甲州街道の北側、幡ヶ谷駅から東に100mほど進んだ所に「六号通り商店街」があります。親しみやすい居酒屋や、ドラッグストアや八百屋さん。一歩入れば新しい発見のある専門店など、バラエティーあふれるお店が並ぶ商店街を歩きます!
<ササハタハツ散歩>とは
渋谷区主催の「まちづくりフューチャーセッション」を通じて発見したササハタハツ=笹塚・幡ヶ谷・初台地区の魅力をシリーズでご紹介するものです。ササハタハツを楽しめる散歩ルートとともに、たくさんの人に知ってもらいたい、訪れてもらいたいスポットを紹介していきます。
商店街を支えるアイデアマンな理事長
六号通り商店街の入り口に商店街の理事長、清水さんが営む時計屋さんがあります。六号通り商店街を散歩するにあたり、商店街について清水理事長にお話を伺いました。
「商店街だからといって補助金に頼らず、自分たちでお金を稼ぎなさい」というのが、歴代の理事長からの教えだそうです。人を動かすにも、お店を増やすにも、イベントをするにもお金は必要なもの。
そのために清水理事長が行ったことは、商店街事務所をコミュニティホールとして貸し出したり、段ボールを回収したり、他にも数知れず。その中で私が驚いたのは、街灯に付いているペナントに広告を募集し、そこから収入を得るというものです。私が散歩した日は、新築マンションの広告が垂れ下がっていました。ずらーっと並ぶ街灯すべてのペナントが広告になるわけですから、宣伝効果はありそうです。
<商店街を歩いていると、自然と広告が目に入ってきます。>
ほかにも、子ども向けにはハロウィンを、大人向けにはビアガーデンを。と、さまざまな年代のお客さんに足を運んでもらえるようなイベントを企画したり、道路の舗装を水たまりが出来にくく夏にも涼しいものにしたり、たくさんのアイデアを実現させてきたそうです。これだけのアイデアが浮かぶのはすごいことですね。
通常業務以外にイベントの準備などをするのは大変そうですが、清水理事長は笑顔でこう言います。
「自分たちが楽しんでやらないとお客さんが楽しくないよ」
<ご自身が楽しんでいるのが伝わってくる清水理事長。>
そんな理事長のおかげで、活気のある「六道通り商店街」を、早速お散歩してみます。
渋谷愛あふれるご主人のいる傘専門店
メインの通りからちょっと横道をのぞいてみると、傘がたくさん並んでいるお店が。近づいてみると「渋谷限定」の文字と可愛いキャラクターが目に飛び込んできました。
<傘の専門店、「仲屋商店」の店先。>
<店先には渋谷ならではのかわいいキャラクターがプリントされた傘も。>
気になってお邪魔してみました。
こちらの「仲屋商店」のご主人は、「忠犬ハチ公銅像維持会」の会員なのだそうです。
ここ幡ヶ谷から「渋谷」を盛り上げようという想いで、地域に根ざした商品を作りたいと、ハチ公をモデルにしたキャラクターを考えました。それが「渋谷待犬(しぶやまちけん)」です。ハチ公の物語を継承していきたいという想いも込められています。
オリジナルキャラを作るほど渋谷愛のあるご主人です。そんな「渋谷待犬」をプリントした傘が渋谷限定商品としてお店に並んでいます。
ビニール傘は気軽に買えますし、折り畳み傘などもあり、渋谷土産、はたまた東京土産としてもいいですよね。今や「SHIBUYA」は世界に通じる地名ですから!
<「かわいすぎるのはちょっと……」という人もこれなら使えそう。>
<こちらは折り畳み傘。>
カラーもいろいろあります。シルエットだけのシンプルなものや渋い色は男性でも使えるのではないでしょうか。
「渋谷待犬」の傘以外にもオリジナルの「あめんぼー傘」という商品がありました。子どもが使うことを考えてカラフルに作られていて、透明の窓が付いています。子どもじゃなくても使いたくなる色使いです。
そして、こちらのお店では今では珍しい傘の修理もしてもらえます。
最近はビニール傘を使う方も多いですが、お気に入りの傘を修理しながら長く使うというのも素敵ですね~。
常連さんで賑わうアットホームなお店
そろそろお腹がすいてきたので、どこかでお昼ご飯をと思いキョロキョロ。
この日は2歳の息子も一緒に散歩していたので、息子の好物であるスパゲッティのお店「ハシヤ」に入りました。ここは何度も来たことがある、私も大好きなお店です。
子ども連れで入店すると、子ども椅子や、子ども用のフォークにスプーン、さらには麺カッターまで用意してもらえました。
<お冷やも子ども用のプラスチックのカップで持ってきていただけます。>
私が注文したのはナスとベーコンのトマトソースのスパゲッティ。息子と分けて食べてもお腹いっぱいになるボリュームです。
<ナスとベーコンのトマトソース。大きな具がたっぷり入っています。>
この日は食べ切れないと思い断念したのですが、サラダもドレッシングが美味しくてお勧めです。サラダによってはマスタード風味のドレッシングがかかっている場合もあります。「マスタードは辛くて食べられないかも?」と心配な場合は、サラダにかけず、別容器にドレッシングを入れてくれて持って来てくれますよ~。
美味しくいただいていると、あっという間に店内は満席。外にも待っている方が。
入ってきたお客さんとご主人の「久しぶりだねぇ」「今日は1人?」などの会話があちらこちらで聞こえます。古くからの常連さんがたくさんいらっしゃるようです。
お昼からワインを頼まれるお客さんが居たりして、落ち着いた雰囲気のお店です。決して子ども連ればかりでガヤガヤというわけではないのですが、お子様用の椅子や食器があったり、店を出る時にご主人が息子に手を振ってくれたりと温かいお店なのです。
<左がご主人。オープンキッチンで調理の様子が見ながら待つことができます。>
歴史のある刀の専門店
さて、お腹もいっぱいになったところでお散歩を再開すると、「なまづ屋美術刀剣店」というお店が目に飛び込んできました。
<ガラス越しに刀が見えます。>
こんなところに刀屋さんが!と、前を通ったことがある方は気になっていたのではないでしょうか。
初心者は入ってはいけないのではないかと思う雰囲気……。しかし、思いきって扉を開けてみると、優しいおばあ様が迎え入れてくれました。
なんと、「なまづ屋」さんは大正13年創業の歴史あるお店で、昭和55年からここ「六号通り商店街」に店を構えているそうです。
中には高価な刀がズラリ。刀とともにお値段も迫力があります。現代では、美術品として取り扱われているそうです。
もちろん刀屋さん初体験の私は、初心者過ぎてとんちんかんな質問をたくさんしてしまいました。それでもなまづ屋さんは一つ一つ丁寧に答えてくださいました。
「刀の価値は使っていた人で決まるのですか?」という質問には、「使っていた人はなかなか分からないので、作った職人と、その出来で決まるのですよ。同じ職人さんでも良く出来る日とそうでない日がありますからね。まれに使っていた人の家紋が入っていたりして、誰が使っていたかはっきりわかれば、価値が出ることもありますよ」。
「刀だけではなく、鞘にも価値があるのですか?」という質問には、「鞘はね、持ち運び用のお侍さんが腰にさしているようなやつは拵(こしらえ)と言うんですよ。ずっと拵に入れておくと、錆びてしまった時に抜けなくなるから、刀を保存して休ませる用のものもあるんですよ。ただ、他の刀は反りが合わなくて入らないから、鞘だけでは価値はでないんです。」
お話を聞いてから改めて並んでいる刀を見ると、昔は実際に使われていたのだということがよりはっきりと感じられ、迫力が増したような気がしました。なまづ屋さんでは最近、不用になった置物などの買い取りもしているそうです。
<店内に並ぶ置物。見る人が見ればかなりの価値がありそうです。>
なまづ屋さんは「興味がある方はお話だけでも聞きにきてください」と言ってくださったので、最近のゲームやアニメで刀に興味がある方や、歴史に興味のある方はお話を聞きに伺ってはいかがでしょうか。
なまづ屋さんを出ると息子が大あくびをしたので、今回のお散歩はおしまい。
「六号通り商店街」は私もよく通る商店街ですが、今回お店の方たちからお話を聞くことで、改めて商店街の温かさを感じることができました。これから「六号通り商店街」をより身近に感じて買い物ができそうです。
NPO法人 代官山ひまわり 佐々木那都美
2歳男児の母。最近の悩みは、横になると息子がバイオリンのように私の首に挟まって眠ること。私たちが所属する「NPO法人代官山ひまわり」は、子育て世代の女性が、地域や社会とつながりを持ちながら、自分の居場所を見つけて楽しくはたらくための”新しいはたらきかた”を推進する団体です。今回、渋谷区主催の「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」に参加し、街の魅力を広く伝えるための記事作成を行っています。
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