例年になく長く感じられる春です。みなさん、どんな風にお過ごしでしょうか。我が家には小学生の子どもがいるのですが、毎日暇そうにしています。暇すぎると人っていろいろなことをし始めるんですよね。最近は「家からできるだけ遠くまで歩く」ことに凝っているようです。そういう無意味なことって確かに暇じゃないとできない!
そんな息子から「この間歩いてたら、渋谷の近くにいい公園があった」と聞き、一緒に行ってみることにしました。
(注:本記事の取材は、3/25の都知事による外出自粛要請以前に行ったものです)
神泉駅から徒歩5分の「鍋島松濤公園」
スタートは京王井の頭線の神泉駅から。
「神泉駅は駅の構造がよく見えるんだよね」とつぶやく鉄道男子。
5分くらいてくてく歩くと、「鍋島松濤公園(なべしましょうとうこうえん)」が見えてきました。
「鍋島って佐賀の鍋島藩?」とくいつく(鉄道&)歴史オタクの息子。佐賀って関係あるかなあ?と思って調べてみたところ、実は深い関わりがありました。
佐賀鍋島家の茶園だった「松濤」
長らく紀州徳川家の土地だった松濤エリア。明治時代に入ると国の管轄になり、佐賀の鍋島家に下げ渡されることになりました。鍋島家はこの地に狭山茶を移植し、茶園を開きました。茶園の名前は「松濤園」。「松濤」は茶道用語で、茶釜の中でお湯がたぎる時の音をさす言葉だそうです。
鍋島松濤公園の半分は遊具が置かれ、子どもたちが遊べるようになっています。
渋谷には遊具のある公園が意外と数多くあります。中にはだいぶ歴史を感じるものもありますが、市のサイトを見てみると、平成30年度内に点検、改修が済んでいるとのこと。
遊具を見るなり登り出す小学生。
渋谷では珍しい湧水と桜の公園
鍋島松濤公園は区内でも珍しい湧水地です。湧水が大きな池になっていて、その周りをぐるりと遊歩道が巡っています。水車小屋の水車がゆったり回っていて、風情を感じます。
緑も水も豊かな公園だけあって、いろいろな種類の動物たちがいる様子。この日もメジロの姿を見かけました。
取材日は、ソメイヨシノもしだれ桜も八分咲きの頃でした。「有名なお花見スポットまで遠出しよう」となりにくい今年は特に、こんな風に身近に咲いている桜の花が美しく、愛おしく感じられる気がします。
足元に目をやれば、桜以外にも春を告げる花々が。
桜と対峙する小学生。このあと結局、20分くらいこうやってじーっとしていました。
楽しみにしていた旅行も友達との計画もなしになってしまったけれど、このイレギュラーな春は、身近にある良さを発見する機会になっているのかもしれません。そしてそれは、大人であるわたしたち自身にとっても、同じなのかもしれません。
八田吏(はった・つかさ)
ライター。
NPO法人で、産後の社会問題に関する調査研究に携わる。個人活動として短歌の会を隔月で開催。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。