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CULTURE

渋谷レジェンド散歩No.2 1960年創業、惜しまれながら閉店したガード下のあの店が、ついに復活!

渋谷レジェンド散歩とは
渋谷の街で、数十年。人々に愛され続けた歴史を誇るお店や会社をご紹介するのが、「渋谷レジェンド散歩」です。渋谷といえば「若者の街」といわれますが、実は、長きにわたって活躍している人や商品、サービスがたくさんあります。そんな渋谷の意外性ある魅力をお届けしていきます。

渋谷のガード下にあった蕎麦屋、いや、麺のお店、と言えば覚えている人も多いでしょう。1960年の開業以来たくさんの人に愛され、渋谷の街と共に成長しながら、2015年7月末に渋谷駅前の再開発に伴う立ち退きで、惜しまれながら閉店した「麺KAWAKEI」。

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最終日、たくさんの人に見送られながら閉店した時の様子=麺KAWAKEI提供

最終日には常連さんが入れ替わり立ち替わり訪れ、たくさんの人が外まであふれていました。テレビ局のクルーも入って、1日密着取材。それだけでも、どれだけ渋谷の街に根付いて愛されていた店だったかが、よくわかります。

そのKAWAKEIが2年半の時を経て、昨年12月、渋谷区円山町は神泉駅前に復活しました!

=麺KAWAKEI提供

=麺KAWAKEI提供

ガード下にあった時は道路に面したお店でしたが、新店舗は通りから小道を入った場所にあります。でも、ガード下のお店から持ってきたというこの看板も、

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そして、カウンターの中に立つ店主の川村貴康さんのこの笑顔も、

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ガード下にお店があった時から変わらず、そのまんま!

もちろん、三大人気メニューの「冷やし鶏唐そば」「KAWAKEI流タンタン麺」や「カツカレー」もそのままメニューに残っています。懐かしのあの味がまた、食べられる!! 常連さんにとっては、たまらなくうれしいですよね。

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そして、麺KAWAKEIと言えば、終電を逃した時や、深夜のお仕事が終わった人たちが立ち寄れる24時間営業。新店舗になっても、「朝方に仕事が終わる飲食店勤務の人たちに来てほしいから」と、週に4日(水〜土)は、朝6時から営業しています。

でも、お店を閉めるのは24時。つい最近までたった1人でお店を回していたという川村さんは、お店を閉めた後に近くのサウナでシャワーを浴び、店のソファーでわずかな仮眠を取るだけでまた朝6時にはお店を開けていたというから驚きです。

そんなハードワークを続けながらも、早朝からのオープンにこだわっているという店主の川村さん。貴重なお昼の休憩時間を割いていただき、麺KAWAKEIへの思い、そして渋谷への思いを聞いてきました。

渋谷の成長とともに育まれてきた、お客さんとの、そしてお客さん同士の、つながり

「麺KAWAKEI」の始まりは、戦後まもなく川村さんのおじいさんが渋谷駅のガード下、国鉄の所有地で始めた「川村菓子店」。

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=麺KAWAKEI提供

戦後の小さな売店で、チューインガムやタバコ、新聞、チョコレートなどを売っていたそうです。

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=麺KAWAKEI提供

川村菓子店(左側)の目の前を通る道路を走る車からも、時代が感じられます。

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=麺KAWAKEI提供

そして、国鉄の方から「もうちょっと広げてお店をやらない?」と声をかけられたのをきっかけに、お父さんが立ち食い麺のお店にリニューアルしたのが1960年。品川駅で、韓国人がお湯に入れて温めたうどんにつゆをかけて出していたお店に大行列が出きていたのを見て、立ち食いのそば・うどん・ラーメンのお店を思いついたそうです。

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=麺KAWAKEI提供

最初から24時間営業でスタートしたのは、「放火や犯罪が怖いから、明かりを灯しておくためにできるだけ長くお店をやってほしい」と国鉄側からの要請があったから。お店周辺の掃除や水やりも全部やっていたそうです。

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=麺KAWAKEI提供

1970年代後半、当時小学生だった川村さんは、お店に1人で立ち寄って食べていた記憶があると言います。「まだカウンターに背が届かないから、一斗缶を置いてもらって、その上に立って食べてましたね」

当時、お店を継ぐことは全然考えていなかった川村さんでしたが、20歳を過ぎ、「ちょっと手伝いに入れ」とお父さんに言われて夜中のお店に立つようになってから、自分がやるしかないなという思いになっていったそうです。

「90年代半ばぐらい、渋谷もどんどん変わっていた時期ですね。着席できる席を作ると、クラブやディスコで遊んでいた子たちが明け方に始発を目指してやって来たり、同業者が帰る前に飲んだり食べたりするようになっていって。うちのお店のそういう文化は、お客様が作ってくれたものなんですよね。

やっていくうちにどんどん楽しくなっていきましたよ。最初は調理とかに興味があったわけではないので、ただ毎日が同じことの繰り返したったんですけど、だんだん、自分のお店でお客さん同士がつながるのを見るのが楽しくなっていきました。僕の紹介がなくても、いつもいる顔ぶれの中で自然にお客さん同士がつながったりして。うれしかったですね」

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カウンターに載っているのは、前のお店から持ってきた懐かしの器

突然の立ち退き通告、そして涙で感謝の気持ちを伝えた最後の営業日

 

そんな充実した日々の中、突然飛び込んで来た、渋谷駅前の再開発による立ち退きの話。その時の心境を川村さんはこう語ってくれました。

「信じられなかったですね。ちょっと噂にはなっていたんですけど、まさか僕の代で途切れるとは思わなかったですし、仮にあの場所を再開発するにしても、ちょっと移動するぐらいかと思っていたら、出てってくれと。お袋なんかは国鉄の時代から、そしてJRになってもいい付き合いをして来たから、辛かったですよね。

みんなも頑張れって言ってくれるので、少しでも長く残りたいと思って、裁判を考えたこともありました。でも、感情論は無意味だよ、と弁護士さんに言われて。

吹っ切れたのは『神様は決して乗り越えられない試練は与えない。きっと新しい試練として神様が与えたのだから、あんたなら必ず乗り越えられる。だから頑張りなさい』と言ってくれた、おふくろの言葉でしたね。それからは、ここまでお店をやらせてくれたJRへ感謝して終わろうと思いました」

そして迎えたお店の最終日。最後の1週間、名刺を入れられる箱を置いたら、常連さんたちが「次やる時はぜひ連絡して」などと書いた名刺を、箱があふれるくらいたくさん入れてくれたそうです。そして、前日の夕方からお店を閉める朝9時まで、引っ切りなしに常連客が訪れ、たくさんの人に惜しまれながらお店を閉じました。

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=麺KAWAKEI提供

そして、お客さんたちが帰った後ーー。

「最後、泣きながらJRさんへの感謝状を壁に書いたんです。縁があったらまた一緒に仕事をさせてください、って。悲しかったし、悔しさももちろん残っていましたけど、でも、最後はそういう気持ちになりましたね。情けないですけど、最後カギを渡す時も泣きながら」

でも、その時のJRの担当者はどこで聞きつけたのか、昨年12月の新店オープンの時にお祝を持って駆けつけてくれたそうです。

「JRとしてではなく、個人として来てくれたんです。最後に自分の涙を見ていたので同情もあったんでしょうけど、自分たちの思いがその人には伝わっていたんだなと思って、すごくうれしかったですね。母も喜んでいました」

大好きな渋谷の街で、つながりを大切にしながら新たな歴史を刻んでいく

 

渋谷生まれ、渋谷育ち、そして渋谷でお店を続けて来た川村さん。立ち退きを機にお店をやめるという選択肢もある中で、ガード下のお店を閉めるときには、渋谷の地で再びお店を開く決意を固めていました。

「この商売を辞めてもよかったかもしれないんですけど、でも、人がつながることの素敵さや素晴らしさを、新しい店でまた見ていきたいって思ったんです。待っててくれる常連さんもいるから、ぜひ渋谷でやりたいって思ったし。

実は今のお店、前のお店で仲良くなった円山町の人たちが、この物件が空いたときにすぐに教えてくれたんですよ。今、いい場所の物件は個人で契約するのがすごく難しいんですが、空いてすぐに情報をくれたおかけで契約できたんですよ。だから改めて、人のつながりの大切さを思いましたし、本当にいい関係を築けたなと思います」

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慌ただしかった前のお店よりも、お客様とゆっくり話したいと思い、奥まった場所に構えた新店舗。小料理屋のような雰囲気のカウンターに、ゆったりとしたテーブル席。

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夜は麺を食べるだけじゃなく、お酒を飲みながらゆっくりと時間を過ごしてほしいから、日本酒やワインのラインナップにもこだわり、おつまみのメニューも増やしたそうです。

=麺KAWAKEI提供

=麺KAWAKEI提供

「これからの季節は、外のアプローチのところにテーブルやカウンターを作って、立ち飲みとか外スペースも作ろうと思っています。昔の雰囲気も出してやりたいなと。

雪の日にはまた違う表情を見せたお店入り口へのアプローチ=麺KAWAKEI提供

雪の日にはまた違う表情を見せたお店入り口へのアプローチ=麺KAWAKEI提供

そしてやっぱり、前のお店の時と同じように、朝仕事が終わった人にも来てもらいたいんです。それがうちの店の文化だから、朝6時に店を開けるんです。まだ悪戦苦闘していますけど、いずれ6時から人が来て活気がある感じになって、他の店もランチ前の早い時間から店を開けるようになったら面白いなと思っています。まちづくりというか、人が通るようなお店にしたいと思うんです」

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ずっと渋谷の街を見続けて来た川村さんは、再開発の進め方にはいろいろな面から疑問を抱いています。特に、再開発で高層ビルが増えたことによって渋谷の街を通り抜ける風がかなり強くなったそうで、雨の日には強風に傘を持っていかれた高齢者が道路に押し出されて事故に遭うのではと懸念しています。お店の跡地には広場ができることになっているけれど、あんなに風が強かったら人々がくつろげるのか、とも。

「いろいろな思いはあります。でも、共に生きて来た渋谷の街は大好きなんです。だからこの先も渋谷であたたかい店作りをしながら、人間関係を築き、優しさを持ち続けていきたいなと思っています」

渋谷区渋谷から、渋谷区円山町の神泉駅前へとお店を移した、麺KAWAKEI。渋谷のガード下で長い歴史を刻んだように、円山町でまた、少しずつ新たな歴史を刻み、優しい笑顔の輪が、広がっていくことでしょう。これからの麺KAWAKEIがますます楽しみです。

 

最後に、川村さんからお知らせがあります!

「シブヤ散歩新聞を見て、リニューアルOPENを知ったという方は、ぜひ、『シブヤ散歩新聞を読んで来たよ!』と声をかけてくださいね。

そして、ガード下のお店で15年間働いてくれていたあの彼が、朝のKAWAKEIに戻ってくることになりました!ぜひ会いに来てください!お待ちしています!」

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【麺KAWAKEI】
住所/東京都渋谷区円山町18-2-103
TEL/03-6712-7622
営業時間/6:00〜14:00、18:00〜24:00(水、木、金、土)
11:30〜14:00、18:00〜24:00
定休日/日
https://www.facebook.com/shibuya.kawakei/

 

平地紘子(ひらち・ひろこ)

hirachihirokoシブヤ散歩新聞・副編集長。フリーライター/ヨガインストラクター。10年以上お堅い新聞記者だったのに、3年間のアメリカ生活でヨガインストラクターに転身。でもやっぱり、書くのも好き。かなり色黒なので「サーファー?」と聞かれるけれど、見かけ倒し。スッピンのまま自転車で中目黒界隈を駆け抜けているだけです。ヨガウェアで魅せる筋肉美が最近のプチ自慢。フィットネスやマッサージなど、体にいい情報をお伝えします!
yoga teacher HiRoko HiRachi

 

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