落ち葉の絨毯、すっかり冬支度
先日『森は生きている』という演劇を観てきました。もともと戯曲としてつくられているので、ミュージカルのように途中に歌が挟んであるのですが、その中の歌にこんな一節があります。
“ころがれころがれ指輪よ
ころがれころがれ指輪
春の玄関口へ
夏の軒端へ
秋の高殿へ
冬の絨毯の上を
新しい年の焚き火をさして
ー『指輪の呪文の歌』よりー”
今年最後のシブヤ散歩新聞は代々木公園散歩です。歌の中の「冬の絨毯」は、ロシアの戯曲らしく降り積もった雪を表現しているのですが、都会の中の森である代々木公園も、一面の落ち葉の絨毯ですっかり冬の景色に様変わりしておりました。ふかふかサクサク、気持ちよかったですよ。
いつもと違う門から入ってみる
さて、今回は、「南門」から公園に入ってみました。原宿駅に一番近い「原宿門」を通り過ぎて、国立代々木競技場を左手に見ながら道路沿いを歩いていくと、まず「渋谷門」にたどり着きます。ここは、以前ご紹介したバラ園に近い門。その渋谷門も通り過ぎてさらに公園に沿って進んだところに「南門」があります。
この南門、おそらく代々木公園周辺の駅(原宿駅・明治神宮前駅、代々木公園駅、代々木八幡駅)から一番遠い門なので、人が少ないなあ〜という印象でした。みなさんはここから入られたこと、ありますか?
南門を入って中央広場に向かって歩いていくと、こんな道標が。『日本航空発始之地記念碑』。ええー!日本のキティ・ホークがこんなところに!?と、道標に沿って少し戻るような形で歩を進めてみました。
美しい鳥を象った石碑がありました
調べてみたところ、日本での航空機初飛行は1910年(明治43年)12月19日。当時代々木練兵場だったこの場所で、ドイツ製の飛行機(複葉機)で4分間飛行したそうです。意外と最近のことなんだなあ・・・と思ったのですが、ライト兄弟の有人動力初飛行が1903年ということなので、人類の空の歴史ってまだ120年も経っていないんですね。
今年、日本の一般人がはじめて宇宙へ飛び立ったことを考えると、技術の進歩というのは数世代で一気に飛躍する勢いを持っていることを実感します。
宇宙へ行くロケットにはもう翼はありませんが、代々木公園の記念碑には美しい翼を持つ鳥が象られていました。
人類の夢はシンプル
筆者は普段、スポーツの分野で運動を指導する人たちに「人間の身体と運動の力学」を教える仕事をしているのですが、スポーツは、「より速く、より高く、より遠くへ」という、運動の物理的な限界に近づこうとする行為なんだなと思いながら仕事をしています。
代々木公園で見つけた初飛行記念の碑は、100年以上前に生きた人の空への夢の記念碑。翼を持つ鳥のように空を飛んでみたい、という気持ちも、スポーツで目指す身体の限界と同じように、なんだか人類の根源的でシンプルな欲求なのかもしれないなと思いました。
ここ1〜2年のわたしたちの夢は、自由に人と集まることができる環境を取り戻すこと、だったのではないかなあと思います。
12月28日、これまで、大規模ワクチン接種会場の原状回復工事、感染防止対策のため立入禁止となっていた代々木公園の中央広場が、一部開放されました。芝生の養生のためまだ全面開放には至っていませんが、都会の中の大自然が戻ってくると思うと嬉しいですね。
代々木公園を訪れる際は、記念碑とともにぜひ、四季を感じながらの散歩も楽しんでみてください。冬の縮こまった身体のリフレッシュに、リモートワークで凝り固まった身体の回復に、新鮮な空気と運動による燃焼をぜひ!
得原藍(えはら・あい)
理学療法士/一般社団法人 School of Movement ディレクター。
子育てしながら運動科学の専門家として、身体と環境と生活の関係を考える日々を送る。
たのしいマイニチのために人生編集中。
TEXT aiehara’s web