渋谷一駅散歩とは
「渋谷一駅散歩」というお散歩マップをご存知でしょうか。「渋谷の魅力を歩いて発見してほしい!」と、東京商工会議所・渋谷支部が作成し、ウェブ上で公開している全10コースのマップです。渋谷には世界的、全国的に有名なスポットがいくつもありますが、それ以外にも、お散歩だからこそ出会える路面店や特色ある商店街、歴史・文化的施設、公園の緑など、魅力あるスポットがたくさんあります。そんな魅力をもっともっと知ってほしいという思いで作られたマップなのですが、実は、この「シブヤ散歩新聞」も同じ思いで作られている東京商工会議所の取り組みなんです! 今回の連載では、「渋谷一駅散歩」のルートを実際にお散歩してみました。ぜひ参考にしながらも、ご自分だけの一駅散歩を楽しんでみてください。
東京商工会議所・渋谷支部「渋谷一駅散歩」のルート紹介ページ
大人の街「奥渋谷」を歩く
本日のルートは京王井の頭線神泉駅から松濤エリアを経てJR原宿駅までのコース。
「奥渋谷」とも呼ばれ、美術館やギャラリー、レストランなどが点在する、大人が楽しめる街として人気のエリアです。
散歩のスタートは神泉駅。トンネルとホームを分断する形で踏切があります。電車好きにはちょっと有名な場所なのだそう。
「松濤文化村通り」へ。街路樹の緑が美しい、静かな通りです。
通りを一本入ると瀟洒な住宅街です。路地にひっそりと生えている小さな木。
知る人ぞ知る、インディペンデントな美術館
松濤美術館は、昭和56年に開館した区立の美術館です。館のデザインを手がけたのは建築家の白井晟一。装丁デザイナーとしても有名で、中公文庫のカバーを外すと出てくる、鳥のデザインをした人でもあります。建物とちょっと雰囲気似ているかも・・・お手持ちにあったら、ぜひ外して見てみてくださいね。
お邪魔した日は、「真珠〜海からのおくりもの」展の最終日近く。絶え間なくお客さんが訪れていました。
会場には、国内外の真珠を使った装飾品がたくさん並んでいて、目が眩みそうに。「松濤」と「真珠」って似合いますね・・・
かと思えば、発掘された真珠やアコヤ貝の展示もあり、歴史や考古学の勉強にもなりそうです。
精緻をこらした工芸品や装飾品を、時間を気にすることなくじっくり鑑賞できるのは、小さな美術館ならではの魅力です。
一駅散歩のマップを見てぜひ立ち寄りたいと思っていた、ギャラリーTOMさんへ。こちらは、視覚障害のあるお子さんの一言をきっかけに村山亜土さん(故人)・治江さんご夫妻によって開かれた、「手で見るギャラリー」なのです。
盲学校の生徒による美術展がひらかれていました。おもいおもいの形をした作品に、ここは「形」を楽しむ場所なのだな、と感じます。つくった人の表情や指の動きかた、スピード感まで伝わってきます。大きな窓から差し込む日差しの中、作品たちもどこか気持ち良さそうです。
ギャラリーを出ると、開館のきっかけとなったオーナーの村山ご夫妻のお子さん・錬さんの言葉を写したレリーフが。
「ぼくたち盲人も、ロダンをみるけんりがある」。
松濤の街には、懐かしさと新しさとが同居する
1月の取材以来、久々に訪れる鍋島松濤公園には、すっかりにぎわいが戻っていました。休日だけあって、親子連れのにぎやかな声が聞こえてきます。
戻ってきたものと、形を変えたものと。
公園を出て、bunkamura方面へと歩を進めます。
すると見えてきたのが
ポルトガル国旗。
向かいには、オーストラリア国旗。
少し行くと、フランスの軽食、ガレットのお店「ガレットリア」が。
これぞ奥渋谷!大人がふらっと立ち寄りたくなる、素敵なレストランがそこかしこにあります。
後ろ髪を引かれつつ、「一駅散歩」のルート指示にしたがって、交差点を左折、戸栗美術館方面へ向かいます。
歩いていると、小さなお稲荷さまを見つけました。「大山稲荷神社」です。ちょうど少しずつ日も傾いてきた頃。遠く渋谷のビル群が見えるのにやけに静かで、ここだけ異世界が広がっているかのよう。
お供えの中に、油揚げがありました。きつねの神様が食べやすいようにでしょうか、ちゃんと封が切ってあります。
すっかり異世界気分にひたりながらふと道の先を見やると、bunkamuraが見えてきました!
街のざわめきも聞こえてきます。なぜだかちょっとほっとしたところで、次回に続きます。
10/14(水)公開予定の<後編>では、bunkamuraから原宿を巡ります。お楽しみに!
【渋谷区立松濤美術館】
住所/東京都渋谷区松濤2-14-14
Tel/03-3465-9421
営業時間/10:00~18:00
休館日/毎週月曜日(国民の祝日又は休日に当たる場合は開館)
国民の祝日又は休日の翌日(土・日曜日に当たる場合は開館)
展示替期間、年末年始(12月29日~1月3日)
https://shoto-museum.jp/
【ギャラリーTOM】
住所/東京都渋谷区松涛2-11-1
Tel/03- 3467-8102
営業時間/11:00~18:00
休館日/祝日を除く月曜日、年末年始
https://www.gallerytom.co.jp/index.html
八田吏(はった・つかさ)
ライター。
NPO法人で、産後の社会問題に関する調査研究に携わる。個人活動として短歌の会を隔月で開催。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。