「作っていただいたものをホッとゆるんだ気持ちで食べられて、とってもありがたいです」
「体に悪いものが入ってない手作りのお弁当だってわかるから、安心して子どもに食べさせられます」
参宮橋にある「Atlya(アトリア)参宮橋」。月に1回、大人たちのこんな喜びの声が広がる日があります。渋谷区の「こどもテーブル」に参画している「みんなの食卓」が、Atlyaで夕食を提供する日です。
3月の開催日のメニューは
◎チラシ寿司風ご飯
・干し椎茸と油揚げ
・にんじん
・スナップエンドウ
◎おかず
・卵焼き
・じゃこと青菜の炒めもの
◎汁物
・はんぺんとわかめ
コロナ禍の今は、店内で食べてもらうことができずに、テイクアウトのお弁当形式になっていますが、ふたを開けた時にこんなにも春らしく、とっても華やかなお弁当が目に飛び込んできたら、一瞬でウキウキと楽しい気分になってきませんか?
しかも、添加物なども一切入っていない手作りのお弁当が、大人500円、こども300円、未就学児無料という、格安のお値段で頂くことができるというから驚きです。
オープンしてまもなく、お弁当を入れる紙袋を小さな手にしっかりと持った女の子が、お母さんと一緒にやって来ました。紙袋の取手をギュッとにぎっている姿が、かわいくってたまりません。
お母さんによると、「おべんと、おべんと🎶」と、お弁当を楽しみにしながらAtlyaまで歩いてきたそうです。ちょっと恥ずかしそうにしながらもスタッフに自分で紙袋を手渡す姿に、これまた胸がキュンとしてしまいました。
月に1回でも夕食作りから解放されて、ほっとできる時間を味わってほしい
渋谷区の取り組み「こどもテーブル」は、子どもたちが食事や遊び、学習支援を利用できる「居場所」を区内に100か所作ろう、と2016年11月に始まったプロジェクトです。さまざまな団体が趣旨に賛同して活動しており、「みんなの食卓」もその一つ。
参宮橋エリアに住む子育てママたちが月に1回、子育てを頑張る大人たち、遊びを頑張るこどもたちのために、ホッとする時間とご飯を提供しています。
実は、Atlyaでは3年前にも同じような独自の取り組みをしていました。しかしその時は、スタッフの多くが別の区から通っていたので、その間、自分の子どもたちは家でお留守番することになっていたといいます。
Atlyaキッチンマネージャーの斎藤三輪子さんは振り返ります。
「活動が地域の人の役には立っているけれど、自分たちはどうなんだろう? と思ったんです。持続可能であることがAtlyaのコンセプトなのに、今のままでは持続できるだろうかと。そこで、一度活動を保留にしたんです。
その後、渋谷区で子どもテーブルの取り組みが動き出したころ、Atlyaのメンバーの一人で渋谷区議の神薗まちこさんが、地域に住んでいる人たちを中心にプロジェクトを立ち上げようと提案してくれました。賛同してくれるメンバーも集まったので、2020年7月からリスタートすることになりました」
Atlyaにはキッズスペースがあるので、プロジェクトのメンバーの子どもは一緒に来て遊んでいることもできますし、型抜きなどの簡単な作業は子どもたちにも手伝ってもらっているそうです。
「こどもテーブル」の活動には、区の社会福祉協議会から助成金も出ています。担当者が現場に来て活動について把握したり、定期的にお米などの寄付をつないで下さったりして、「助成金だけ、はいどうぞ」という関係ではない、心のつながった支援を得ることができているそうです。
さらに、Atlyaがある代々木四丁目の町会の方々が毎回の告知を町会掲示板に貼ってくれるなど、地域からのさまざな協力もあって、Atlya単独だった取り組みは持続可能な形へと進化しています。
斎藤さんは言います。
「頑張っている大人たちが、月に1回でも、仕事帰りに急いでご飯を作るという大変さから解放される日があるといいですよね。
スーパーやデパ地下で買って帰ることもできますが、作り手の顔が見えません。でも、ここだと誰が作ったのかが分かりますし、添加物を使わずに作っています。
子どもにはできるだけ安心安全なものを食べさせたいと思っている大人たちの心理的な負担も減ると思うんです」
できるだけ温かいものを食べてもらいたいからと、利用者の方が来てから詰めるようにしているそうです。温かいお味噌汁がついているのもありがたいことです。
旬の野菜を使い、彩りも豊か。
型抜きしたニンジンの周りの部分は、余すことなくお味噌汁に活用されています。
「本来なら、お店で食べる方がホッとするし、家事からの解放感も味わってもらえます。子どもたちはキッズスペースで遊べるから、大人たちは安心して見守りながらゆっくりと食べることができますから
お店で食べられるような状況が早く戻ってくるといいですね」
地域の大人たちと子どもたちによる、地域の大人たちと子どもたちに向けた取り組み。地域がつながり、互いにできることをやって支え合っていく活動は、とても豊かでやさしい取り組みだと思います。
<地球や環境について、命をいただくということについて、考えるきっかけになれば>
さて、話は少し変わりますが、Atlyaのカフェ「tsugugotokafe」では2月から、毎週木曜日が「ヴィーガンデー」になりました。
「みんなの食卓」が子育て中の親や子どもにやさしい取り組みならば、ヴィーガンデーは地球にやさしい取り組みです。
「カフェの、すべてを大事にするというホリスティックな観点からは、特定のものを排除はしたくないと思っています。ただ、SDGsとか地球・環境の観点からは、動物性のものを使わないことが環境にも優しいアクションの一つになるのではないかと考え、ヴィーガンデーを設けることにしました。
時代やお客様のニーズとしてもヴィーガン が増えてきているというのもあります。それに、私たちが日々動物の命をいただいて生きているということを、改めて実感する日であってもいいかなとも思っています」
と、斎藤さん。そして、なぜ、ヴィーガンにすると環境に優しいの?などと、興味を持ち、調べたり考えてたりするきっかけになればと話しています。
「ヴィーガンデー」とはいえ、見た目は他の曜日のランチと変わりません。
↑いつものランチ
↓ヴィーガンデー
この日のメニューは
・車麩の甘味噌
・小松菜との胡麻和え/切り干し大根の塩麹サラダ/レンコンとひじきの煮物(2品をセレクト)
・お味噌汁(豆腐、大根、わかめ)
車麩は味付けがしっかりしているし、ボリューミーなのでご飯が進む満足度の高いお味。メニューを見なければ車麩とわからない人も多いのではないでしょうか。
お味噌汁には昆布だけではなく、切り干しの戻し汁、わかめの戻し汁も入っているので、栄養満点で味わい深いお味です。
ヴィーガン、と聞くと少し構えてしまう人もいるかもしれませんが、Atlyaのランチはそんな構えなどまったく必要ありません。いつもと同じように、いつもと変わらぬ定食として食べられますよ。
嬉しいのは、「美味しい! これは一体、どうやって作るんだろう?」と思ったら、キッチンの中村さえこさんが快く教えてくれること! これもやさしさの一つだなあ、とあたたかな気持ちになりながら、作り方をしっかりと教えていただきました。
大人にも、子どもにも、地球にも、つまりはみんなにやさしいAtlyaの取り組み。ぜひ、やさしさに触れに行ってみてください。
【Atlya(アトリア)参宮橋】
東京都渋谷区代々木4-50-13-1F
http://atlya-co.com/
【みんなの食卓】
https://www.facebook.com/minnanoshokutaku
【tsugugoto cafe】
https://www.instagram.com/tsugugotocafe/