表参道にほど近い東京ウィメンズプラザで、6/29(金)の夜に開催された「NECワーキングマザーサロン」。「母となってはたらく」をテーマに、自分の言葉で(「私」を主語にして)話すワークショップです。
「母」、「はたらく」という言葉が入っていますが、未婚でも、未就労でも女性ならどんな立場でも参加できます。
そもそも「はたらく」って、どういうことなのでしょうか?
お金を稼ぐことが「はたらく」?
会社に所属することが「はたらく」?
ここ数年「働き方」という言葉がクローズアップされていますが、ここで話される「はたらく」は、会社の制度の話でもなく、自分の働きが世の中にどう捉えられているのか? でもありません。
このワークショップでは、自分自身の「はたらく」を考え、自分の思いを発見していきます。
ちなみに、「NECワーキングマザーサロン」は、産後の女性をサポートする認定NPO法人マドレボニータが行っているプロジェクト。一般市民がプロジェクトメンバーとして参画し、全国各地(今年は16チーム)で展開しています。
取材時の会は、平日の夜に開催されましたが、土日昼の時間帯での開催も多く、12月上旬まで、各地で行われます。
▲「母となってはたらく」を語るときに、手助けになってくれるキーワードが「人生」「仕事」「パートナーシップ」。これらの言葉が、自分のことを話す時のきっかけになってくれます。
コミュニケーションワークでわかっていく、自分の気持ち
「NECワーキングマザーサロン」は、いわゆるコミュニケーションワークによって進められていきます。自分のことを内省する時間があり、隣の人と組んで交互に話すペアワークで話を聞いてもらい、全体で感じたことなどをシェアするという流れになっています。
▲「自分を振り返り、私を主語として話す」ことは、いきなりパッとできません。そこで、ウォーミングアップとして「Good & New」というワークを行います。
▲ペアワークでは、交互に自分の話をしていきます。聞く側になったときは、口を挟まず、ただ耳を傾けます。
このワークショップは、「復職後はこうしたほうがいい」、「仕事の両立のためにはこんなことが必要だ」などを誰かに教わりに来るのではなく、自分のことを深掘りしていく場です。もちろん、他の参加者に子育ての先輩がいて、参考になる意見を聞けることも多々あります。しかし、いろんな意見を聞くことで考えるのは、「自分はどう感じた?どうしたい?」です。
毎日、忙しく働いたり、子育てしていく中で、「なんで、はたらくんだっけ?」と考える時間もないので、こういう立ち止まれる時間があると、「自分の立ち位置」を感じられ、次の一歩のイメージが付くのではないかなと思います。
とくに、子供を産んでからの女性は、子供、育児、夫、家族、保育園、仕事、会社、社会制度などなど、さまざまな要素が複雑に絡み合う生活をしています。毎日、保育園と仕事場と家の移動で一日が終わってしまう気がする…なんていう人もいるかと思います。
そんな絡み合った要素を紐解いていく時間でもあるのです。
▲ちょっとブレイクして、体をほぐします。体がこわばっていると、なかなかリラックスして話せないもの。
みんなの話を聞いて、「自分がどうありたいか」の焦点が合ってくる
▲ワークショップの「進行役」という立場の人も、いち母親。「母となってはたらく」を話すことで、自分の気持ちに気づいていくのは、参加者と同じなのです。
ペアワークのあとは、そこで感じられたことを、ペア以外の人にも共有していくのですが、「人の話を聞いて、自分の気持ちを確かめる」ということが起こってきます。
「人の役に立ちたいという話を聞いて、気になるなと思っていた自分がいました。今は(人の役に立ちたいという)気持ちはないけれど、本当は自分も役に立ちたいのかな?」
「目標をもっている話を聞くと、すごいことに聞こえて…。それができない自分がいます。でも、それも含めて私だから、と最近わかってきて…。みんなにそんな私自体を認めてほしいんだという気持ちがあります」
「はたらくは、傍(はた)を楽にする、という言葉を聞いて、仕事をすることは、会社にいて稼ぐことだと思っていたけど、しっくりこなかったんだと気づいた」
まるで化学反応のように、言葉が空気を変えていきます。でも、その空気はみんなが合わせなくてはいけない空気ではありません。一人ひとりのなかで起こっていることが、伝わっていく感覚。
そして、一人ひとりが、自分なりの発見や気づきを持ちかえっていきます。最後には、この場で感じたことをそれぞれ一つの単語にして共有し、終了となりました。
ワークショップ終了後は、近くのカフェで懇親会。このワークショップでは、いわゆる「腹を割って話す」状態になるので、初対面でも話がつきません。
金曜夜の表参道に送り出してくれた子どもや夫に感謝しつつ、「○○ちゃんのママ」や「○○さんの奥さん」ではない、「わたし」を確認する時間になりました。
▲この日に参加したチームスタッフも懇親会に合流。チームメンバーで共有する時間も大切なひとときです。筆者もボランティアのプロジェクトメンバーとして参画しています。
東麻吏(ひがし・まり)
エディター。紙媒体の専門誌副編集長、webメディアの編集長を経て、フリー。ライティングや編集のほか、コンテンツコンサルとしてメディア制作・運営のサポートや「伝える講座」も行う。個人活動で親子のハイキングイベントを主宰。渋谷は高校時代の思い出の街。今はなきシネマライズで映画を見たり、文化祭や体育祭の後はセンター街で打ち上げをしたり…。最近は、表参道ウィメンズランで走ったりしてます。