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CULTURE

渋谷レジェンド散歩No.3 約50年続く渋谷センター街の中国料理店「白鳳」

渋谷レジェンド散歩とは
渋谷の街で、数十年。人々に愛され続けた歴史を誇るお店や会社をご紹介するのが、「渋谷レジェンド散歩」です。渋谷といえば「若者の街」といわれますが、実は、長きにわたって活躍している人や商品、サービスがたくさんあります。そんな渋谷の意外性ある魅力をお届けしていきます。

50年以上通う常連客が多い渋谷のレジェンド

スクランブル交差点を中心に、いつもたくさんの人でにぎわっている渋谷。筆者は、この渋谷のエネルギッシュな雰囲気がとても好き。近年、人が減ったとは言われてはいても、本当に多くの人たちがおしゃれをして道を歩いている姿は見ていて元気が出ます。

大きな刺激をもらえる街でもあります。さまざまなビルが立ち並び、流行や経済などスピードが速いこの街を歩いていると、「頑張ろう!」と思うのです。

そんな渋谷で、1926年の創業以来、92年もの間、すてきに歴史を重ねてきたお店があると聞いて行ってきました。

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「白鳳」。渋谷駅から徒歩2分、センター街にある広東料理のお店です。ふかひれ料理や麻婆豆腐、エビチリなど中国本場の味をいただくことができます。

お話を伺ったのは、レストラン事業部事業部長の太田康信さん。太田さんによると、白鳳はもともと食堂から始まったそうです。その名も、「渋谷食堂」。

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「当時は僕自身、まだ生まれていないのですが、中華を含めたいろいろな料理を出していたと聞いています」

レストラン事業部事業部長の太田康信さん

レストラン事業部事業部長の太田康信さん


 

看板メニューは、五目焼きそば。柔らかい麺の焼きそばにあんをかけたその食べ方は、当時、流行に敏感な渋谷の人にとって斬新で、「初めて食べた味!」「美味しい!」と評判だったそうです。

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「渋谷食堂の後は、1967年に万葉会舘 という建物に変わったのですが、白鳳になった今も、この五目焼きそばは看板メニューのひとつです。この五目焼きそばを召し上がるために、渋谷食堂時代から50年以上通い続けてくださる方も多いんですよ。高校生のときに初めてご家族と来られたという80歳代のお客様もいらっしゃって、『当時と変わらない味』と言ってくださいます」

子どもの時、家族と食事に訪れたお店が、食べて「美味しい!」と感激した味が、大人になってからも変わらず自分を迎えてくれる。こんなにうれしくて、感動することはないのではないでしょうか。

そういえば、筆者も小学生の頃、家族で通っていたお気に入りの中華料理店がありました。酢豚が大好きで、毎回楽しみにしていましたが、お店がなくなったときはさみしかった。

一方、白鳳では、この五目焼きそばをはじめとする看板メニューが、お店の存続をも救うことになります。

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「万葉会舘の時代に、お店が入っているビルをなくすことになったのですが、お客様からの『なくさないでほしい』というお声で、場所を変えてお店の営業を続けたんです。その時があったから、お客様が半世紀以上も覚えてくださるお店に育ったのかもしれません」

変わらない味を守るために

時代の移り変わりとともに、この変化の激しい渋谷の街で、渋谷食堂から万葉会舘、そして1977年に白鳳へとお店のかたちを変えていった白鳳。その裏で、お客様に愛される味を守り続けるために努力を重ねていきます。

「まず、全体的な味を向上させました。万葉会舘の時代に、今の広東料理をメインにしたお店に生まれ変わったのですが、当時、中国から有名な料理人を招いて、本場の味を身に付けました。大きな転換期のひとつだったと思います」

「物価の高騰や調味料の変化など、さまざまな外的変化にスピーディに対応するのも“変わらない味”を守るために必須な仕事。たとえば野菜が変わると水分の量も変わってきます。普段からとても細かいところに目を配っています」

世代交代がない限り、料理人の面々が変わらないのも大きな誇り。

「一人変わると味が変わってしまうくらい料理は繊細なんです。レシピも大事に守っています。定番メニューの味は絶対に変えない」と太田さんは言い切ります。

時代にあわせてチャレンジしながら、渋谷で生きる

「僕が白鳳に入社したのは1985年です。今から32年前。当時は今の渋谷とは街の雰囲気が全然違っていましたね」

そう話す太田さん。当時は、特に飲食店はほとんどがセンター街の入り口に集まっていて、それ以外の通りには今ほど飲食店はなかったといいます。

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「中華料理店も数が少なくて、今より競争は激しくなかったと思います。どちらかというと、アパレルのお店や娯楽店が多くて、歩く人の層も、若い人が圧倒的に多かったですね。夜は居酒屋で一気飲みをするのが人気でした。今はもう見なくなりましたけれど」

時はバブルまっ只中。その後、バブルがはじけて、未曽有の不況時代を経て、今。これまでの渋谷の変遷を、太田さんは白鳳を通して見てきました。そして現在、思うことは、

「いかに時代の変化に対応していくか」。

「特に、2020年にはオリンピック開催が待っていて、それにあわせるように飲食店も増えていますが、大事なのは開催後。オリンピック開催まではきっとお客様は増えるでしょう。なかでも外国人のお客様は最近増えていて、オリンピック開催時は今以上の増加が見込まれます。でも、オリンピックが終われば財布のひもがかたくなるなど、反動はきます」

時代の変化にふりまわされるのではなく、先を見越しながらやるべきことに集中する。今できることは何なのか。常にそのことについて考えていると太田さんはいいます。

「もうすぐ設立から100年目を迎えるという意味でも、今、大きな節目だと思っています。時の流れにうまくのっていくためにも、まずはご来店くださるお客様を大切におもてなししたい。お客様に合わせて、変わっていきたいです」

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高齢のお客様も多いという白鳳では、大皿からお一人おひとりのお皿へ取り分けるといったきめの細かいサービスもこだわりのひとつ。

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そして、センター街にありながら落ち着いた雰囲気を味わえるのも、白鳳の大きな魅力だといわれています。そのため、パーティや誕生日会などのお祝いの席に使われることも多いとか。こうした白鳳ならではの良さを守りながら、時代にあわせた新しいチャレンジも続けたいと太田さんは話します。

「たとえば、若いお客様には、エビチリのピザなど今までになかったようなメニューを提案するのもいいと思っています。多くの人に白鳳の、中華の良さを知っていただきたい」

太田さんによると、若い人の中には、高級感あふれる雰囲気から、「場違いかな」と感じてしまうのか、お店に入ってもすぐに出てしまうこともあるそう。

「“中華は高額”というイメージもあるようです。でも、アラカルトで一皿4人前なんです。中華はみんなで分けて食べる楽しみ方もありますし、お勘定もシェアすれば決して高くないんですよ。ぜひ、ご家族やお仲間と一度試していただきたいですね」

微笑む太田さん。続いて、常連のお客様にもメッセージをお願いすると、こんなふうに答えてくれました。

「いつでもおいでになってください。変わらない味とサービスでお待ちしております」

最後に、「流行の移り変わりが早い渋谷で、お店が長く続く秘訣は何でしょうか」と聞くと、「お客様を愛することではないでしょうか」と即答してくれた太田さん。その言葉からは、看板メニューの存在に甘えることなく、丁寧にお客様との関係をつくり続けている老舗店のあり方を垣間見ることができたように思いました。

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白鳳では、ランチタイムは1000円ほどの良心的なセットメニューが中心で、夜はおすすめのコースメニューが人気です。関東ではもうすぐ梅雨入り。快晴の日でも雨の日でも、天候に関係なくゆったりとくつろげるこの白鳳での時間はぜいたくそのもの。散歩の途中に、または家族や大切な人との食事に、ぜひみなさんも足を運んでみてくださいね。

【中国料理 白鳳】
住所/東京都渋谷区宇田川町24-1 高木ビルB1
TEL/03-3461-1122
営業時間/月~土曜日:11:30~23:00(LO22:00)、
     日・祝日・連休最終日:11:30~22:00(LO21:00)
     ※ランチタイムは11:30~17:00
定休日/無休
http://hakuho-shibuya.com/

インタビュー/界外亜由美(かいげ・あゆみ)

kaige200x250シブヤ散歩新聞・編集長。クリエイティブ・ディレクター/プロデューサー/コピーライター。三重県の伊賀市、忍者の里出身。ちなみに、界外(かいげ)は本名です。東京に来て10数年目。いつ来てもワクワクする渋谷の街が好き(いまだに渋谷駅で迷う。方向音痴……)。興味のあるジャンルは料理、酒、発酵、お笑い、短歌、絵本、子育て。シブヤ散歩新聞ではレアキャラ的頻度で執筆予定。
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テキスト/たかなしまき

takanashimakiフリーライター。OL、業界紙記者、海外ガイドブックや美容雑誌の編集者を経て、現職。愛媛県で生まれ育っていた時から都会に憧れていたわたしにとって、渋谷界隈は歩いた分だけ東京のおもしろさに出会える街。現在、神奈川県在住ですが、何かと渋谷や表参道に出没しています。ふらーっと路地に入って探検したり、人間観察したり、気の向くままに歩くのがお気に入り。

 

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