人気ホテルにも大きな打撃を与えた新型コロナウイルス
2019年12月に15周年を迎えた宮益坂上のプチホテル「サクラ・フルール青山」。1年と少し前に取材させてもらった時には、安定した人気を誇る渋谷駅徒歩5分の同ホテルを基盤に、奥多摩でカフェや宿泊施設を展開し始めた頃で、今後について明るい展望を語っていただきました。
【渋谷15周年散歩No.2 まるで、パリ郊外のプチホテル 女性に大人気の「サクラ・フルール青山」<前編>】
【渋谷15周年散歩No.3 まるで、パリ郊外のプチホテル 女性に大人気の「サクラ・フルール青山」<後編>】
その時、これからの未来について笑顔で語っていただいたオーナーの小林利男さんと、コンセプトメーカー、インテリアデザイナー、代表取締役/CEOをこなす嶋田美恵子さんですが、年が明けると、新型コロナウイルスは宿泊業界に大打撃を与えることになりました。宿泊客の数が激減したのは、それまで客室稼働率95%という驚異の数字を記録していたサクラ・フルール青山も同じです。
「1月からおかしいな、と思っていたら2月からみるみる減り、4月には売り上げが昨年の5%にも満たない状況にまで落ち込みました。もう笑っちゃうしかないくらいまともに打撃を受けました」(小林さん)
サクラ・フルール青山のそんな苦しい状況の中で心強い支えとなったのが、奥多摩駅前のお食事処「氷川食堂」で地域の人たちと共に苦境を乗り切るためにガッチリ手をつないだこと、そして、青梅市のJR御嶽駅前に、氷川食堂の姉妹店として新たにカフェレストラン「ミタケテラス」をオープンしたことだったと言います。
前編は、この「氷川食堂」と「ミタケテラス」についてのストーリーです。
地元の人と手をつなぎ、コロナ禍でも笑顔を届け続けた
3月、全国の小中高校が一斉に休校になってすぐの3月7日、「氷川食堂」では、休校になってしまった小中学生のために、なんと250円という破格の値段で「こども弁当」の販売を始めました。
「250円ではほぼ原価ですけどね(笑)。子どもたちの好きな唐揚げや卵焼きなどを入れたお弁当を作りました。家で過ごすことになった子どもたちの役に立てれば嬉しいと思って始めたところ、地域の皆さんに喜んでもらえたので本当に良かったです」
4月には営業時間の短縮に伴い、お弁当やコッペパンなどのテイクアウトも開始。
週末には早い時間に完売となってしまうほど好評だったそうです!
とはいえ、緊急事態宣言が出てからは店内営業を自粛し、テイクアウトのみの営業。
そこで、テイクアウト営業で頑張っている同じような飲食店を応援し、奥多摩のテイクアウトを活性化させようと、5月には「#奥多摩エール飯 プロジェクト!」もスタート。
さらに、その1週間後には小林さんが発起人となって、町内の飲食店を応援するクラウドファンディング「BUY LOCAL okutama」も立ち上げ。参加した12店舗の中から、応援したい店舗の食事券(一口5,500円)を選ぶ仕組みで、スタートから1週間を待たずして、目標額の100万円を達成しました。
それまでに観光で奥多摩町を訪れた全国の人たちから予想を上回る支援が寄せられたことに、小林さんは「今は奥多摩に行くことができないけれど、行けるようになったら必ず行きます! という思いで、本当にたくさんの人が協力してくれました。参加した店舗の中では氷川食堂が一番新しいお店ですが、地元の人たちと力を合わせることができ、得たものは大きかったと思っています」。
幸いにも、「地方には旅行に行けないけれどせめて都内でどこかに行きたい」という都民の来訪が徐々に増え始め、その様子がテレビでも取り上げられると、一時は公共の駐車場を閉鎖しなければならないほどの人でにぎわいました。
「渋谷のホテルは厳しい状況が続いていますが、奥多摩は思いのほか大盛況で、活気があふれたので嬉しかったですね」
御岳山の入り口に誕生した新たなカフェレストラン
そんなコロナ禍の7月23日、青梅市のJR御嶽駅前に、氷川食堂の姉妹店として新たにカフェレストラン「ミタケテラス」をオープンしました。
実はここ、もともとコンビニエンスストアだった場所。前のオーナーがお店を閉まいしばらく空き店舗になっていたのですが、「御岳山への玄関口、しかも駅前のお店が閉まったままなのは地元としても寂しい」とのことで、1年前に青梅市商工会議所などから空き店舗の活用の相談があったそうです。コロナもあって予定よりも遅れましたが、7月23日にオープンすることができました。
店内は、ホテル「サクラ・フルール青山」のデザインも手掛けた嶋田さんこだわりの内装。テーブルや椅子、照明やカウンター周りなどに、“らしさ”が感じられます。もともとは壁だったところに大きな窓を並べ、御岳の自然を目の前に見ることができる素晴らしい眺望を実現しました。
広々とした店内には、ミニコンサートなどのイベントもできるステージも設置。
御岳山へのバス停に面した側の壁には穴を開け、バスの乗降客が利用しやすいように売店も作りました。ピンク色の屋根が目を引きます。
もちろん、こだわりはメニューにも。
ワッフルの上にスパイシーな鶏の唐揚げを載せ、メープルシロップをたっぷりかけて食べる「ミタケ・チキン&ワッフル」、8〜9種類あるも「ジェラート」、そして「ミタケさつまいもチップス」!
そして、駄洒落が大好きな小林さんらしく、御岳山の山頂にある御嶽神社(正式名称は武蔵御嶽神社)と、ポークジンジャー(豚の生姜焼き)をかけて名付けたメニュー「御岳ジンジャー」も大人気!
寒くなってきてからは、青梅産の柚子をたっぷり使ったゆず香る「鶏そば」や、ホカホカの豚まん(6種類!)もスタートして、紅葉に訪れる人たちを体の中から温めました。
御岳周辺、本当に景色がキレイです!!
本格的な冬に入ってくるとオフシーズンになりますが、武蔵御嶽神社へ初詣に訪れる人のために、三が日はお店をオープンする予定ということです。
奥多摩駅前の「氷川食堂」、そして御嶽駅前の「ミタケテラス」。
どちらもできてまだ時間は経っていませんが、観光客はもちろん、それ以上に地元の人に愛されるお店になっています。
次回、12/16(水)公開予定の後編は舞台を渋谷に戻し、苦境が続く「サクラ・フルール青山」でも次々と展開しているさまざまな工夫や、新たなプロジェクトについてお話をお聞きします。
【ホテル・店舗情報】
サクラ・フルール青山
東京都渋谷区渋谷2-14-15
Tel / 03-5467-3777
http://www.sakura-hotels.com
氷川食堂
東京都西多摩郡奥多摩町氷川199-7
Tel /0428-83-2401
営業時間/11時~18時
定休日/火曜、水曜(祝祭日は営業)
http://hikawashokudo.com
ミタケテラス
東京都青梅市御岳本町339-1
Tel /0428-85-9012
営業時間/11時~17時
定休日/火曜、水曜(祝祭日は営業)
http://mitaketerrace.com
平地紘子(ひらち・ひろこ)
シブヤ散歩新聞・副編集長。フリーライター/ヨガインストラクター。10年以上お堅い新聞記者だったのに、3年間のアメリカ生活でヨガインストラクターに転身。でもやっぱり、書くのも好き。かなり色黒なので「サーファー?」と聞かれるけれど、見かけ倒し。スッピンのまま自転車で中目黒界隈を駆け抜けているだけです。
ヨガウェアで魅せる筋肉美が最近のプチ自慢。フィットネスやマッサージなど、体にいい情報をお伝えします!
yoga teacher HiRoko HiRachi