迷う。方向音痴……)。興味のあるジャンルは料理、酒、発酵、お笑い、短歌、絵本、子育て。シブヤ散歩新聞ではレアキャラ的頻度で執筆予定。
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テキスト/たかなしまき
フリーライター。OL、業界紙記者、海外ガイドブックや美容雑誌の編集者を経て、現職。愛媛県で生まれ育っていた時から都会に憧れていたわたしにとって、渋谷界隈は歩いた分だけ東京のおもしろさに出会える街。現在、神奈川県在住ですが、何かと渋谷や表参道に出没しています。ふらーっと路地に入って探検したり、人間観察したり、気の向くままに歩くのがお気に入り。