新型コロナウイルスに負けず、渋谷で頑張っているお店を応援しよう! とスタートしたこの企画。第8回目は、お店に訪れた人が安心して過ごせるために施された工夫を、お店の魅力とともにお伝えします。
それでは今回、ご紹介するお店のタイトルはこちら!
─地域にとって必要なお店でありたい。「EBISU 燻製 APARTMENT CAVE」の安全、安心を追い求めたサービス
─お客さんにとって、自由で、居心地のいい場所であり続けるために。渋谷のカフェ「factory」のアイデア術
地域にとって必要なお店でありたい。「EBISU 燻製 APARTMENT CAVE」の安全、安心を追い求めたサービス
「渋谷で頑張っているお店の情報をお寄せください!」と呼びかけを始めたのが4月。その後、読者の方から情報を提供してくださったお店をご紹介してきましたが、また新たに「応援したい!」と情報をお寄せいただき、取材しました。燻製料理とワインのお店「EBISU 燻製 APARTMENT CAVE」です。
写真提供=EBISU 燻製 APARTMENT CAVE
まず最初に素朴な質問をしてみました。「なぜ燻製なんですか?」
すると、担当してくださった開米(かいごめ)さんがこう答えてくれました。
「燻製は、紀元前からある煙をあてて作る料理なのですが、和洋中ジャンル問わずにお客様に楽しんでいただけるんです。ドリンクも燻製にできます。燻製にすることで、料理の可能性が広がっていると感じています」
「燻製の作り方は、30℃以下で燻す冷燻、80℃以下で燻す温燻、90℃以上で燻す熱燻があります。当店では、最も作るのに手間がかかって難しいといわれる冷燻にこだわっています。ほのかな燻製の香りが料理の味をさらに引き出してくれるんです」
お店があるのは代官山に近い恵比寿。友人同士、または恋人たちが誕生日やアニバーサリーのお祝いにと訪れることが多いそうです。ご近所の方を中心に、ひとりの時間を楽しむお客さんの姿も当たり前の光景で、コミュニケーション好きなスタッフが話し相手になったりするそうです。おすすめメニューは、割り下も燻製された「燻製すき焼き」。これからの夏の季節は、鉄板でお肉を焼いて食べる「燻製焼きすきやき」に変わり、生卵も燻製で、冷え冷えの燻製トマトをすって、熱々のすき焼きにつけて食べるスタイルが人気なのだそうです。
夏のおすすめ「燻製焼きすきやき」。写真提供=EBISU 燻製 APARTMENT CAVE
そんなEBISU 燻製 APARTMENT CAVEは、4月8日からお店を休業。5月7日に時間を短縮させて営業を再開しました。スタッフの検温と体調チェックから始まって、窓とドアの開放、サーキュレーターによる換気、消毒など衛生管理を徹底させました。
「地域にとって必要な存在でありたいと思っています。一時期は本当に街から灯りも人も消えたんですね。今回、万全な準備をして開店しましたが、もしもお店が開いていることに安心感を持っていただけるお客様がいてくださったら、その思いに応えたいと思っています」(開米さん)
創業時からの定番メニュー「燻製焼きチーズ」。写真提供=EBISU 燻製 APARTMENT CAVE
LINEやmenuなどアプリから注文できるテイクアウト、デリバリー、さらに以前はなかったランチタイムも始めました。
「テイクアウト料理は、安全面を考慮して、真空パックにしたものを冷凍するか冷蔵してお客様にご提供しています。少しでも安心していただけるとうれしいです」(開米さん)
写真提供=EBISU 燻製 APARTMENT CAVE
馴染みのお客さんをはじめ、思い出づくりにお店を選んだお客さん、またランチタイムやテイクアウトなどで今回初めてお店のことを知ったお客さんが、「ここに来てよかった」と思えるようなお店づくりとサービスは何か。その答えを出すために、日々、今できることを見出しているEBISU 燻製 APARTMENT CAVE。今後についてはどう思っているのでしょうか。
「新型コロナウイルスの影響が広がる前とこれからとでは、お店に求められることも異なると思っています。もしかしたら、これまでだったら考えつかなかったようなことを始めるかもしれません。『飲食店だからこれしかできない』と決めつけるのではなく、地域やお客様に喜んでいただけることにこだわっていきたいです」(開米さん)
お客さんにとって、自由で、居心地のいい場所であり続けるために。渋谷のカフェ「factory」のアイデア術
「なるべく長くこの場所で続けたいですね」。
こう語るのは、青山学院大学から徒歩2分の場所にあるカフェ「factory」の西原さん。
写真提供=factory
factoryは2011年にオープン。2018年、西原さんの渡米にあわせて一度クローズしたのち、2年の歳月を経て今年4月8日に同じ場所で再びオープンしました。西原さんが渡米中、同じ場所で経営していた「BULCAFE」は西原さんの知人のお店。居抜き物件として買い取ってくれたそうです。
西原さんがfactoryを再開するために帰国したのは今年3月。開店した4月8日は、緊急事態宣言が発令された翌日でした。
「できることをやるしかないと思っていました」と話す西原さん。換気をはじめ衛生管理を徹底し、テイクアウト、デリバリーなど、お客さんが少しでも安心できるように心を配ります。さらにタッチレスの水栓やセンサー式のハンドソープなど、新しい工夫も加えていったそうです。
「外出自粛が要請されても、在宅で仕事ができない方がいて、そういった方がfactoryには来てくださっていました。昔からfactoryを知っている方は、『帰ってきたんだね』『久しぶり』と言ってくれましたね」
西原さんは、factoryを経営するまで多様なキャリアを経験された方でもあります。大学時代に骨董通りにあるジャズクラブ「ブルーノート東京」でアルバイトをし、そのまま就職。その後は文房具の輸入代理店やIT企業、飲食店などに就職したのちに、factoryオープンとともに「いつか飲食店を経営したい」という思いを叶えたそうです。
写真提供=factory
そんな西原さんに、「なぜ渋谷なのか」という質問を投げかけてみました。すると、こう答えてくれました。
「ブルーノート東京から始まって、渋谷と青山にある会社に縁があったんです。それに、渋谷は若者の街といわれていますが、自分にとっては文化発祥の地で、IT企業が多いイメージがありました。新しく何かが生み出されるこの街でカフェを営めたらおもしろそうだと思ったんです」
factoryの人気メニューは、自家製バターチキンカレー。西原さんがイチから作っています。お店をオープンする際、相談に乗ってもらっていた友人に教えてもらったレシピをもとに、お客さんの声を反映させながら改良を重ねていったそうです。
写真提供=factory
「毎日食べてもあきないカレーを作りたかったんです。実は、辛いのが苦手というお客さんが多かったので、クリーミィで、まろやかな味わいにこだわって仕上げました」
肉屋の餃子、ぜんざいといった裏メニューも、お客さんの声に応えたもの。クラフトビールは50種類以上そろっています。
写真提供=factory
「いろいろ試して厳選したものをお店で出しています。美味しくて、お客さんに喜んでもらえたらいいなと思っています」と西原さん。カフェという枠にとどまらない考え方で、お客さんにとって居心地のいい空間であることを追求しているように見えます。「回転率や客単価よりもリピート率を大切にしたいんです」という西原さんの言葉にもカフェの可能性を感じます。
写真提供=factory
西原さんは、factoryのTwitterをこまめに更新しています。それを見ると、お店と西原さんがどんなに愛されているかがわかります。ぜひ一度のぞいて、こちらからも魅力にふれてみてください。
【店舗情報】
EBISU 燻製 APARTMENT CAVE
東京都渋谷区恵比寿西1-30-9 パサージュ代官山B1
03-6416-3866
営業時間/ ランチ:11:30〜14:00(LO13:30)
ディナー:17:00〜22:00(LO21:00)
テイクアウト/11:30〜21:00
http://kunsei-apartment-cave.com/
Instagram:https://www.instagram.com/ebisu_kunsei_apartment_cave/
factory
東京都渋谷区渋谷2-8-7 青山宮野ビル1F
03-6419-7739
営業時間/平日:12:00 – 22:00 土曜:不定休
※ 営業時間は変更になる場合があります(詳細はTwitterでご確認ください)。
定休日/日曜日、祝祭日
http://factory.cr
Twitter:https://twitter.com/factory1124
・電源Wi-Fiフリー
・「日中は込み合うのでゆっくり過ごしたい時は夜がおすすめです」(西原さん)
※社会の状況により、各店舗、施設の取り組みは刻々と変化しています。ご利用の際には、サイト等でご確認いただけますようお願いいたします。
<編集部からのお願い>
みなさんの身近に、工夫してお客さんにサービスを届けていたり、新たな取り組みをしている人やお店がありましたら、ぜひ、こちらからシブヤ散歩新聞まで情報をお寄せいただけないでしょうか。
https://forms.gle/zPidHb4ER5BEL8WS8
特に、大きく発信する力がなかったり、SNSなどの情報発信ツールを持たないお店の情報こそ、お待ちしております!
2020年6月10日現在
たかなしまき
フリーライター。OL、業界紙記者、海外ガイドブックや美容雑誌の編集者を経て、現職。愛媛県で生まれ育っていた時から都会に憧れていたわたしにとって、渋谷界隈は歩いた分だけ東京のおもしろさに出会える街。現在、神奈川県在住ですが、何かと渋谷や表参道に出没しています。ふらーっと路地に入って探検したり、人間観察したり、気の向くままに歩くのがお気に入り。