多様化する現代社会の中、それぞれがそれぞれの想いを携えて「何か」に向かっていきます。
想いを持った誰かを、時とともに移り変わっていった軌跡を。まるでプラネタリウムで投影された星のようにいつでも・いつまでも眺められるように。
『渋谷プラネタ新聞』では、渋谷に携わる新しいことへのチャレンジや願いを持った人を紹介しています。。
今村柚巴(いまむら・ゆずは)さんインタビュー
今回は、大学に通いながら全国のゲストハウスを周る日本一周を遂げた今村柚巴さんにインタビュー!
活動に至ったエピソードから渋谷の100BANCH(ヒャクバンチ)で行ったプロジェクト・大宇宙大学のお話、世界青年の船メンバー当時のお話など、学生として過ごしながら得た豊富な経験と想いをお聞きしました。
ノマド女子大生がゲストハウスを巡る日本一周の旅
ー面白いことを色々とされているそうですが、柚巴さんの活動について教えてください。
これまでの活動は多岐にわたりますが、直近だとオンライン授業を受けながらの日本一周と面白い場所を大学と定義して旅する大宇宙大学です。
ーなかなかパンチが効いていますが、詳しくお聞きしたいです。
まず、日本一周は元々とあるオンラインイベントでオンライン日本一周をしていたことがきっかけになりました。
当時コロナ禍で時間があったのでオンライン日本一周を始めましたが、達成間近というときになって就活シーンに入ってしまい断念したんです。その後、エントリーシート(ES)の項目にある「学生時代に力を入れたこと」を書いている時にふとこれまでの自分を振り返ってなにもやってないことに気づきました。
これまでのイベントや活動を反省した時、忙しい中で周囲の人達に協力してもらった結果が「がんばりました」では済まない、失礼なことだと思ったんです。だったら自分はなにをすばいいかと考えて、せめてオンラインイベントで「いつか会いに行きます」と言ったゲストハウスの人たちにまず会いに行こうと決めました。その際に、活動を知ってゲストハウスにたどり着いてくれるひとがいたらいいなと思ってクラウドファンディングの企画も考案しました。
本気で自分の「やりたい!」を言い続けて、真摯にやりたいことをやるという地道なやり方でしたが、無事に日本一周してクラファンのリターンで本を作りました。その中で、いろんな場で存在するコミュニティなど学校以外の場を知りましたね。
学校や家以外の場所に出向くことがまだまだ一般ではないからこそ、自分の欲している人や欲しているものによってちがうコミュニティという場に「こんな面白い場所があるよ」と旗を立てられればと思います。
ー私もサードプレイスがあることでなんだか救われたと思うことがあるので、なんとなくわかります。それから、日本一周中は大学の講義を受けながらだったと聞いて衝撃を受けました。
オンライン授業を受けながらの日本一周は、試しにやってみると意外にできてしまって。そもそもコロナ禍でオンライン授業が始まって「可哀そう」と言われるのが嫌だったんですよね。だったらなにかできるよね、と思ってやってみました。
アンチテーゼというほど大それたものではないですが、やろうと思えば活動できることをもっと伝えたいんです。いろんな地域がおもしろいことを伝えたい。バスを使えば1時間くらいでくらいで行けるし、1週間くらいそこで過ごしたりもできるので、通いながらでもいろいろなところに行けたらおもしろいですよね。例えば、授業がオンラインか現地か選べるようになってもいいんじゃないかなと考えています。
「ここは今から大学です!」とおもろい場に旗を立てる大宇宙大学
ー日本一周の後に開始された大宇宙大学についてもお聞きしたいです。
大宇宙大学は、渋谷にある「100年先に向け100のプロジェクトを生み出す」100BANCHで採択されたプロジェクトです。今までの活動に対してロゴマークになるようなものがあったらおもしろいと思ってできました。「ここは自分にとっておもろい場所なので今から大学と定義します!」と言い張る活動ですね。色々な場所を大学化することで学校や家以外の場所、フリースペースやコミュニティなどの「ガイドブックには載っていないけれど、ここっておもろいよね!」と言えるところに旗を立てるのが私のやっていることです。
ーそうすると、大宇宙大学はノマド女子大生の延長線上にある考え方なんですね。
そうですね。2つ意味がありますが、ひとつは「どこでも大学として授業を受けられるとおもろいよね」ということ。もうひとつが、「いろんな場所に飛び込んでいい、自分の糧になれる経験が最終的に手に入る場所があればいい」ということです。わかりやすい形の学び以外にもおもしろいから、やってみたいがきっかけでも自分の糧にできればそれでいいんじゃないかなと。大宇宙大学はこれまでの活動を総括した結果です。根底にある想いは「家と学校以外の場所・サードプレイスを見つけて、いろいろな人に知ってもらうこと」という点で共通しています。
世界青年の船で開催、船上の成人式
ー日本一周や大宇宙大学を始めた頃より前にも海外で活動していたとお聞きしていますが、具体的に教えてもらいたいです。
世界青年の船というプロジェクトになります。大学のボランティアサークルで海外へ行ってから興味を持ったことがきっかけで参加しました。世界青年の船では、自身の研究をしている人や留学経験がある人たちと出会いました。その中で自分は、環境問題や人種問題よりは、どちらかと言うと身近な日常にフォーカスを当てることを大事に思っていました。
当時は、原則として成人式よりも事業を優先しなければいけなかったことがとても悲しくて。同時に、楽しいことを押し込めてまで真面目なことを優先しなきゃいけないの?と感じてしまったんですよね。その時、「せっかくなら船の上で成人式をしたい!絶対映える!」と思ったんです。
―船上の成人式はおもしろそうですね!実際に企画してどうでしたか?
実際には、アカデミックイベントに興味を示してくれる人は少なく、まず人を集めることが大変でした。
それでも、どうにか開催までこぎつけて100人くらいのお客さんが来てくれました。思えば、この時が私にとってのターニングポイントでした。やりたいことを実現させるのことは、自分にとって結果だけではなく、プロセスにも意味があるんだと思えた経験になりましたね。
―世界青年の船での経験が今の柚巴さんの活動を形作っているんですね。
そうですね。世界船の成人式以降も4回くらい小さなイベントをしていましたね。世界青年の船のメンバーが18歳~30歳までで、学生も大人もいる環境だったことが非常に良くて。
私一人ではわからなかったマネジメントの方法や方向性のアドバイスを、大人たちが「俺も作りたいからやろうぜ!」くらいのノリで教えてくれました。学生時代に大人と何かやることは経験値として大切ですね。世界青年の船は学校以外の場所で活動することの意味を知った転機でした。
大丈夫な場所、大事な人のために
―アグレッシブに行動されていますが、これから「やってみたい!」と思われることはありますか?
一番大切なのは、自分と親しいまわりの人だと思っています。社会的な問題も大切ですが、自分にとって大切な人やもののためになにかしたいです。
私は、自分がいても大丈夫な場所や自分にとって気の置ける人が大事です。自分には生活があって人生があるので、大きなことを成そうとは思いません。自分の武器は人より少しだけ多くの場所を知っていることと、その時に応じて相談するべき人がわかること。この武器が、誰かの役に立てたら、そして過ごしたい場所を自由に選択できる社会になればいいと願っています。
多様な人々にあった多面性のある渋谷の街
―ご実家が神奈川で小学校の頃から渋谷に通っていたとお聞きしていました。柚巴さんにとって渋谷はどのような街でしたか?
私はヒカリエが建設された頃と同じ時期に育ってきて、ヒカリエやモディが並んだ場所で高校時代を過ごしてきました。そういう場所で友人と集まって遊んでいましたね(笑)。
渋谷はホームタウンではあるけれど、特別と言うよりはただただ好きな街ですね。地方も好きで海外も好きで、好きの中に渋谷もあります。
―どちらかと言うと柚巴さんの場所のうちのひとつなんですね。渋谷の街のどのような所に惹かれますか?
渋谷は若者のイメージがあるけれど、私みたいな学生がいて大人もいて、多様な人たちのためにあるデザインが立ち並んでいるところが素敵だと思います。なんにでもなれるというか。若者にとっては遊び場で、大人にとっては社交場であって。ビジネスの場になればデートスポットになることもある、多面性があるのが渋谷だと思います。
空峯千代(そらみね・ちよ)
ノラねこクリエイター。「心に素直であること」「常にクリエイティブであること」「己の美学に則ること」を信条としています。 ライティングをメインに、場所や事柄にとらわれず、”Interesting”を追い求めて仕事を請け負います。現在、ゲストハウスで生活中。
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