先週、9月21日は中秋の名月でした。夜、月をご覧になりましたか?
東京では少し雲がかかって隠れたり顔を見せたりで、百人一首にもある『新古今和歌集』の
”秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ”
という歌がぴったりでした。
ウサギが見えるような神々しい満月も、雲の隙間に見え隠れする静かな光の月も、どちらも愛でる日本文化を堪能した夜。この日に合わせて手に入れた簡易の天体望遠鏡でも、こんなに鮮やかな満月を撮影することができましたよ。
公園を歩けば足元にも秋
代々木公園でのお散歩も、すっかり秋の気配です。虫の声、サクサクとした落ち葉、パキリと踏む乾燥した枝。たくさんのドングリが、今年も来園者の足元を賑やかにしていました。
感染症による社会の混乱が始まる前の2019年9月末に代々木公園を歩いた際にも、ドングリがたくさん落ちていました。調べたところ、ドングリは発芽して成長し新たな実をつけるようになるまで10年近くかかる植物のようです。代々木公園の木は、実に手が届かないほどの大木。きっとここまで長い間、公園に来るたくさんの人々を見守ってきたでしょう。
ドングリを拾いながら、いつか見たこんなメッセージも思い出しました。
見つけた木の実はすべてひろわずに、
ひとつひろったら、
つぎのひとつは、森の生き物たちのために、
つぎのひとつは、新しい木になるために、
つぎのひとつは、木の実ひろいを楽しみにしている別のこどものために、
残しておきましょう。
(こどもの国ホームページに掲載されている言葉でした。)
地面にたくさん落ちたドングリを見てこんなふうに思考を広げることができたら、散歩が豊かなものになりそうです。子どもが大好きなドングリ拾いが、シェアの気持ちを育てる機会にもなりそうですね。
代々木公園の前身はオリンピックの選手村
ドングリの木をはじめとして、代々木公園には大きな木がたくさんあります。実をつけるまで10年、そう考えたら「いったいこの公園の木は何歳になるんだろう?」という疑問が頭をもたげました。
東京都公園協会によると、代々木公園のある場所には、幕末の譜代大名である井伊直弼の屋敷を筆頭に、大名の下屋敷が並んでいたそうです。その後、陸軍の練兵場として日本の動力飛行発祥の地となり、戦後は米軍の駐留軍家族の居留地・ワシントンハイツに。その後は、東京オリンピックの選手村に。公園として再開発される際、お隣の明治神宮の樹木と連動するような森を作る計画がされたそうです。つまり、現在の木々には約60年の歴史がある、ということになると思います。
今年開催されたオリンピック・パラリンピックでも、隣の国立代々木競技場がハンドボール、バドミントン、車いすラグビーの会場になりました。代々木公園ではパブリックビューイングも予定されていたようです。東京オリンピックからの歴史を考えると、代々木公園の森に囲まれたパブリックビューイングは感慨深いものになったでしょうね。
障がいを持つ人にもやさしい公園設備
代々木公園を歩いていて、このような案内を聞いたことはありませんか。
これは「だれでもトイレ」に流れるインストラクションです。だれでもトイレは園内にいくつかありますが、それぞれにスロープが設置してあり、点字付きの案内板と、この放送が流れるスピーカーが設置してあります。トイレに入ろうとすると、様々な仕様に気がつきます。
この夏、パラリンピックを視聴して、障がいのある選手の迫力ある競技を堪能しましたが、ハンディキャップを埋めるこうした工夫はまだまだ一般的ではありません。オリンピックの開催をきっかけに公園として整備された代々木公園で、バリアフリーが充実していくこと。それもドングリの木のように、知らず知らずのうちに公園を彩る歴史になっていって欲しいなと思いました。
得原藍(えはら・あい)
理学療法士/一般社団法人 School of Movement ディレクター。
子育てしながら運動科学の専門家として、身体と環境と生活の関係を考える日々を送る。
たのしいマイニチのために人生編集中。
TEXT aiehara’s web