今、「私立珈琲小学校」というユニークな名前のカフェが、渋谷の街のあちこちに開校しています。

代官山にある「本校」は＜アート&コーヒー＞、原宿の「音楽室」は＜音楽&コーヒー＞、そして、代々木八幡の「放課後」は＜アウトドア&コーヒー＞と、校舎毎に異なるコンセプトを持っている、とのこと。

これは気になる！と三校舎まとめて“体験入学”してきました。

地域に溶け込む「アート」と「コーヒー」

まずはじめにおじゃましたのは「私立珈琲小学校　代官山校舎」。猿楽小学校の真ん前にあります。
<アート&コーヒー>がコンセプトのこちらは、アートギャラリー併設のカフェです。

「さっきまで、町内会の集まりしてる方がいらっしゃってましたよ」。小学校というその名の通り、街にしっかり溶け込んでいるのを感じます。

店内で、懐かしいものを見つけました。

出席簿がメニューリストになっています。ひらいてみると、
「放課後、友達と飲みたい」
「難しい宿題を解くときに飲みたい」
などなど、ひとつひとつのメニューに楽しい説明がついています。

週替わりのスイーツも楽しめます。その時どきの展示にインスパイアされたスイーツが登場することもあるのだそう。

ギャラリーに面した大きな窓からは、展示中の作品が少し見えます。コーヒーを飲みに来た人、作品を見に来た人、それぞれが「ちょっとあっちも寄ってみようかな」と思えるような設計になっています。

街の一日を刻む「音楽」と「コーヒー」

次におじゃましたのは原宿にある「私立珈琲小学校　音楽室」。神宮前1丁目交差点のすぐ近くにあります。

インターネットラジオ局「Backstage cafe」に併設されているこちらのお店は<音楽&コーヒー>がコンセプト。コーヒー片手に収録風景を観覧できるよう、ベンチがラジオブースに向き合う形で配置されています。

「ホットレモンジンジャー」をいただきました。素材厳選のため、すぐに売り切れてしまうのだそうです。コーヒー以外のドリンクにもしっかりこだわりがあるのが嬉しいですね。

ベンチには街の情報誌やフリーマガジンが。

そうこうしているうちに、夕方の番組が始まったようです。店内にも音が流れてきます。

朝から夜まで、街の人々の様々なシーンを、音楽とコーヒーが静かに刻んでいきます。

自由に遊び、働く大人のための「アウトドア」と「コーヒー」

12月1日にオープンしたばかりの「私立珈琲小学校　放課後」にもおじゃましてきました。代々木公園のすぐそばにあるこちらは<アウトドア&コーヒー>がコンセプト。外遊び好きが集まるシェアオフィス「MAKITAKI」さんの１階にあります。

こちらのお店では、“給食”があるのだそう。放課後に給食・・・どちらも子どもにとって（元子どもにとっても!）嬉しい時間です。

そこへちょうど、常連さんがお弁当箱をもってやってきました。お弁当箱持参でテイクアウトにもできるのだそう。”給食主任”の金城さんが、手際よく詰めてくれています。

この日のメニューは鶏つくねがメイン。野菜も新鮮でおいしいです。

「放課後」は、「学校の中で一番楽しい時間ってなんだろう？」という問いから生まれたのだそうです。放課後って、一日のうちでいちばん自由に過ごせる、誰にとっても楽しい時間ですよね。

“担任”の沼田さんは、もともと代官山校舎のお客さんだったそうです。コーヒーの道に進みたいと思っていた頃に珈琲小学校と出会った沼田さん。お店に集まる人たちの自由な働き方、楽しい生き方に触れ、バリスタの道に進むことを決意したのだそう。「常連さんが、『いいじゃんそれ！』ってみんな後押ししてくれたんですよ。珈琲小のつながりがあって、今の自分がいるんだと思います」と話してくださいました。

「他に必要なものなんてそんなにない」

オーナーの吉田さん（”吉田先生”と呼ばれています）は、もと小学校の先生。小学校のように誰もが集える場であってほしい、との思いから「私立珈琲小学校」と名付けたそうです。

「アートや音楽や外遊びや・・・他の何かと一緒に存在することで新たな魅力が生まれるのがコーヒーのいいところです。そうすることで、新しい人のつながりが生まれ、会話が生まれる。素敵な人がいて、おいしいものがあって、会話があったら、他に必要なものなんてそんなにないんじゃないかと思うんですよね」と吉田さん。

だからこそ、その真ん中にあるコーヒーの質にはこだわっているとのこと。
「名前がへんてこりんなだけに、真っ当なものをお出ししています」（吉田さん）。それぞれの校舎に置くコーヒーの種類も、コンセプトに合わせてすべて変えているそうです。

新しい世界に出会える「大人のための小学校」

コーヒーを飲みながら、小学校時代の教室をふと思い出しました。仲間同士でわいわい話している子、席で静かにひとりで過ごしている子・・・いろんな友達が思い思いに過ごしていたあの空間と、珈琲小はどこか似ています。好きなことがきっかけで新しいつながりが生まれたり、出会った人とのつながりから新しい世界に出会ったり・・・そんなところも、まさに「大人のための小学校」なのだと思えます。

「&コーヒー」から生まれる新しい世界を体験しに、みなさんもぜひ気になる校舎に”登校”してみてくださいね。

■私立珈琲小学校　代官山校舎（本校）
渋谷区鴬谷町12-6
営業時間：11:00〜19:00(日のみ〜18:00）月曜定休
■私立珈琲小学校　原宿校舎（音楽室）
渋谷区神宮前3-25-18
営業時間：11:00〜19:00　不定休
■私立珈琲小学校　代々木八幡校舎（放課後）
渋谷区代々木5-67-8
営業時間：11:00〜19:00　不定休

八田吏（はった・つかさ）

ライター。
NPO法人で、産後の社会問題に関する調査研究に携わる。個人活動として短歌の会を隔月で開催。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。