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CULTURE

渋谷15周年散歩No.3 まるで、パリ郊外のプチホテル 女性に大人気の「サクラ・フルール青山」<後編>

渋谷周年散歩とは
渋谷の街に誕生して周年を迎えたお店をご紹介するのが、「渋谷周年散歩」です。お店の移り変わりも早い渋谷の街で10周年、20周年と年月を重ねて行くのは容易ではありませんが、その中で記念すべき周年を迎えたお店をご紹介していきます。

「ドラマの中の自分より、自分自身の方がもっとドラマチックに生きられる」

パリ郊外のプチホテルのような雰囲気で女性からの圧倒的な人気を誇り、今年12月1日でオープンから15周年を迎える宮益坂のプチホテル「サクラ・フルール青山」。実は、運営する桜ホテルズ株式会社のオーナー、小林利男さんは10代の頃、大人気のアイドルグループ「レモンパイ」のメンバーでした。

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「当時、田宮二郎さん主演の『高原へいらっしゃい』(TBS系、1976年)というドラマがあって、つぶれたホテルを立て直すというドラマなんですけど、それを見て『あ、これをやりたい!』と思ったんですよね。ホテルマンもやりたいし、でも、役者としてみんなを幸せにしていくのもいいな、どっちも捨て難いって。

そうしたら、大学生の時に銀座の山野楽器でスカウトされて急遽アイドルバンド・レモンパイに入ったんですけど、もともと自分のやりたいことと違っていたので……大学を卒業後、役者の世界に入りました。でも、これもまたちょっと思っていたものと違って。

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日比谷野外音楽堂でのコンサート

その時に思ったのが、ドラマの中の自分よりも、自分自身の方がもっとドラマチックに生きられるんじゃないか、と」

小林さんは、もう一つやりたいと思っていたホテルマンの道へ進むことを志しました。ちょうど、ヒルトンが新宿に移ってくる時で、「これしかない!」とすぐに電話。一度秘書に断られても30分後にまた電話して、たまたま電話に出た人事支配人に、熱い思いを語ってチャンスを掴んだそうです。

「何年でも下働きをしますので、それで気に入って頂いたら使ってくださいと自分の思いをぶつけました。芝居もやってたから演技力も発揮して(笑)。面接で、何をやりたいのか聞かれたから『僕は、自分のお客さんでこのホテルをいっぱいにしたい』と伝えたら、『わかった、じゃあ営業部だ』と。その後面接した営業部長にすごく気に入って頂けて、ホテルのことは何も知らないのに最初から営業部に入ってしまったんです」

普通、ホテルマンはベルボーイなどから始まり、フロントなど現場で経験を積んだのちに営業を任されるようになるのが常。いきなり営業部とは、かなり異例のことなのです。

“退路を絶って”切り拓いてきたホテルマン人生

ヒルトンの営業部で2年経験を積んだ後、ホテル経営学といえばここ、と言われるほど名門のアメリカのコーネル大学に留学。3歳の娘さんと、奥さん、そしてお腹の中にいた息子さんも一緒の留学でしたが、実は合格する前に、荷物を全部送ってしまったそうです。

「コーネル大学の大学院に入学した日本人は、僕が23人目。それぐらい狭き門というか(笑) だからもう、自分で退路を断つためにも、荷物を先に送っちゃったんです」

さらに、大学が夏休みの間には、ヨーロッパのホテルで経験を積みたいと、英語が通じるロンドンのホテル18軒に「勉強したいので働かせて下さい」と、自分に何ができるかをアピールする手紙を郵送したとか! そうしたらなんと、11通も良い返事が来たそうです。

その中で”世界一”のホテルチェーン「マリオット」を選び、ロンドンの日本企業向けに営業して大きな成果をあげ、ゼネラルマネージャーを驚かせたという小林さん。冬休み、そして次の夏休みにも、家族全員分の飛行機代も出してもらい、食事付きでスイートルームに住まわせてもらえるという高待遇で再び迎えらたというのですから、どれだけ期待されていたかがわかります。

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ロンドンマリオットホテル

そのままマリオットに入社し営業部長に昇進。ヨーロッパのマリオットホテルを日本に紹介する仕事も兼務していましたが、日本での子どもの教育を考えて数年で帰国。この時も、次の就職先が決まらぬまま、港留めでロンドンから荷物を送り、帰国後にヒルトンの面接に行ったそうです。

そして、名古屋のヒルトンのマーケティング部長兼宴会部長を経て、森ビルに転職、海外部の事業部長として上海のホテルを手がけます。その後、外資系ファンドのM&Aを担当している時に、今のホテルの物件と出会い、今に至ります。

ものすごい駆け足で経歴を辿ってしまいましたが、話を聴きながら思わず「本を出版されたらいかがですか」と言ってしまうほどのサクセスストーリー。そして何より、自分がやりたいと思ったことを実現する行動力と、道を切り拓いていく力には惚れ惚れとしてしまうものがあります。成功する人はやっぱり違うんだなあ、としみじみ思ったのでした。

奥多摩に根付きはじめた桜ホテルズ

さて、渋谷のサクラ・フルール青山は12月で15周年を迎えますが、桜ホテルズ株式会社としては、昨年から奥多摩で新たな展開を始めています。

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「2020年にオリンピックを控えている東京では、土地代も建築費も高くなっているので、都内でホテルを展開するのは難しいと考えました。その時に、岐阜で閉校になった木造の小学校を利用したプロジェクトの話があったんです。最終的にその話はなくなってしまったのですが、それを機に、地域で何かできないか考えるようになりました。

その時に偶然、今年で築149年になる奥多摩の古民家との出会いがあり、2018年4月に『カフェ・インディゴブルー』をオープンしました。奥多摩湖が一望できる素晴らしい場所なんですよ」

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趣ある古民家だからこその寛ぎと、センスの良さ。奥多摩湖を一望できる縁側や、お庭。そして、カフェのメニューの美味しさから、オープン以来、雑誌やテレビの取材が相次ぎ、ネットやSNSでも評判のカフェになっています。

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「本当に素晴らしい場所なので、ここでカフェをやらせてもらえることに感謝しないといけないな、と常々思っています。その思いを形に表そうということで、この地域に住む留学生を呼んで食事を提供して、三線で歌を歌ったり、公民館を貸し切って映画を無料上映して住民の方たちを招待したりしてているんです」と小林さん。

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感謝しているからこそ、地域の人たちのために何かがしたい。その小林さんたちの思いと人柄は、これらの触れ合いや企画を通して地域の方たちに十二分に伝わっているのでしょう。空き物件が出ると、住民の方たちから桜ホテルズに声をかけてくれるようになっていったそうです。

そうしてできたのが、日原鍾乳洞にほど近いコテージ風の宿泊施設「やすらぎの宿 ねねんぼう」と、

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ねねんぼうダイニング

 

奥多摩駅すぐのお食事処「氷川食堂」。

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こちらも、オープンしてすぐに観光客だけでなく地域の人に愛される場所となり、氷川食堂では、地元のおじいちゃんおばあちゃんを招待しての寄席も定期的に開催しているそうです。

9月5日放送のNHKEテレ「ふるカフェ系・ハルさんの休日」で、主人公のハルさんが「カフェ・インディゴブルー」を訪ねたことから、さらに話題のスポットとなりました。

奥多摩エリアにはこれからさらに、桜ホテルズが運営するお店や宿泊施設が増えてきそうな予感です。

冬を越えて咲く桜のように、自分も周りも幸せにしていきたい

さて、小林さんが地域を大事にするのは、渋谷でも同じです。2011年の東日本大震災の時には、客足がすっかり途絶えた渋谷2丁目の飲食店を、小林さんと嶋田さんの2人で毎晩のように回ったそうです。

「震災後、本当にこの渋谷の2丁目は店が全部ダメで、明かりが消えてしまう店も多くありました。それで、どこかで食事をするなら、2丁目で食べよう、と。順番にすべての通りを回って、一生懸命食べ歩きました」と小林さん。嶋田さんも「本当にたくさん回りましたね。やっぱり近隣を大切にしていきたいなと、いつも思っているんです」と言います。

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そんな2人の思いは実は、「桜ホテルズ」という会社名に込められています。

「桜の木は、厳しい冬を頑張って乗り越えて、春になると満開の花を咲かせ、自分たちだけではなくて周りの人も幸せにいく。同じように、人生も色々あるけれど、厳しい時期を乗り越えて、自分たちだけではなくて周りも幸せにしていくような会社を、ホテルを作りたい、という思いを込めたんです」

だからこそ「桜ホテルズ」であり、「サクラ・フルール青山」なのです。

エントランス

 

「奥多摩の氷川食堂で寄席をやると、おじいちゃんもおばあちゃんも、本当に喜んでくれるんです。そうやって、みんなが喜んでくれるように、これからもやっていきたいと思います」

これからの桜ホテルズが、さらに周りの人たちを笑顔にしていく様子を、楽しみにしていきたいと思います。そして奥多摩に行った時にはぜひ、「ねねんぼう」や「氷川食堂」に立ち寄って、奥多摩の自然とともに、そこに集う地域の方たちの笑顔にも触れてみたいと思います。

 

【ホテル・店舗情報】
サクラ・フルール青山
東京都渋谷区渋谷2-14-15
Tel / 03-5467-3777
http://www.sakura-hotels.com

やすらぎの宿 ねねんぼう
東京都西多摩郡奥多摩町日原848-1
Tel / 0428-85-9884
http://nenenbo.com

氷川食堂
東京都西多摩郡奥多摩町氷川199-7
Tel /0428-83-2401
営業時間/11時~19時
定休日/水曜日・第3火曜日(祝日は営業)
http://hikawashokudo.com

カフェ・インディゴブルー
東京都西多摩郡奥多摩町境1139
Tel /0428-85-9522
営業時間 /10時~16時
定休日 / 月・火(祝日は営業)
http://cafeindigoblue.com

 

 

平地紘子(ひらち・ひろこ)

hirachihirokoシブヤ散歩新聞・副編集長。フリーライター/ヨガインストラクター。10年以上お堅い新聞記者だったのに、3年間のアメリカ生活でヨガインストラクターに転身。でもやっぱり、書くのも好き。かなり色黒なので「サーファー?」と聞かれるけれど、見かけ倒し。スッピンのまま自転車で中目黒界隈を駆け抜けているだけです。ヨガウェアで魅せる筋肉美が最近のプチ自慢。フィットネスやマッサージなど、体にいい情報をお伝えします!
yoga teacher HiRoko HiRachi

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