こんにちは、大学生ライターの佐藤でございます。
さて、今回は長編になる予感がしております。
以前、「シブヤ歩道橋散歩」と銘打って、歩道橋の上から見る様々な景色をご紹介したように、今回も企画をご用意しました。
「渋谷区を外周してみた。」
今回は、「渋谷区外周散歩」です。その名の通り、私は渋谷区と他の区の境を歩き続けました。
とうとう私は、タガが外れて渋谷区の周りしか走らなくなった有機物山手線になってしまったわけです。
なかなか気味の悪いこの企画ですが、この外周散歩を通して、私は下記の3つのポイントを知りたかったのです。
⑴渋谷区と他の区の境目を見るだけで違いを感じることはあるのか?
⑵起伏が多い渋谷のイメージは、外周でも感じることはできるのか?
⑶とりあえず外を回れば、おおよその渋谷区内の場所ごとの特徴が掴めるのではないか?
特に気になっていたのは⑵です。「渋谷」の「谷」、青山や代官山の「山」、初台の「台」、道玄坂の「坂」などなど、渋谷区内には土地の起伏を連想させる地名が数々存在します。
しかし、これらは渋谷区内部に広がっており、外周で歩くルートにはこうした地名はあまり見られません。
果たして渋谷区の地名と起伏は比例しているのか、ちょっと検証してみようというモチベーションです。
⑴や⑶についても所々でヒントがありますので、ぜひ佐藤とこの記事の中で一緒にお散歩を楽しんでください。
|まずは道玄坂の坂上からスタート〜恵比寿方面へ
スタート地点は道玄坂です。この周辺は世田谷区や目黒区との境になります。なんとなくですが、「下ればすぐに渋谷がある」というイメージから、渋谷区の端っこにいる認識はあまりありません。
とりあえずマップに従い、渋谷区の淵を歩きます。
ここでしばらく歩くと大使館やモダンな様式の建物、教会が混在し、自分が歩いている時代を錯誤しそうな感覚です。
そして、ここは電線がほとんどありません。建物も低いため、なんとなく空が広いように感じます。
私は散歩をする際、視界に入る空の割合をよく見ています。
景観にこだわるまちの中には、建物の色や高さに気を使うことがありますので、そういったことがあるのか否か、考えながら歩くことも楽しみの一つです。
代官山・恵比寿エリアと目黒区の境目、槍ヶ崎交差点を通ると、交番前になんだか行列がありました。
「みんな並んで職務質問を受けるとは、律儀だな。」と、壮大な勘違いをしていましたが、近くに行ってみるとどうやらランチのために並んでいる様子。
並んでいる方に声をかけてみると、豚の角煮で有名な「一芯」さんというお店の行列だそう。嗚呼、角煮食べたくなってきましたね。
11時なのにランチでここまで並ぶとは、相当美味しいのだろうと興味をそそられましたが、「是が非でも渋谷区を外周する」という謎の使命感に駆られた私は、今度食べると割り切り、先へ進みました。
(今度グルメ旅でもしましょうか。)
|恵比寿南〜白金方面へ
この辺りになると、完全に住宅街です。タワーマンションのような高さはなく、低くて広いお城みたいなマンションが多くあります。
多分ですが、坂が多いとか、地盤の関係で高い建物を建てることが難しいのでしょうか。
緩やかですが、坂がちょっとあったり、曲がっている道が多く、当初の目的であった検証の材料になるかも?と期待を膨らませます。
と、ここで企画ならではの事態が発生。
道の左右どちらを歩くかで、区が分かれてしまう道路に遭遇。
「中目黒」という標識を目の前にストップ。危うく目黒区に魂を売るところでした。危ない危ない。
(決して目黒区に対して敵対意識はございません。実は目黒区大好きです。笑)
|恵比寿二丁目〜広尾方面へ
さて、この企画の洗礼を浴びたところで、今度は華の広尾地区へお邪魔します。港区の白金地区と隣接していることもあり、ちょっと高級感のある佇まいを感じます。
慶◯義塾大学さんの附属校があったり、心なしか特別な施しはなくても、この辺りの空気は洗練されているような感覚がありました。
そして西麻布方面へ。
広尾ガーデンフォレストの横に差し掛かると、途端に視界が緑に覆われ、レジデンスと自然が融合した空間に感無量…
道も広く、車の通りも多くないので、出発当時の光景とは対照的な印象です。
少し歩くだけでここまで景色が変わって、前の空間を想像できなくなるほど、ガラッと変わるものなんですね。
とここで、この土地柄ならではの光景が。
桁がなんだかおかしい。もちろん不動産売買の表記の方法は存じ上げておりますが、にしても凄まじい。
しかし、これは果たして「未公開情報」なのか…
「お気軽に問い合わせ」できる金額でもないし…
色々と突っ込みどころが多いですが、これも散歩の醍醐味です。
それは置いておいて、気になる方はお電話をかけてみてください。
「シブヤ散歩新聞」経由で不動産が購入されると、我々に売買額の20%がキックバックされる仕組みです。(そんな仕組みはございません。)
|表参道・神宮エリア〜外苑・千駄ヶ谷方面へ
さて、個人的になんとなく懐かしい道へ出てまいりました。自分の大学がある地域にも関わらず、コロナの影響で登校していないことを考えれば、懐かしいという感覚が最適かもしれません。(筆者は青山学院大学生。)
そうだとしても、表参道のまちは活気があります。車の通りも人の量も、先ほどの広尾エリアとは段違いです。
マップを見ながら歩いていると、どうやら区境は原宿方面ではなく、表参道のApple Storeのあたりにあるようですので、そこを通過。国立競技場方面へ向かいます。
こんなに素晴らしい競技場を造れるのは、地盤が安定して、且つ平地であるからなのでしょうか。冒頭にもあるように、渋谷区は起伏が多い印象を受けますが、思い返せば代官山・恵比寿、広尾エリアの一部を除いて今までそこまでの起伏は感じませんでした。
オリンピックの開催是非が話題の昨今ですが、なんとなくこの周辺は落ち着きがあるイメージです。柵もあり、まだ工事中のような印象を受けました。いつになるかはわかりませんが、ここに世界中から人が集まった時、まちがどんな活気を見せてくれるのか…
想像するだけで楽しくなりますね。
続いて新宿御苑方面へ。
ちなみに皆さん、新宿御苑は、一部渋谷区のものでもあると、ご存知でしたか?
「新宿御苑は新宿区でしょ?」と私も思っていましたが、実は渋谷区のエリアでもあることが判明。
できれば忠実に御苑の中も渋谷区に沿ってみたいと思いましたが、今回は新宿御苑は閉鎖状態でしたのでまた今度。
コロナの影響で新宿御苑も閉鎖されているようでしたので、散歩企画まで阻害するコロナが許せなくなります。
御苑の中で明確な線引きがあるのか否か、気になるところですが、ここは潔く諦めようと思います。
|新宿〜初台エリアへ
広尾や御苑の自然を楽しんだあと、まちは再びメトロポリタンな形相へ。
ビル、ビル、ビル…!!(カイジ風)
みたいな感じですが、驚きだったのは新宿駅はギリギリ渋谷区との境にあるということです。
非常に言語化が難しいのですが、新宿の都市感と渋谷のそれとではは、若干異なる感覚があります。新宿にはアーティスティックなものもあれば、高さはなくとも幅がある建物もあり、それぞれ色や毛色も違う。(渋谷もそうなのだけれど、やはり何かが違う…)
新宿は建物にもダイバーシティがあって、これがたくさんのファンをつくるのだろうなぁ、と勝手に納得。
渋谷はなんとなくブルーっぽい色の高層建築が多くなっていて、空との色合いが綺麗ですが、新宿のまちづくりにも魅力を感じます。
|西新宿〜本町エリアへ
そろそろ疲労が…
ここまで来ると、もはや徳を積んでいる感覚になってきました。
「歩き切れば来世は…!」みたいな妄想が膨らみます。
そしてこのエリア、起伏が激しい上に区境が異常に入り組んでおり、歩きにくいのです。
マップで見てみると、お家の中に区の境があったり、グンニャグニャに境目が曲がっているため、企画に忠実であればあるほどメンタルを鍛えることができます。
この辺りは今まで見てきたシブヤの印象とは少し異なり、「ローカリティの溢れる住宅街」の印象です。
また、木造建築のお家も稀に散見され、なんだか温かみを感じます。
そしてなんとなくですが、この辺りと今まで通った地域では、政治家ポスターの政党や議員さんが異なる気がします。
やはり住宅地で、他の地域と比べて住んでいる方が多い場所なので、政治家にとって本町は外せないポイントなのかもしれません。
いつか渋谷区議会議員さんの拠点マップをつくってみたら、「半分くらいは本町・ササハタハツエリアだった」なんてことがあるかもしれませんね。
個人的にやってみようと思います。
|笹塚エリア〜北沢エリアへ
本町のあたりを続けて歩いていると、笹塚エリアに入りました。
まちの様子もそこまで変わらない印象でシームレスだったため、どこが境になっているのか気付きませんでした。
ただ、笹塚といえば駅前の商店街や緑道が有名です。このあたりを通るとさすがに「あゝ、笹塚に来たんだなぁ」と自覚します。
(長旅で意識がもうろうとしているため、メジャーなランドマークがないと自分の位置が分からなくなってきます。)
まずは緑道。区の境目で触れる緑道はわずかでしたが、匂いと緑の多さで目が覚めます。
自分の通った緑道は、残念ながらキレイな状態だとは言えない部分でしたが、渋谷区や東京都が今後緑道と水道道路を中心としたまちづくりをしていくそうなので、期待感が高まります。(水道道路は都道ですが、区道に移管するかどうかの議論があるようですね。)
元々上水だったこの地域には、川の恩恵を受けてたくさんの方々が住み始めたと言われていますから、時間をかけてまた美しい景色を取り戻すのだろうなぁと思い、お散歩を再開しました。
そして笹塚の商店街。仲睦まじそうに話す親子、世間話を楽しみながらゆっくり歩くおばあちゃん、今日の晩ご飯を考えている顔の主婦の方々…
初めてここを訪れた時、こういう景色が都心部ではなかなか見られない中で、この商店街は素敵な空間だなぁと感激したことを今でも覚えています。
その時の感情と今のそれにはあまり大きな変化はなく、生活者目線の詰まったこの地域に来るたびに、なぜか毎度写真を撮ってしまいます。
本当は商店街を通りたい気持ちなのですが、区境の企画に忠実な私は、眉間にシワを寄せながら上原エリアへ向かいます。(脚が痛い。)
|富ヶ谷エリア〜ゴール地点(スタート地点)へ
さて、ゴールが見えてまいりました。もう辺りも暗くなってきており、このタイミングで雨まで降り始めました。
富ヶ谷や上原のあたりは大通りが区境になっていたため、正直しっかりとまちの様子を観察することはできませんでした。
ただ、大きな道路(首都高速環状線?)が通っているため、途中から道幅が広くなり、開放的な空間に変わった点が印象的でした。
写真にもあるように、車道だけでなく歩道もかなり広く整備されており、自転車道と歩道が設けられています。
もう少しセパレートされれば歩きやすくなったり、自転車と歩行者の接触事故が減るような気がしていますが、まずは大きな道路でスピードを出す車と自転車の接触を無くすことが先決だったのかと思えば、さもありなんという感じです。
現在、渋谷区では土木課(まちづくりや交通系)を中心にこのほかのエリアでも自転車道と歩道のセパレートを進めるとしているそうなので、このように歩行者も自転車に乗る方も安心して移動できるような環境整備が広がりそうです。
さぁ、偉そうに交通事情に関する見解を述べたところで、いよいよゴール地点の道玄坂です。
通りは大きい割に一通りが少ないため、心置きなくQueenの「We Are The Champions」を唄い、自らの労を労いました。(「サライ」でも良かったかもしれません。)
そして実はこの記事、すでに5000文字近くの分量になっておりまして、そのまま大学の課題として出したいような気持ちに駆られてきました。
振り返って冒頭のポイントに結論をつけるのであれば、以下の通りです。
⑴渋谷区と他の区の境目を見るだけで違いを感じることはあるのか?
区の境目で違いを感じることはなかった。どちらかと言えば、渋谷区内で違いを感じる点が多く、案外区の境目は標識を見ない限りは気づかないレベルでシームレスだった。
⑵起伏が多い渋谷のイメージは、外周でも感じることはできるのか?
多少の起伏を感じた。代官山・恵比寿、広尾、本町、道玄坂周辺はやはり上下があるように思えた。そして左記にある通り、地名と起伏は必ずしも全て一致するわけではないと言える。
⑶とりあえず外を回れば、おおよその渋谷区内の場所ごとの特徴が掴めるのではないか?
間違いなく特徴は掴めた。区で一括りにして良いのか疑問符がつくほど、渋谷区は多様なまちであり、それは暮らす人々だけでなく、人々に合わせたまちにもダイバーシティを見ることができた。
(おまけに、渋谷区の外周は約30kmあることも判明。)
少し狂った企画ではありますが、歩いてわかったまちの魅力や勝手、感じたことはかなりのものでした。疲れますが、やはり何よりも散歩は楽しいものです。
皆さんも何日かに分けて、そこまで区境に拘らずに歩いてみると良いかもしれません。
ご自身なりのまちの魅力発見企画がありましたら、ぜひ教えてくださいね。
長くなってしまいましたが、今回のお散歩はこれにて完結です。
ここまで私の拙い文章とお散歩にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
佐藤颯(さとう・そう)
現役大学生。大学に所属しながら、渋谷区内の採用コンサルティング会社を含め、現在4社でパラレルワークを行う典型的なワーカホリック。(界外編集長とFMラジオの番組パーソナリティもしています。)
休日には40キロ以上も歩くほどの病的な散歩好きで、中でも歩道橋めぐりや会社の本社めぐり(『一部上場の旅』)が十八番。