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GOURMET

渋谷カレー散歩No.6 野菜の美味しさが堪能できる、やさしくマイルドなスパイス料理「ハブモアカレー」

今回は、私が一番好きなインドのスパイス料理のお店を紹介いたします。

このお店、実は2017年4月にも、別のクリエーターさんが散歩に行って記事を掲載しています。同じお店を2回掲載することって、散歩新聞では今までなかったんですよね。でも、どうしても私自身でオーナーさんのお話を聞きたい、もっともっとお店のことを知りたい! と思っていたんです。

そうしたらなんと、半年前に取材したオイルファーマシーのAKIさんが、オーナーさんとお友達だということが分かり、つないで下さいました。ご縁、とてもありがたいです。

というわけで、青山通りの南青山5丁目交差点にある「ハブモアカレー」、散歩新聞に2度目の登場です!

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自分で組み合わせを選べるから、何度行っても楽しめる!

ハブモアカレーのメニューは、「本日のカレープレート」(1,280円)というカレー定食のみ。

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本当に、このプレートだけ。それだけです。

なのですが、何度行っても飽きないどころかまた行きたくなるのは、中央のターメリックライスの周りの4つの器の内容が、毎日変わるから!

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例えば。

チキンキーマカレーは、ある日は「ケールとチキンキーマカレー」、ある日は「ルッコラとチキンキーマカレー」

ダルカレーは、ある日は「サニーショコラのダル」、ある日は「バターナッツのダル」

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そして、2種類の付け合わせは、その日のラインナップの中から、自分でチョイスできます。ある日のメニューは、

『新じゃがのラプチャートマト』
『青首大根のココナツグレービー』
『黒大根とひよこ豆の東南アジア風スパイス炒め』
『ゴールデンラーパ、人参とタマゴのマスタードディライト』
『白菜のインド風ポタージュ』

の5つ。この中から、自分の好きな2品を選べます。

お肉を食べない人は、チキンキーマカレーをなくして、その代わりにもう1品を付け合わせの中から選んで「ベジタリアンプレート」にすることも可。2品を選べない人は、全種盛りなんてのも、アリです!

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これ、先日一緒に行った友人が「全部味わいたいからー!」と選んでましたが、とっても豪華で、プレートを見ているだけでワクワクしてきました。次は、私もこれ、注文しよう♪

一品ごとに、違う野菜の美味しさが味わえる!

さて、メニューを見ていて気づくことがありませんか??

???

答は、野菜!

どの付け合わせにもカレーにも、必ず野菜が使われていますよね! これらの野菜をスパイスで炒めたり、煮込んだりした1品、1品は、野菜の美味しさや食感をしっかり堪能できる、とても優しい味わいなのです。

野菜が本当に美味しいし、1品ごとに表情が全然違うので一口一口がとても楽しい! そして、あっさりしているので、いっぱい食べてもお腹が軽い!

これが、私がハブモアカレーが大好きな理由です。

それを、オーナーの松崎洋平さんに伝えたところ、「そう言ってもらえるとすごくうれしいです」と喜んでくれました。なぜなら、そこにこそ、松崎さんのこだわりと工夫があるからなんです。

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インドの多様性、自由さに惹かれて

2012〜2013年ごろ、新宿三丁目のカレー店「curry 草枕」で働いていた松崎さんが、自分のカレーを追求するきっかけになったのは、カレーの本場・インドに行ったこと。カレーそのものというよりも、人が溢れ、混沌とした様子に衝撃を受けたと言います。

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店内には、カメラマンの友人が撮影したというインドの写真が飾ってあります。

「カレーというよりも、丸ごとの文化に対して衝撃を受けたという感じですね。そしてインド料理って北と南、そして西と東でも、全然違うんです。例えば同じバターチキンでも、店によって全然違う。

インド料理に関しては、定義づけたり言い切ったら負けというか、これはこうだ、というものは存在しないんですね。それがインドの面白さでもあり、その多様性というか、自由で良いみたいな考え方がすごく好きなんです」

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その後も何度かインドに足を運び、一般の家庭に泊めてもらってはその家のレシピを教えてもらったり、いつもの夕食を見せてもらったり。そのうちに、漠然と店をやりたいという思いが出てきたそうです。

衝撃的に美味しい野菜の味を、スパイスたっぷりのカレーにどう生かすか
そこには、裏のコンセプトがあった!

同じ頃、松崎さんは地元の千葉・四街道で中学時代の友人が農業を始めたことを、Facebookで知ります。

「作っている野菜が、八百屋でも見たことがないような野菜ばっかりだったので、一度畑に遊びに行ったんです。農薬をほとんど使わない有機農法なんですが、そこの野菜を生でそのまま食べさせてもらったら、インドでカレーを食べた時よりも大きな衝撃を受けたんです。

野菜って、こんなに美味しいんだ・・・!! と。

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それで、この野菜をカレーにしたら、面白いカレーができるだろうな、と思って。それが、今のカレーのベースとなった大きなきっかけですね」

ところが、そこで大きな矛盾を感じることになったそうです。

「一般的にスパイスを使う食文化の中では、状態の悪い野菜の味を消したり、料理を保存したりというのが、スパイスの使用目的の一つと言えると思います。スパイスの量もそうですが、食事とスパイスの組み合わせによって素材の味が打ち消されちゃう部分が出てきた時に、こんなに美味しい野菜の味が薄れてしまうのはもったいないなって考えるようになったんです。

その時にヒントになったのが、スパイスをあまり使わずに素材の味を生かしているマレーシアの食文化や調理法です。例えば、マレーシアって、マレー人と中国人とインド人と3つぐらいの大きな民族の文化がごちゃ混ぜになっているんです。

そして、その食文化の融合具合がすごく面白いなと感じる一方、この食文化の融合は多民族国家ではない日本では、今まで起こってきてないことなんだ、って思ったりして。それ以来、もし日本が多民族だったらとか、もし日本がもっとスパイスを多用する食文化だったら、みたいな感じで考えたりするのがすごく楽しくなってきて。ある時、あ、これを店のコンセプトにしても面白いかなって思い始めたんです。

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お店のメインコンセプトはもちろん、“野菜とスパイス”なんですが、裏のコンセプトが、バーチャルで融合させた食文化のアイデアです。その裏コンセプトは、野菜に絡ませるスパイス、ハーブや調味料のチョイスや、それらの配合具合といった味付け部分に効いています。

店のメニューにも“野菜とスパイス、どちらの味、風味も感じられる理想のバランスの料理”みたいなことを書いているんですが、それも、表と裏のコンセプトをもっと詰めていった先にあるものなのかな、と。まだすごく漠然としているけれど、そう思っています。

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色と色が交わってキレイな色が生まれるように、
味と味が合わさって、新たな美味しさが生まれる

美味しい野菜の味を生かした、スパイス料理。ターメリックライスの周りに並ぶ4つの器は、2種のカレーと2種の付け合わせ。その言葉通りに取ると、主役と脇役という印象を受けるけれど、ハブモアカレーのプレートは、4つの器すべてが主役だと私には思えます。

日本で言うなら、お盆の上に小鉢のお惣菜が並んでいるような感じでしょうか。とにかく、カレーとか付け合わせとか、主役とか脇役とか関係なく、全部が美味しいのです!(笑)  その印象を松崎さんに伝えると、

「どういう風に伝えればいいかは、試行錯誤しているところなんですよね。付け合わせ、というと、確かにどうしてもサイド的な印象になっちゃうじゃないですか。かと言って、ここをカレーにするとまた、混乱しちゃうかなって。

お客さんにもたまに、『これ、全部がカレーなの?』と聞かれるんですけど、答えるのが難しいですよね。いつも、カレーというよりは、スパイスを使ったおかずです、と無難な説明で終わっちゃうことが多いんです。

もちろん、自分の中ではこれもカレーだと思っているんですが、そこで『はい、これ全部カレーです!』って答えた時の、自分の主観を押し付けてる感じがすごく嫌で(笑) なので、“スパイスを使ったおかず”、みたいなニュアンスで伝えた方が、先入観なしに食べてもらえるのかなと今は思っています。

その上で「あ、これもカレーだ、こんなカレーもあるんだ」って思ってもらえたら、「美味しい」と言われるのとはまた違った嬉しさを感じます」

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ところで、ハブモアカレーの席には、メニューと一緒に「カレーの御託」と書かれた1枚の紙が置いてあります。そして、そこには、「食べ方」も。

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「お勧めしたいのは、まず小皿のカレーや付け合わせを一品ずつ味わった後に、全品をご飯と一緒に混ぜ合わせて食べて頂きます。ご飯皿をパレットと見立てて、ご自分のお好きなように盛り付けてください。味や色彩の変化を2度楽しめます」

とのこと。

でも実は私、最初の数回は混ぜて食べることができなかったのです! なぜなら、一つ一つがとても美味しいので、その美味しさを失うのがもったいないから(笑) 美味しいものを、そのまま美味しく食べたかったからなのです。

でも先日、初めてヨガ仲間と行った時に、インド経験のある友人が「うん、全部混ぜるよ!」と言って混ぜ始めたので、この時初めて、全部を混ぜて食べてみました。

なんと! 予想以上に、美味しい!!

混ぜ方によって味も少しずつ変わり、その度に新たな美味しさを味わえるんです。「食べ方」に“パレットに見立てて”とありますが、まさに、絵の具が混ざり合ってステキな色が生まれるかのように、美味しさがどんどん広がっていきました。

「やっぱり最初は、混ぜるのちょっと抵抗ありますよね。でも、混ぜてみると、味もそうですけど、食感の違いが面白いんですよね。特に、アチャール(漬物)のコリコリ感は他の料理にはないので、混ぜると楽しいですよ!」

地方出店と、海外進出 ハブモアカレーの夢は広がる

さて、人気のハブモアカレーですが、今後はどんな展開を考えているのでしょうか。

「一番は海外、その中でも、ニューヨークでお店を開くことです。海外のお客さんの中でも、アジアの人は自国で慣れ親しんだ味と違うということで残される方もいるんですけど、逆に欧米の人は、美味しい美味しいって言ってくれるんですよね。コンセプト的にも親和性が高いなと自分で勝手に思っているので、出店してみたいな、という思いはあります。

一方で、国内では地方でやってみたいと思っています。当初は、大衆受けしないと地方では難しいかなと思っていたんですが、実際にはおじいちゃん世代の人から子どもまでが食べに来てくれるんですよね。辛さもそれほどないので、誰でも食べられる。地方でも挑戦してみたいと思っています」

優しい味だからこそ、飽きずに、毎日でも通いたくなる。まさに、Have more curry! 地方出店、そして海外進出、応援しています!

さあ、また食べに行こーっと!

【店舗情報】
ハブモアカレー
東京都港区北青山3-12-7 カプリース青山B1F
TEL/03-3407-7001
営業時間/11:30~20:30(L.O.20:00)
定休日/無休(年末年始を除く)

http://havemorecurry.jp/
https://www.facebook.com/ハブモアカレー-1479069355668153/

 

 

平地紘子(ひらち・ひろこ)

hirachihirokoシブヤ散歩新聞・副編集長。フリーライター/ヨガインストラクター。10年以上お堅い新聞記者だったのに、3年間のアメリカ生活でヨガインストラクターに転身。でもやっぱり、書くのも好き。かなり色黒なので「サーファー?」と聞かれるけれど、見かけ倒し。スッピンのまま自転車で中目黒界隈を駆け抜けているだけです。ヨガウェアで魅せる筋肉美が最近のプチ自慢。フィットネスやマッサージなど、体にいい情報をお伝えします!
yoga teacher HiRoko HiRachi

 

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