シブヤまちづくり散歩とは
未来のシブヤはどんな街? 渋谷区では、様々な社会状況の変化や、技術革新を踏まえた上で、「渋谷区基本構想」をまちづくりの視点から実現化する「渋谷区まちづくりマスタープラン」(以下「渋谷区まちマスプラン」)の策定が進んでいます。2017年9月に始まった「渋谷区まちマスプラン」をはじめ、シブヤで行われる様々なまちづくりの取り組みを追いかけます。
夏休み最終日に考える、2040年の渋谷の「道」のこと
先日こちらの記事でご紹介した渋谷の小学生たちを覚えていますか? 渋谷の街をよりよくするためのアクションを自分たちから起こそう、と、表参道の街に飛び出して、街の課題や期待する未来像について、大人たちにインタビューしていたあの子たちです。
「みんな元気にしているかなあ・・・」そんな風に思っていたら、渋谷区マスタープラン担当課長の森田さんから「あの時の小学生たちと2040年の渋谷の<道>について考えるワークショップをするので、見に来ませんか?」とお誘いいただきました。これは願ってもないチャンス! さっそく、おじゃましてきました。
伺ったのは8月29日。「明日から学校だよー」という子どもたちに「宿題は終わったの?」とついつい聞いてしまうわたし。「終わったよ!」「そりゃ終わるでしょ!」さすがです。そして、相変わらず元気いっぱいです。
ワークショップの冒頭、森田さんから、渋谷区の未来像について教えていただきました。
渋谷区の提示する20年後の未来像のなかには、
「街路空間は、再編整備や自動制御技術などにより、人々のニーズに応じて活用方法を柔軟に変えることができるようになっています」(歩行者の通行・パーソナルモビリティの通行・公共交通の通行・賑わい空間など)(渋谷区まちづくりマスタープラン中間報告より)
ふだん車や人が行き来する道路を、自由に使える空間として活用するとしたら・・・いったい、子どもたちからどんなアイディアが出てくるのでしょうか。楽しみです。
「2040年には、何歳?何してる?その頃の渋谷は?」
「みんな、20年後って何してるかなあ」ファシリテーターの植野真由子さんが投げかけました。「20年後にはみんな何歳?」「仕事はしている?」「子どもいるかな?」「その頃お父さんやお母さんはどうしているだろう?」パーソナルな問いから、「その頃の社会ってどんな風になっているだろうね?」と、徐々にイメージの範囲が広がっていきます。
「2040年には、道路もかなり様子が変わっていることが予想されています。車が自動制御になって、『このエリアは今日1日は車が入れません』っていうこともできるようになる。そうなったら、どんな風に道を使ってみたい?」
今回のワークショップは、自分のアイディアを絵に描いてプレゼンテーションする、というスタイル。白い画用紙を前に考えこむ子、とりあえずクレヨンを手に持ち、道らしき二本線を引いてから、「どうしようかなー」という子。思い思いに考えを巡らせています。
「井の頭通りとか、神南のあの辺とか・・・」
渋谷の道を具体的に思い浮かべている子もいます。
「スクランブル交差点とかもいいのかな・・・あ!あそこで盆踊りしたら面白そう!」
しゃべっているうちに、アイディアがひらめいたようです。
みんな、思い思いに手を動かしていきます。徐々に現れてくる絵がバラエティ豊か!
大人たちも、真剣な様子で話を聞いています。
ひとりひとりが考えた、20年後の渋谷の「道」って?
7人の子どもたちから、7つの「渋谷の道の未来」が生まれました。
渋谷区長の長谷部さんもいらして、いよいよ発表タイムです。
街の中の路地に注目した彼女。
「一週間貸切にして、曜日ごとに違うスポーツができるようにしたいです。」
スポーツカーが大好きだという彼は、「公道でF1レースができたら面白いと思います」
子どもたちの自由で豊かなアイディアに、長谷部区長もこの笑顔です。
遠いようで近い20年後の姿を描く
「区でも、スポーツや健康に力を入れたいと考えています。区全体を『15㎢の運動場』ととらえて、いろいろなところでスポーツを楽しめるようにしていきたい。みなさんのアイディアの中で活かせそうなことがたくさんあります」(長谷部区長)
子どもたちにとっては、20年後は遠い未来のように思えるかもしれません。しかし、実際はそうではない、と森田さんは言います。
「その時になったら考えよう、では遅いのです。20年後に起きている変化を具体的に想像し、そこからバックキャスティングして今からアクションを考えていくことが必要です。今回のワークショップで出たアイディアも、その中に紐づいています」
今回集まった子どもたちは20年後には30代。それぞれ社会の担い手になっている頃です。そんな彼らが今のうちからまちづくりプランに関わっていくことには、大きな価値があります。
「その時が来たら」ではなく「今から」、もう街の未来は始まっている・・・そんなことを感じたワークショップでした。
八田吏(はった・つかさ)
ライター。
NPO法人で、産後の社会問題に関する調査研究に携わる。個人活動として短歌の会を隔月で開催。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。