渋谷周年散歩とは
渋谷の街に誕生して周年を迎えたお店をご紹介するのが、「渋谷周年散歩」です。お店の移り変わりも早い渋谷の街で10周年、20周年と年月を重ねて行くのは容易ではありませんが、その中で記念すべき周年を迎えたお店をご紹介していきます。
ぜひ見比べて!ガラリと変わった店内の雰囲気 Before/After
若者で賑わう渋谷センター街。渋谷駅方面から歩き始めると、右手に程なく、ファストファッションブランド「FOREVER 21」が見えて来ます。
このビルの地下1階で今年20周年を迎えたのが、イタリア料理の「オステリア&バール ヴェントゥーノ トーキョー」。
20周年に合わせた改装工事を終え、8月27日にリニューアルオープンしました。白で統一された店内は明るくスタイリッシュで、清潔感にあふれています。
「お店の元々のコンセプトは、“大人の人がゆったりと食事できるお店”だったので、ライトも落としめで重厚感のある内装となっていました。今回の改装では若い人も入りやすいお店にしようと、白をベースに明るさもアップしました。白くて明るいと料理映えもしますし、常連のお客様からも好評です」とは、店長の野村広法さん。
センター街からもお店の様子がわかりやすいようにと、入り口の扉を木枠のあったものからガラス張りの扉にも付け替え、フロアにあった3本の大きな柱も取り払い、全体の見通しも良くなりました。
改装前の店内の写真と見比べると、雰囲気がガラリと変わったのが良くわかりますよね。結婚式の披露パーティーでも使われていたというのが良くわかります。
すっかりスタイリッシュになった店内の中で目を引くのが、真っ白い壁にかけられたモノクロの写真。
ヴェントゥーノ トーキョーがオープンするよりもっと前から営業している、姉妹店の中華料理店「白鳳」が営業を始めた1926年ごろからの渋谷の写真です。ハチ公も映っていますよ! (中華料理店「白鳳」の記事はこちら→
渋谷レジェンド散歩No.3 約50年続く渋谷センター街の中国料理店「白鳳」)
「ヴェントゥーノは20周年ですが、白鳳は100年近い時を刻んで来ています。お店の歴史、渋谷の歴史を回想するという意味で、インテリアとして写真を配置してみました。年配の人にとってみると懐かしいですし、若い人からすると『昔の渋谷はこんな感じだった』と新鮮だと思うんです。家族連れのお客様が多いので、おじいちゃんおばあちゃんが、お孫さんやお子さんに教えてあげていて、世代をつなぐ話のタネになっているかな、と思っています」(店長の野村さん)
リニューアルオープンを機に、メニューも大きく変更しました。
ランチタイムでは、2種類だったピザの種類を5種類に増やし、休日には、これまでになかったハーフピザ&ハーフパスタのセットを数量限定で導入。
ヴェントゥーノのランチといえばサラダバー! ともいえるサラダバーは変わらず残っているので、サラダーバー目当てに通っていた方たちは安心してくださいね。
そしてディナーは、値段抑えめのタパス的なメニューを大幅に増やしました。
「これまでは、ランチは安いけど夜は若干高い、という印象のメニュー構成でしたが、夜も気軽に足を運んでいただきたいので、ランチとのギャップを埋めるようなメニューを多数そろえました。アルコールの値段設定も下げたので、若い人でも入りやすくなったと思います」
良心的な値段のメニューも増えましたが、ピザの仕込みは20年前から変わらず同じ方がやっているとのこと。トマトソースの下味も一切変えてないので、昔から通われている常連さんでも安心して変わらぬ味を楽しめます。
三軒茶屋で生まれ育ち、渋谷で遊び育った店長。「混沌としたものが移り変わっていく渋谷の街が好き」
ところで、今回のリニューアルを担当した店長の野村広法さんは、三軒茶屋で生まれ育ったそうです。つまり、渋谷は小さなころから遊び場でした。
「渋谷はもう、自分にとって近所ですからね。ぶらっとくるところですよね。基本的には、ぶらっと来て、ぶらぶらするんですよ(笑)
小学生の頃には映画館が何軒かあったので、映画を見た後に山手線のガード下あたりの寂れた道路にたむろして、マックで買ったハンバーガーを食べながら、山手線のお客さんに手を振って、何人が振り返してくるかとかやって遊んでましたね(笑)
もう少し大きくなってからは、ボーリングするなら宮益、道玄だとダーツとビリヤードとか。でも、基本的には渋谷に行く時はどこに行くかを決めてなかったです」
宮益坂を宮益、道玄坂を道玄と、“坂”を省略して呼ぶところが、さすが地元だなー!と思いませんか? 新潟で高校まで過ごした私は、これまで一度も、坂を省略して呼んだことがありませんから(笑)
野村さんは、渋谷から発信される流行・ファッションの変遷もすべて目の前で見て来ています。
「時代によって、混沌のカテゴリーが変わっていっている感じですよね。小学校高学年ぐらいの時はもう、ガングロ、ヤマンバ、ルーズソックスです、みたいな。
その後、バッシュが流行っていた時期があって、エアマックスやジョーダンとかの盗難事件とか、エアマックス狩り、ジョーダン狩り、とかもありましたね。バッシュがショーケースに入って、すごい値段がついていましたから。
ガングロの後は、しばらく白時代がきて、ルーズソックスが終わってニーハイぐらいの高校生が出て来て、ちょっとこぎれいになって。ちょうど大学ぐらいになりだしたら、年末年始のセンター街のハイタッチとか、その後はハロウィンとか、イベントが盛んになって来ましたね。
たぶん、そういうのが渋谷なんですよね。ごちゃごちゃしたのが入り乱れ、変わって行くのが、良くも悪くもこの街なんだろうなと。そして、自分としてはそのごちゃごちゃした感じが好きで、渋谷が一番落ち着くんですよね。どの道でも、通ったことのない道はないし。
だんだんと渋谷はこぎれいな街になって来ているけど、個人的には、渋谷らしいゴミゴミ感もどこかに残っていてほしいですね」
渋谷で育って来たからこその、渋谷への思い。その渋谷の中で20周年を迎えたお店の店長として、これから、どんなお店でありたいと思っているのでしょうか。
「ヒカリエができる前、あそこにあったビルの最上階にプラネタリウムがあったんです。小学生の時は課外授業にも行来ましたし、すごく古くて。
そのプラネタリウムがなくなる時に、本当にすごい人がきたんですよ。それってつまり、みんなの中に潜在的に『あそこにプラネタリウムがある』というのがあったと思うんです。同じように、向こうには東急本店があって、こっちには西武があってって、というのがあると思うんですよね。ヴェントゥーノを、そんな存在のお店にしたいと思っているんです。
有名店になってガンガンお客さんが来るようになるのもいいとは思うんですけど、もっと渋谷の街に馴染んで、久しぶりにきた時にも「あそこにお店があるよね」と思い出してもらえるようなお店でありたいと思っています。そのためにも、ここにヴェントゥーノがあることを印象付け、そしてしっかり根付かせていきたいです」
店名のヴェントゥーノは、イタリア語で「21」。21世紀に向かって、という意味でつけられた名前です。21世紀は、まだまだ始まったばかり。変化し続ける渋谷の中で、どんな存在になっていくのか。30周年に向けて一歩を踏み出したヴェントゥーノのこれからが楽しみです!
最後に。
お店は、センター街からも、井ノ頭通りからも入れます。この赤い装飾テントが目印です!
【オステリア&バール ヴェントゥーノ トーキョー】
住所/東京都渋谷区宇田川町24-1 高木ビルB1
TEL/03-3477-1199
営業時間/月~日、祝日、祝前日:11:30~23:00(料理L.O. 22:00 ドリンクL.O. 22:00)
定休日/無休
https://ventuno-tokyo.owst.jp
平地紘子(ひらち・ひろこ)
シブヤ散歩新聞・副編集長。フリーライター/ヨガインストラクター。10年以上お堅い新聞記者だったのに、3年間のアメリカ生活でヨガインストラクターに転身。でもやっぱり、書くのも好き。かなり色黒なので「サーファー?」と聞かれるけれど、見かけ倒し。スッピンのまま自転車で中目黒界隈を駆け抜けているだけです。ヨガウェアで魅せる筋肉美が最近のプチ自慢。フィットネスやマッサージなど、体にいい情報をお伝えします!
yoga teacher HiRoko HiRachi