こんにちは！中学生ライターのたいちです。

僕たちがふだん利用する地下鉄の上には、何があると思いますか？渋谷駅から出発して地下を走る路線は全部で６つあります。Googleマップで見てみると、多くの線路の真上は、国道246号線や明治通りなどの大きな道路が走っています。

それは、もともと線路をつくるときに、大きな道路の下を通るように計画されたからです。民家などの私有地の下を通るとなると、線路の建設許可や交渉に膨大に時間やお金がかかるので、大きな道路に沿って線路を伸ばしていくのが、線路の建設計画の基本だといえるでしょう。

ところが、大きな道路とは無関係に、住宅地や商業地の間をつっきっていく線路があります。渋谷と吉祥寺を結ぶ京王井の頭線です。井の頭線の直上には、一体どんな風景が広がっているのでしょうか？ぱっと考えても思い出せません。そうだ、実際に歩いてみるしかないじゃない！

井の頭線渋谷駅からスタート！

井の頭線渋谷駅にやってきました。探索開始です！今回の散歩ではGoogleマップを使って、井の頭線の直上にできるだけ近い道を歩くことにしました。
(ちなみに、僕の愛用スマホはIphone5です。画面が割れています。※取材後ついに壊れました)

井の頭線のホームは、「渋谷マークシティ」の2階にあります。2階から出発したと思ったらすぐに地下に潜るので、風景がいきなり変わるのが印象的です。

そんな井の頭線を、今日は外から眺めていきます。まずは、「渋谷マークシティ」を出てみましょう。

駅を出たとたんに現れた、ビル２階分の高低差

渋谷駅マークシティの1階と直結している「渋谷駅西口」を出て、すぐに右折します。するとすぐに上り坂が見えてきました。写真で見るとそうでもないですが、かなりきつい坂になっています。まさにここが「渋谷」の「谷」の端なわけです。

坂の途中にあるマークシティの入口の案内をみると、「4階」の文字が。井の頭線ホームのある2階とは、2階分の高低差があることになります。この時点で、すでに井の頭線は地下に潜っています。断面図にすると↓こんな感じです。

道路の交差点が鉄道の交差点

Googleマップを見ながら、地下を走る井の頭線の線路に沿ってしばらく歩くと、道玄坂通りに出ました。ここに「道玄坂上交番前」交差点があります。一見ただの交差点ですが、マップ片手に散歩中の僕の目にはこのように映るのです。

よく見ると田園都市線と井の頭線がクロスしてるじゃないかっ！と。一見したらただの交差点。ここを通る人のほとんども、まさか下に電車が走っているとは意識せずに歩いてることでしょう。

交差点の脇に、こんなオブジェがあります。大成 浩さんという彫刻家による「風の標識」という作品で、なんと、同じものが日本各地にあるそうです。渋谷にあるのは「風の標識 No.16」。全部でいくつあるのか気になって調べてみましたが、少なくともNo.62まではあるようです。何を表現しているのか、誰が何の目的で全国各地に建てたのか、もしかしていまだに増殖中なのか…謎の多いオブジェです。

江戸時代のメインストリート「滝坂道」

交差点を渡ると、井の頭線は裏路地の方面へ進んでいきます。

坂の端に「滝坂道」と書かれた道標が。フォントからも、どこか由緒正しそうな雰囲気を感じます。

実はこの「滝坂道」、江戸時代に東京から甲府・諏訪に向かう「甲州街道」が開通する以前から、江戸と府中を結ぶ道路として使われていた長い歴史を持つ道なのです。渋谷で「大山街道」(今の国道246号線)と分岐し、調布近くの「滝坂」で後に開通した甲州街道と合流することから、「滝坂道」と呼ばれるようになったとのこと。そんな江戸時代のメインストリートの名残が、今の渋谷にもささやかに残っています。

線路の真上にワインバー

ここからしばらくは線路から少し離れた道を歩いていきます。路地のつきあたりが階段になっていたりと、でこぼこした地形であることが実感できます。

しばらく歩くと三叉路が見えてくるので、右に曲がります。そして、すぐに左に入ると、

このあたりはまさに井の頭線の真上に当たります。炭焼き屋やワインバーなどの飲食店が立ち並んでいます。線路の真上で営業しているこじんまりとした店に、風情を感じる大人も多そうです。

神泉駅から見た風景です。よく見ると、トンネルの真上に飲食店が立ち並んでいる（右奥）のがわかるでしょうか。

渋谷区と目黒区の区境を通る

さて、神泉を出発した井の頭線は、再びトンネルへと潜っていきます。

出発点の渋谷駅と同じく神泉駅付近も谷のような地形になっています。渋谷駅から井の頭線に乗ったときに、一瞬だけ外に出る部分があるのですが、そこがまさにここ、神泉駅付近です。起伏の多い神泉・渋谷に鉄道を通す上で自然と生まれた景色の変化を感じられる区間です。

ついに目黒区に突入、そしてトンネルから出た…！

さて、神泉駅を出たあたりから、街の雰囲気がどんどん変わっていきました。渋谷から神泉にかけては住宅と店が半々くらいかな…という感じだったのですが、神泉駅を出た途端に、住宅の割合が増えたような気がします。そして、やっぱり坂が多い！

住宅街を歩くこと5分、山手通りに出ました。

山手通りの上を走るのが「渋目陸橋」。その名の通り、この通りは渋谷区と目黒区の区境になっています。
「渋谷散歩」はここまでですが、せっかくなので、次の駒場東大前駅（目黒区）まで歩いてみることにします。

駒場東大前駅までは、もうすぐ

山手通りを渡り、目黒区に入ったところで、井の頭線もふたたび地上に出てきます。

ここからはもう線路も地上に出ているので、ひたすら線路沿いを進んでいきます。この辺は戸建て多めのゆったりした住宅街です。出発地の渋谷は商業地でしたが、そこから、散歩が進むとともにどんどん住宅街になり、生活感があふれる感じになっていく。井の頭線沿線は、一駅ごとに街の様子が全く変わってくるんだなと実感しました。

「東大前商店街」に入りました。この日は年始まもなくということもあり人通りは少なめでした。駅も近づいて、踏切も見えてきました。

線路脇の雑木林、奥には何がある？

踏切の先に見えてきた雑木林。この木立の奥には、何があると思いますか？実はここ、東京大学の構内なんです。東大って、こんな静かな、浮世離れした感じの場所だったんですね…。

せっかくなので東京大学にも立ち寄り、学力向上を願って拝んできました。東大には面白い立て看板がたくさんありました。

ついに駒場東大前駅に到着しました！
渋谷から駒場東大前駅まで、2駅分の散歩。電車に乗れば2分ほどでついてしまう距離です。普段乗ってる路線の真上はどうなっているのか、という素朴な疑問から始まった散歩でしたが、自分の足で歩いてみることで、いろいろな発見がありました。

まず、渋谷の起伏を脚で感じることができて非常に面白かったです。また、渋谷のビルの立ち並ぶ光景から、わずか2駅の間に飲食店、住宅街、大学など、街のさまざまな姿を見ることができました。その変化のグラデーションが、歩いていてとても心地よかったです。そして、風景の中に井の頭線が溶け込んでいて、井の頭線はやはり「生活路線」なのだなぁと実感しました。

今度の休日、皆さんも地図を片手に線路をたどってみませんか？1駅、2駅分歩いた、という達成感と、今まで見過ごしていた沿線の風景に出会える面白さを、ぜひ感じてみてください。

たいち

都内に住む高校生。渋谷では、買い物をしたり友達と会ったりしています。小さい頃から鉄道が好きで、今は、都市や交通について自主的に研究しています。鉄道の他には自転車や、路線バスも好きです。（移動が好きということかもしれません）。