幡ヶ谷駅の北側にある商店街というと、甲州街道と水道道路をつなぐ「六号通り商店街」(ササハタハツ散歩 No.4でご紹介)があります。水道道路を北に渡ったところからさらに続いていくのが「六号坂通り商店街」です。幡ヶ谷近辺に住む人でないと通る機会がないかもしれない商店街ですが、地域の方と密着したあたたかさを感じる素敵な取り組みがされています。
<ササハタハツ散歩>とは
渋谷区主催の「まちづくりフューチャーセッション」を通じて発見したササハタハツ=笹塚・幡ヶ谷・初台地区の魅力をシリーズでご紹介するものです。ササハタハツを楽しめる散歩ルートとともに、たくさんの人に知ってもらいたい、訪れてもらいたいスポットを紹介していきます。
地域に貢献する大学生のパワー
六号坂通り商店街を歩いていると、たくさんのお花が目にとまります。街灯全てにお花の鉢が取り付けられているのです。これが「ハンギングバスケット」です。
<カラフルな鉢植えのお花が目の高さに吊るされています。>
このハンギングバスケットの取り組みをしている帝京短期大学・地域貢献推進室の森下さんにお話を伺いました。
<気さくな笑顔で迎えてくださった森下さん。>
大学が地域貢献へ取り組むきっかけになったのは、地域住民から学生に対して「学生が集団で歩いているのが迷惑!」など苦情があったことだったとか。
地域の方からのイメージを払拭するべく、まずは学生と共に地域の掃除をすることに。掃除をしながら街をみている間に、街をもっと美しくするためにお花を植えてはどうかと学生からの声があがりました。はじめは大学のまわりから始めたそうです。
そこから「六号坂通り商店街を華やかにしてほしい」という商店街の要望を受け、ハンギングバスケットを思いつきました。最初は試験的に商店街の入口数本の街灯にバスケットを取り付けました。1年半ほど経った今では、なんと、商店街全体では99ものバスケットが設置され、すべてにきれいなお花が咲いています!
最初は「通行人に水がかかったらどうするんだ」「車に当たったらどうするんだ」など反対意見もあったそうです。その一方で、ハンギングバスケットの活動を始めてすぐに、通りがかった地域の方が「そんな水のやり方じゃだめだよ」「この植え方じゃだめよ」と、アドバイスの声もかけてくれるように。
そんな声をかけてくれた方の一人が元お花屋さんだったのです。その方も含め、帝京短期大学や幡ヶ谷本町西町会、六号坂通り商店街振興組合が一体となった「六号坂・花コミュニティ連絡会」が立ち上げられ、ハンギングバスケットの活動が広がっていきました。
<花のスポンサー制度もあり、1口1000円でハンギングバスケットのスポンサーになることができます。>
2017年は6月と11月に誰でも参加できる花の植え替えイベントも開催。自然発生的に「やろう」という声があがり、ハンギングバスケットを撮影した写真でコンテストを行う「六号坂花通りフォトコンテスト」も開催されるなど、お花から繋がった商店街のイベントがいくつも誕生したのです。
帝京短期大学では、ハンギングバスケットの活動以外にも、地域美化活動や地域のお祭り、「渋谷区こどもテーブル」の活動のひとつである「ささはたっこ」、保育園児から高齢者まで地域のさまざまな人たちの交流の場である「ささはたカフェ」などなど、地域のイベントに合わせて年間100以上参加して地域貢献しています。計算すると3日に1回のペースです。すごい……。
地域のお祭りやイベントに若く元気のある学生さんたちが参加することは、町会や商店街の方などにもとても喜ばれるそうです。地域の方と学生さんが顔を合わせる機会が増えたことで、地域の方の帝京短大生を見る目も変わり、「前は学生が歩いていると、うるさいなあと感じたけれど、今はかわいく見えるようになった」と言ってもらえるほどに。活動に参加する学生さんにとっても、コミュニケーション能力や社会性を身に付けることに役立っているそうです。
地域の方にとっても、学生さんにとっても、いい影響のある地域貢献活動。素敵ですね。
お年寄りから若い世代まで、便利に使えるお肉屋さん
帝京短期大学を出て六号坂通り商店街に戻り、改めてハンギングバスケットを眺めていると日々の水やりや手入れが丁寧にされていることを実感します。
せっかくなので、商店街すべてのハンギングバスケットを眺めながら歩こうと思っていると、メンチカツが店頭に並ぶお肉屋さんが目に飛び込んできました。これはもう、絶対美味しいやつです! メンチカツなら片手で持って食べながらのお散歩もできそうです。
<六号坂上公園の隣、水道道路近くにある「グルメ・ナカムラ」。>
<メンチカツはお店の外のショーケースに並んでいます。>
中をのぞいてみると、お肉屋さんではなくスーパーかな?と思うほど多様な商品がズラリ。調味料やお野菜も並んでいます。
そんな何でも揃うお肉屋さん「グルメ・ナカムラ」のご主人にお話を聞いてみました。
最初はお肉だけを売っていたそうですが、スーパーやコンビニが増え始めたころから「お肉を使って肉じゃがを作るなら、玉ねぎもじゃがいもも置けばいいじゃないか。玉ねぎを置くならきゅうりもレタスも置けばいいじゃないか」と、だんだん商品の種類が増えていったそうです。
「最近は料理をあまりしない人も増えてきて、お肉屋さんに通う人も少なくなった」とご主人は言います。しかし、あまり料理をしない人や苦手な人にこそ、このお店はぴったりなんですよ。
既に味がついていて焼けばいいだけのお肉や揚げたてのコロッケもあります。料理に合わせてどのお肉をどのぐらいの量使えばいいのかも教えてもらえます。ひとり暮らしなどで少ししか使わない場合も、50gなんて少ない量も買えちゃいます。
会話をしながら自分に必要な種類や量を買えるのが、コンビニやスーパーにはない魅力ですね。
「元気に活動するならやっぱりお肉。骨などもなく調理も簡単なので、どんどんお肉を食べましょう」と言うご主人はお肌つるつる!!
<やさしい笑顔のご主人。>
お肉を食べると筋肉がつくし、最近はダイエットにも赤身肉ですよね。
お話を聞いてから、お店でいちから作っているという揚げたてのメンチカツを買いました。お肉屋さんが作っているメンチカツ、まさにじゅわ~っとジューシー★でした。
甘~い香りが漂う「古着屋さん」!?
メンチカツを頬張りながらしばらく歩いていると古着屋さんを発見しました。おしゃれだなぁと思って見ていると古着と並んで「BAKE STAND」の文字が。
<「BAKE SATND」下のショーケースに焼き菓子が並んでいます。>
古着屋さんと焼き菓子のお店?? 気になります。そして、しょっぱいものの後に甘いもの、食べたくなりますよね~。お店に入ってお話を伺うことにしました。
こちらの古着&焼き菓子の店「NUTS&MILK」さんはご夫婦でお店をされていて、ご主人は古着を、奥様は焼き菓子を担当しています。
<焼き菓子の種類は季節や日によって変わります。>
ショーケースには美味しそうな手作りの焼き菓子がたくさん。乳不使用の「国産レモンカステラ」と「抹茶と炭のケーキ」を買いました。卵不使用の「ワンコサブレ」も卵アレルギーの息子のために購入。
この「ワンコサブレ」はご近所の方の「卵アレルギーの子が食べられるお菓子があれば」というリクエストで作られた卵不使用の商品です。
「レモンカステラ」を早速ぱくり。ふんわりで甘くて、レモンの香りがさわやか~。「抹茶と炭のケーキ」は甘さ控えめで、ずっしりと食べごたえあります。
お菓子を食べ終わる頃、ハンギングバスケットの取り付けられている街灯の最後の一本まで来ました。お腹いっぱい、大満足の商店街食べ歩き散歩でした。
ほかにも食べ歩きができそうな和菓子店やパン屋さんもある「六号坂通り商店街」。お好みの一品を食べながら、ハンギングバスケットを眺める食べ歩き散歩をどうぞ。
NPO法人 代官山ひまわり 佐々木那都美
2歳男児の母。最近の悩みは、横になると息子がバイオリンのように私の首に挟まって眠ること。私たちが所属する「NPO法人代官山ひまわり」は、子育て世代の女性が、地域や社会とつながりを持ちながら、自分の居場所を見つけて楽しくはたらくための”新しいはたらきかた”を推進する団体です。今回、渋谷区主催の「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」に参加し、街の魅力を広く伝えるための記事作成を行っています。
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