渋谷区の地形は起伏に富んでいるため、区内には多くの坂があり、名前がついている坂道だけでも30以上あるとのこと。そんなシブヤにある坂の数々を、名前の由来や坂にまつわるエピソードを交えて紹介していきたいと思います。
まずは、渋谷で1番有名な坂である道玄坂から。スクランブル交差点として全国的どころか世界的に有名な渋谷駅前の交差点。人々をかきわけながら渡って道玄坂下まで来ると、ザ・プライムの前に渋谷区教育委員会が設置した標柱が建っています。 この標識によると、江戸時代の道玄坂は「現在の道玄坂から世田谷街道に入って松見坂までも広く呼んだもの」とのこと。ということは、江戸時代の人が「道玄坂」と聞いたとき、今の人よりも、ずっとずっとなが~い坂道を思い浮かべていたことになります。ある地名がどこからどこまでを指すものなのか、 悠久に流れる歴史の中で、その概念も変化するようです。
交番のある道玄坂上交差点まで登って、横断歩道を渡ると、またまた教育委員会設置の標柱を発見。教育委員会というのは、歩道に杭を打つ人々のことだったかしら?などと、くだらないことを考えつつ、標柱の文章をチェック。
「江戸時代以来、和田義盛の後裔大和田太郎道玄が、この坂に出没して山賊夜盗の如く振舞ったとの伝説がありました。しかし本来の道玄坂の語源は、道玄庵という庵があったことに由来すると考えられます」とのこと。 『江戸名所図会』には、大和田太郎道玄が和田氏滅亡後に残党を率いて山賊になったことが坂の名前の由来になったという話のあとに、道玄は沙門(仏僧)で道玄寺という寺があったという旨の文章も。 個人的には、「道玄」というのは山賊よりもお坊さんにピッタリの名前の気がします。 ただ、かつて「道玄物見の松」なる巨木があり、道玄がそれに登って往来を物色したり配下の者を指揮していたという逸話もあり、道玄=山賊説も、これはこれでおもしろい。
標柱のすぐそばに「道玄坂の碑」と書かれた壁(?)と、その前に石碑が3つあって、まんなかの石碑の碑文冒頭には、渋谷氏が北条氏綱に亡ぼされたとき(1525年)に一族の大和田太郎道玄がこの坂の傍に道玄庵を造り住んだので道玄坂というようになったと書かれています。しかし、道玄がどのような人物かは触れられていません。あとで調べたところ、『天正日記』という書物には天正18年9月に道玄庵の庵主が徳川家康に由緒書を差し出したという記録があるとか。いずれにせよ、「道玄庵」という庵があって、それが坂の名前の由来になったようです。
この道玄坂上にある石碑、文章は国学院大学の樋口清之教授によるもので、「澁谷道玄坂」と題されています。 冒頭は、上述したように道玄庵が名前の由来であるという趣旨で、それに続いて、江戸時代にはこの坂を含む青山街道が神奈川のヒトとモノを江戸へ運ぶ重要な物流ルートだった、明治になって品川鉄道(山手線)ができてから渋谷が開発され始めた、という旨の記述があります。 碑文にはさらに、近所に住んでいた芥川龍之介と柳田国男の通学路だった、林芙美子が夜店を出していた、なんてエピソードも。 そして最後に、こう締めくくられています。
これからも道玄坂は今までと同じくむしろ若者の町として希望と夢を宿して永く栄えてゆくことだろう
石碑の背後には渋谷マークシティの高層ビルがそびえています。このマークシティが2000年にオープンした際のキャッチフレーズは「シブヤがおとなになる日」。 寿ぎ(ことほぎ)ともいうべき碑文の最後の部分にあったように、“若者の町”として、また成熟した“大人の街”として、渋谷が未来永劫繁栄し、道玄坂の歴史と伝説が語り継がれてゆくことを願ってやみません。
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10/9(日)は散歩の日!シブヤ散歩フェス2016@渋谷ヒカリエ
10/9(日)は、て(10)く(9)てく歩く「散歩の日」を記念して、
“シブヤ散歩フェス2016”を開催します。
散歩で見つけた美味しいパンやお土産の紹介に加え、
シブヤの〇〇な魅力を発掘する「〇〇散歩」公開ブレストや、
シブヤ経済新聞の西樹編集長によるトークセッションも開催。
パンとお土産の試食もたくさん用意しています。
【イベント企画内容】※一部調整中
1.シブヤぱん散歩&シブヤお土産散歩(展示・紹介&試食)
会場内に展示スペースを設け、シブヤ散歩の魅力の一例として、渋谷の美味しいパンとお土産を紹介します。一部商品については試食も。
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(パン)ガーデンハウスクラフツ、ファミーユ、メゾンイチ、ル・コルドンブルー、DAIKANYAMA LOTUS、シェ・リュイ
(お土産)ハチ公ソース、ふるや古賀音庵、原宿焼きショコラ、代官山スィートポテト、OKURA焼き、東横ハチ公(クッキー2種、おかき、プールミッシュ、カステラ饅頭、どら焼き、にくきゅうパン)
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2.シブヤ○○散歩プレゼン&公開ブレスト
「シブヤ○○散歩」と題して、シブヤの様々な散歩を提案するプレゼンテーションを実施します。
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(1)シブヤ「ぱん」散歩
(2)シブヤ「ビール」散歩
(3)シブヤ「餃子」散歩 etc
その他、シブヤ散歩新聞ライター陣及び参加者を交えた公開ブレストを行い、新たな「シブヤ○○散歩」を発掘します。
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3.シブヤ散歩トークセッション
シブヤ経済新聞の西編集長をはじめ、「シブヤ」「散歩」にまつわるゲストによるトークセッション。
【イベント概要】
2016年10月 9日(日)
12:00〜16:00
http://www.hikarie8.com/court/2016/09/1092016.shtml
渋谷ヒカリエ 8/
東京都渋谷区渋谷2丁目21−1 8F
東急東横線・田園都市線、東京メトロ副都心線「渋谷駅」15番出口直結
JR線、東京メトロ銀座線、京王井の頭線「渋谷駅」と2F連絡通路で直結
入場無料・事前申込不要
主催/シブヤ散歩会議(東京商工会議所渋谷支部)
イト・タクヤ
フリーライター。歴史、神社・仏閣めぐりが好き。基本は部屋に引きこもり、たまに渋谷区内を徘徊。「普段は渋谷の街を歩くことのないシブヤ初心者」として、常にフレッシュな視点からの執筆を心掛けている。というか、事実そうなので、そういう文章しか書けないというのがホンネ。シブヤ散歩新聞では、シブヤ坂散歩をはじめ、渋谷の街の歴史や文化等にまつわる記事を担当している。
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