みなさまこんにちは!シブヤ散歩新聞・編集長の界外(かいげ)です。
2018年3月2日〜4日の3日間、渋谷ヒカリエにて開催された、「JAPAN BRAND FESTIVAL 2018」に参加してきました。「JAPAN BRAND FESTIVAL」は、組織や立場を超えて、日本発のプロダクトやサービスの魅力を発信・展開していく現代版「楽市・楽座」だそうです。全国各地の職人さんや地域創生のプロデューサー、クリエイター等が集い、会場はとっても賑わっていました。
3日間、様々なトークや展示があったのですが、今回は
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ユネスコ クラフト都市×日本遺産のまち篠山市
クリエイティブシティ丹波篠山が起こす農村イノベーション
「丹波焼・王地山焼の匠の技と篠山の美しい暮らし」
モデレーター/小山 龍介さん(日本遺産プロデューサー、株式会社ブルームコンセプト 代表取締役、名古屋商科大学大学院 ビジネススクール准教授、一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会 代表理事)
パネリスト/小山 達朗さん(篠山(ささやま)市政策部創造都市課)
市野 秀之さん(丹波立杭陶磁器協同組合 副理事、Tanba Style 渉外委員、雅峰窯 (がほうがま) 4代)
竹内 保史さん(王地山焼 陶工)
堀内 康広さん(TRUNK DESIGN 代表、クリエイティブディレクター、デザイナー)
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のレポートをお伝えします◎
渋谷イベント散歩 No.9 「JAPAN BRAND FESTIVAL 2018」日本遺産のまち篠山市で、丹波焼・王地山焼の匠が後世につないでいくもの<前編>
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小山龍介(こやま・りゅうすけ/以下、小山(りゅ))
30年前に「王地山焼」を復興する使命をおった竹内さんが、伝統をもう一度現代に蘇らせました。一方で堀内さんは、竹内さんとは違った視点で「王地山焼」をデザインしています。おふたりがやっていることは一見、逆ベクトルのように見えますし、衝突もあるのかもしれません。ですが、「王地山焼とは」という本質を大切にしてそれを表現しようとする。その部分においては、実は同じことをしている気がします。
ちなみに堀内さんは、「王地山焼」の本質とはなんだと思いますか。
堀内康広(ほりうち・やすひろ/以下、堀内)
青磁という色や技法が特徴的で、とにかく繊細なものです。あまり遊びがないと言えるかもしれません。遊びが少ないと言うことは、プロデュースする側にとっては難しい存在でもあります。でも、だからこそ「らしさ」がある気がします。
小山(りゅ)
竹内さんはいかがですか。
竹内保史(たけうち・やすし/以下、竹内)
「王地山焼」の型をつかうという伝統は続けていきたいですが、自分の作品としては、鎬(しのぎ)の作品をつくっていきたい。若い人がこの作品に憧れて、「王地山焼をやりたい」と思ってもらえたらいいなと思っています。王地山焼の特徴は青磁だと思うんです。だから、「青磁の焼き物は、やっぱり王地山焼」と思ってもらいたい。そう考えると、鎬の柄が青磁の釉薬には合っていると思うんです。
小山(りゅ)
「王地山焼」の青磁の美しさを追求していく中で、鎬の作品が生まれたわけですね。古いものを復活させながら、新しい青磁らしさや、「王地山焼」らしさを追求している。堀内さんも、「王地山焼」らしさを大切にしながら、それを食卓で使ってもらい、広く知ってもらうためのデザインをしています。そう考えると、実は同じ方向を向いているのかなと。なので、仲良くしてくださいね(笑)。
竹内
いやいや、僕たち仲良いですよ(笑)。
(竹内さんから堀内さんに握手を求めると、会場から拍手)
小山(りゅ)
私の会社でやっている「ニライカナイ」という雑貨屋さんでは、「Tanba Style」を取り扱っているのですが、非常に好評で、たくさんの人に手に取ってもらっています。
今度は市野さんにお伺いしたいのですが、「Tanba Style」ではどんな「丹波焼」らしさを追求されているのでしょうか。「丹波焼」の本質とはなんだと思いますか。
市野秀之(いちの・ひでゆき/以下、市野)
「王地山焼」と若干違うのは、「地元で採取される山の土を利用して、その土地でつくったもの」という、非常に広義な定義しかできないこと。日本では珍しい左回転の職人が多いといった特徴もあるのですが。現在、850年の歴史の中で最も多くの窯があります。そういった状況の中で、「丹波焼とは」とひとくくりにはできない部分がたくさんあります。最古の登り窯を復興したことや、煙を絶やしていないこと、焼成方法、丹波土の焼きしまりや風合いだけは守らなければと思っています。
「丹波焼」は「七化け」と言われるくらい、それぞれの時代において変化してきました。それが良いところであり、悪いところでもあります。私個人としては、良いところだと思っていて、今後もその時代の生活空間にあった提案をしたいと思っています。
小山(りゅ)
今日のセッションでは、焼き物の紹介を中心に篠山の多様な魅力をみなさんにお伝えしてきましたが、都心からわずか1時間の場所に、日本昔ばなしに出てくるような古里の風景が残っていることも、篠山の大きな魅力のひとつです。その古里の風景の中で「丹波焼」が生まれ、「王地山焼」が焼かれているんですよね。実際にその場所に住まれている方は、当たり前の風景になっているのかもしれませんが。
堀内さんはお仕事柄、いろんな地域をご覧になっていると思いますが、篠山の魅力はどんなところだと思いますか。
堀内
人の温かさでしょうか。篠山に行くと、いろんな場所や人を紹介してくれたり、一緒に食事をしたりします。あと、篠山に行くと両側に山があって、窯元が並んでいる。そういった自然の中で作られるものの魅力や力強さは、街にはない魅力だと思います。自然の中で脈々と受け継がれ、それを守っている人と接すると、デザイナーとしてものすごく良い刺激をもらいますね。
小山(りゅ)
今回の「王地山焼」のシリーズは、そういった風景と繋がる部分があるのでしょうか。
堀内
そうですね。一方で、もっともっと外に出したいと思っています。いま、台湾や香港でのプロモーションをしているのですが、商品と一緒に食や文化・歴史も輸出しようと考えています。商品を見た人が、「日本に行くなら、あそこにいきたい」と、旅行の選択肢になるような提案をしたいと思っています。
小山(りゅ)
確かに篠山には、オープンな雰囲気がありますね。オープンな雰囲気だからこそ、いろんな影響を取り入れ、「七化け」したのかもしれません。
「王地山焼」も、「丹波焼」も、今後も新しい流れを取り入れて、新しいものを作り出していく。その原動力のひとつに、オープンさがあるのかもしれませんね。
堀内
ビジネスとして考えれば、うちの会社とだけつきあってもらいたいですよね。数年前までは、そういう気持ちも多少あったのですが、だんだん、産地を残すということに思いを馳せるようになり、今はシェアしていかなければ、と思うようになりました。いろんなクリエイターが篠山にやってきて、一緒にものづくりをやってみたいと思えるプラットフォームをつくることが大事だと思っています。
市野さんも同じ考え方をもっていらして、「丹波焼」には60軒の窯元がありますが、外部のクリエイターから話があった時、「それなら僕よりあそこが得意だよ」と自然に言える。その根元には、「丹波焼を残したい、紹介したい」という気持ちがあるんです。そういった思いからオープンさが生まれている気がします。
市野
36年間ロクロ師としてやってきたので、どんなものも作れますが、それぞれの職人さんごとに得意な技術があります。場合によっては、自分より適任な方を紹介するのが私の生き方であり、多くの「丹波焼」の職人さんのあり方なんです。篠山の良いところとしてオープンだというお話がありましたが、私自身はそう思ったことはありません。そんなに深く考えていないんですよ(笑)。
「七化け」と言いますが、自然に化けることはできません。先人たちの技術がベースにあり、いま、小山さんや堀内さんとの関わりがあって、新しいものがうまれた。こういったつながりによって残された産地だと思っています。900年、1000年と続けていくためにも、今日出会ったみなさんにも篠山のことを知っていただけたらと思っています。
小山(りゅ)
「七化け」の次の「八化け」に、みなさんも関わってもらえたら。第二の故郷としてもとても良い場所ですので、これを機会に足を運んでもらえたらと思います。
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いかがでしたでしょうか。篠山の魅力、そして、丹波焼、王地山焼の魅力が伝わったでしょうか。
私は丹波焼の匠、市野さんの「場合によっては、自分より適任な方を紹介するのが私の生き方であり、多くの「丹波焼」の職人さんのあり方なんです」という言葉にグッときました。篠山の歴史や人の温かさが、この一言に凝縮されている気がします。
GWや夏休みの旅行先として、ぜひ足を運んでみてください◎
【Tanba Style】
https://tanbayaki.net/
【時間をうみだす移住雑貨®「ニライカナイ自由が丘」】
〒152-0035 東京都目黒区自由が丘3-6-10
東急東横線・大井町線「自由が丘」駅 正面口より徒歩7分
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界外亜由美(かいげ・あゆみ)
シブヤ散歩新聞・編集長。クリエイティブ・ディレクター/プロデューサー/コピーライター。三重県の伊賀市、忍者の里出身。ちなみに、界外(かいげ)は本名です。東京に来て10数年目。いつ来てもワクワクする渋谷の街が好き(いまだに渋谷駅で迷う。方向音痴……)。興味のあるジャンルは料理、酒、発酵、お笑い、短歌、絵本、子育て。シブヤ散歩新聞ではレアキャラ的頻度で執筆予定。
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