今年の3月、FBのタイムラインで目にしたイベントに、スマホをスワイプしていた指が止まりました。
「女性性に奉仕するヨガ」@BRIGHTON Studio DAIKANYAMA
ん? 女性じゃなくて、女性「性」…… 女性性へ奉仕って、どういう意味が込められているのかな…… しかもヨガで……?
すごく気になりました。
主催の一人が知り合いの男性ヨガインストラクター・Shunsukeさんであること、そして、会場が一度行ってみたかった代官山のBRIGHTON Studio DAIKANYAMAということもますます興味をそそりました。
でも、残念ながらすでに【満員御礼・キャンセル待ち】。結局参加はできなかったのですが、ずっと気になっていました。「女性性に奉仕するヨガってなんだろう…」。
なので、もう一人の主催者・青木トモヒトさんが長野県松本市から東京に来られるタイミングを狙って、Shunsukeさんとトモヒトさんに話を聞きに行ってきました。

トモヒトさん(左)とShunsukeさん
率直に聞きますが、「女性性に奉仕するヨガ」って、なんですか?
Shunsukeさん:ですよね(笑)。タイトルにインパクトがあったらしくて、結構反響がありました。男性インストラクターの友人にも「勇気のあることをするね」とか言われたんですが、僕たちからすると普通のことだったんですよね。やりたいことをやっただけなんです。
「女性性に奉仕するヨガ」が普通のことで、やりたいことだったと…?
トモヒトさん:僕は母子家庭で生まれて、幼いころに祖父が亡くなったため母と祖母に育てられた。女性に囲まれて育っていたんですよ。だから女性の力強さが身に染みてわかっていました。でも、社会的には男性が上、女性が下という面がどうしてもあって、それが社会の形としていびつだと感じていたんです。
そして去年、小野洋輔先生という方のヨガを受けた時に、洋輔先生の師匠にあたるマーク・ウィットウェルが「男性側が女性に歩み寄らなければならない」と言っていることを知りました。早速Shunさんにその話をしたら、マークが書いた「ヨーガの真実」という本を教えてくれて。それを読んですごい衝撃を受けたというか、感動したんです。
男性から歩み寄り、女性への敬意と感謝の気持ちを伝えたい
Shunsukeさん:その本には「男性と女性の関係」という項目があって、男性と女性は手を取り合い、尊敬し合ってやっていくのがヨガのあるべき姿だ、男女はお互い正反対の性質を持っているからお互い尊敬し受け取り合う、と。
男性の中にも女性性があって、女性の中にも男性性があるけれど、男性は社会的に見ると自尊心が強くて、なんでもコントロールしようとする傾向がある。だから尊敬し合い調和をとっていくには男性から歩み寄ることが必要だ、と書いてあったんですよ。語りつくせないんですけど、僕にとっては「特に男性からの働きかけが大切です」という一文が決定的でしたね。
トモヒトさん:歴史を見ると、男性優位で世の中が進んできていて、戦争も男性が起こしていたり、ある国では女性が力を持たないように木の靴を履かせてコントロールしようとしたりとか、そういったことが多くの場所で起こっていた。女性をないがしろにしてきた部分があったわけです。
だけど人間は誰でも女性から生まれてくる。全ての人が子宮というホームでの生活を経験しているし、女性の献身無しに生まれてくることはできません。そう考えたときに、本の「男性と女性に優劣は無く、対等な存在である」というところにすごく共感したんです。
それで自分の生い立ちも含めて、女性の素晴らしさ、偉大さを伝えたいな、命を育む素晴らしさと力強さを持つ女性に、男性である僕らから、感謝の気持ちを込めてヨガを贈りたい、とすごく思い、Shunさんに声をかけさせていただきました。
なんでShunさんだったんですか?
トモヒトさん:わからないですー(笑) でも、Shunさんとの出会いは1年前ぐらいの男ヨガなんですが、会ったときから「なんだこの人は!」みたいな。すごく特別でした。何かが違うというか、何かがあるというか。
Shunsukeさん:優しいね。僕もです。出会った瞬間、物腰がやわらかくて、素敵な気質の方だなと感じました。
トモヒトさん:その後も1、2回しか会ったことがなかったんですけど、迷うことなく「Shunさん、女性性に奉仕するヨガをやりませんか?」って。そしたら「いいですねー」って。
お互い、同じような感性の持ち主だからこそ、互いに響きあったんでしょうね
Shunsukeさん:僕もやりたいと思っていたのでちょうどいいタイミングだったんです。僕はオダカヨガというヨガをお伝えしているんですけど、それと同じく「ハート オブ ヨガ」というマークのヨガのスタイルにすごく心惹かれています。「ヨーガの真実」っていう本の内容がすごく共感できて腑に落ちたので。
というのも、僕はどちらかというとすごく男性的な方なんです、もともとの気質が。
とても穏やかな印象なので、すごく意外です
Shunsukeさん:よく言われるんですけど、ヨガと出会ってから柔らかくなったんですよ、だいぶ。ヨガにおいても出会った当初は突き詰めようとする傾向にあったんです。難易度の高いポーズを攻略したいとか、シリアスになりすぎて、悟りに行き着かなきゃならないといった自分にとらわれて。
でも、本当に呼吸を大切にして、あるがままの素晴らしさを本当の意味で気づかせてくれたのがハート オブ ヨガでした。心が洗われてラクになったというか、ヨガの実践をラクにさせてくれたというか。そして「女性への感謝の気持ちをヨガで贈る」という思いにもすごく共感して。だから今回トモヒトさんと「女性性に奉仕するヨガ」を開催することができて本当に良かった。やりたかったんです。
あたたかさを大切に、寄り添うヨガを
コンセプトはとても良くわかったのですが、それをどうやってヨガのクラスに?
トモヒトさん:ハート オブ ヨガのクラスって、最初に会話があるんです。なのでまずは、どうしてこのイベントをやりたかったのかというお話をしてから、最初に僕がヨガをリードしました。
で、女性を考えた時に男性と一番違うところは、赤ちゃんを育む子宮があるということなんです。これまでの僕のクラスでも、ゆっくり動いて子宮や骨盤周りにアプローチするクラスに対する女性の満足度が高いというか、お腹の中から温まり、体の芯からほぐれると言ってくれるんです。なので、そういうヨガをしようと。
あと純粋に、丹田(へその少し下。東洋医学で気の集まる場所といわれる)と子宮、同じような位置にあるので、そこを意識しようかなと。そしたらオダカヨガがすごく丹田を意識するヨガだったので合うんじゃないかって。僕がまず子宮の周りをほぐすように動いてじんわり緩めるような、というか、エネルギーを貯めるような動きをして、その後Shunさんがオダカヨガで全身を動かして。
Shunsukeさん:丹田から広げていく。繊細に味わっていただけるように、穏やかな呼吸の波になるヨガをしました。世界を優しくつつみこむようなまあるい感じを表現したヨガです。みんなと調和をとりながら、家族みたいな一体感を味わえるような。
今回の「女性性に奉仕するヨガ」は、オダカヨガとハート オブ ヨガが融合した、”ハート オブ オダカ”でもあるんですよ。ハート オブ ヨガは流派の壁を越えていくというか、その原則はどんな流派でも成り立つんです。
そして、ハート オブ ヨガの原則にのっとって、最後に呼吸法と瞑想をしました。
トモヒトさん:いま、ヨガが広まっていろんな流派ができるにつれて、動いた後はシャヴァーサナ(しかばねのポーズ)で休んで終わり、という流れが圧倒的に多いと思うのですが、本来は瞑想のために呼吸法があって、呼吸法のためにアーサナ(ポーズ)があるということをハート オブ ヨガを通して学んだので、その流れで行うことが望ましいと思ったのです。
Shunsukeさん:今回ね、温かさを大事にしたかった。シンプルだからこそ力強い、それが本当のヨガ。見せ方なんていいんですよ。寄り添うもの。
トモヒトさん:そう、寄り添うもの!
Shunsukeさん:それがやりたかった。だから全然、集客とか トモヒトさん:気にしなかったですね。
でもすぐに満席になりました
二人:ありがたいことに。
Shunsukeさん:本当は女性限定にしたかったんですけど、女性限定って言い忘れたんだよね(笑)。イベントページで。あれはちょっとね、ま、しょうがないね(笑)
トモヒトさん:そうしたら最初の申し込みが男性2人で(笑)
Shunsukeさん:でも、せっかくなので見届けてもらおうと思って、男性2名までオッケーにして(笑)。残りの5人は女性です。
とっても少人数ですよね
Shunsukeさん:ここでのヨガクラスはたしか講師を入れて8人しか入らないスタジオなんですけど、アットホームで家族みたいな暖かさがある環境なんです。トモヒトさんも一度行きたいということだったので、あえてそこを選びました。慎ましくやろうと思って。
男性も含めた参加者の反応はどうでしたか?
Shunsukeさん:本当に恐縮ながら「癒された」と言ってくれました。
トモヒトさん:マークがハート オブ ヨガで伝えているのは、現代ヨガの父と呼ばれるクリシュナマチャリアの教えなのですが、クリシュナマチャリアは「正しいヨーガは1つしかありません。それはあなたに合ったヨーガです」と、そしてマークは「どうか、型(パターン)を教えないでください。ヨガは、型とは対極のもの。ポーズの型にとらわれるのではなく、呼吸に任せましょう」と言っています。
だから僕らは、一人一人が呼吸しやすいように誘導しただけというか。だからみなさんが自分の力でヨガをしてくださった。
「ぜひ、男性の方たちにも伝えてください」
Shunsukeさん:僕たちがコントロールをするつもりもなく、目の前にいてくださる方たちがそれを受け止めて自分のヨガをしていただけ。見ていてひとりひとりが輝いていて、僕たちの思いをお伝えできて本当によかったなと。
参加者の中に一人だけ、知り合いではない方がタイトルに惹かれて参加してくれて。FBでしか告知していないのでどこでつながったのかわからないのですが、見つけてくださったことがすごく嬉しかったです。そして「男性がそういう取り組みをするのはすごく素敵」と言ってくださって。
今回、取材を受けることを参加者の方全員に伝えたんですよ。そしたら「素晴らしい取り組みだったので、写真の掲載も大歓迎です」と誰しもが言ってくださって。心から感謝しています。
トモヒトさん:参加した女性の一人が、目を閉じて静かに呼吸する時間のときに涙が出てきたと言ってくれました。そして、こう言われたんです。
「これを女性だけじゃなくて男性にも伝えてください。お二人はハート オブ ヨガを通して女性に敬意を払うことを学んできたので、すごく当たり前のことに思っているかもしれないけれど、それって当たり前じゃないよ。二人にとってはそうかもしれないけれど、一般的にはそうじゃない。だから男性にも伝えてください」と。
Shunsukeさん:僕たちは最初にお話した通り何の疑いもなくはじめたので、その教えが自然と僕たちの中にある。男性の方に「勇気のあることしたね」と言われたことも、納得したというか。
トモヒトさん:本にも「特に男性からの働きかけが大切です」とありますが、男性から歩みよることの大切さが本当に腑に落ちます。
否定的な意見は聞かなかったですか?
Shunsukeさん:SNSという狭い世界の中ですが、まったく僕の耳には入ってこなかったですね。
トモヒトさん:僕の耳にも否定的なのは入ってこなくて。それより、もっとやってほしいという意見が多かったですね。
では、次は男性に伝える企画ですね
Shunsukeさん:やります。
トモヒトさん:そうですね。
Shunsukeさん:まだタイミング、時期をみているところですが、次もやろうとしているので。トモヒトさんが長野県松本市にマツモトブルーヨガスタジオをオープンさせたので、そこでもやりたいし、もちろん東京でもやります。
ぜひ、男性向けも、女性向けも! 今度こそ必ず参加します!
Shunsuke:松本に行ったら、トモヒトさんの家に泊めていただいて、お母さんにご挨拶して
トモヒトさん:(ニコニコ)
お母さんにご挨拶って、ひょとしてお二人は・・・
Shunsuke:いやいや、時々勘違いされるんですけど(笑)
トモヒト:僕たち違います、普通ですから(笑)
<終>
女性性に奉仕するヨガに込めたお二人の想い、そして、いつもとは違う”ヨガ散歩”、いかがでしたでしょうか。
1時間弱のインタビューでしたが、お二人は本当に謙虚で、穏やかで、優しくて、感謝の気持ちにあふれていました。私は女性だけれど、どちらかというと内面的には男性性が強いタイプなので、二人の女性性の部分に私の方が心洗われ、あたたかなものに包まれているような気持ちになりました。ぜひ一度、お二人に触れてほしいなと心から思います。
熊本城復興支援「しなのの城ヨガ」
さて、トモヒトさんは今月長野県で開催される「しなのの城ヨガ」という熊本城復興支援プロジェクトのチャリティイベントの主催者の一人でもあります。全国100の城址で城ヨガを開催し、熊本のシンボルである熊本城の復興を目指そうというエイドプロジェクトの一環です。
この記事でお二人に興味を持った方、お城が好きな方、ヨガっていいなって思った方、ぜひ、熊本城の再建のためにも、渋谷界隈からも足を運びませんか? 「シブヤ散歩新聞で知りました!」とトモヒトさんに伝えてくれたら、何かいいことがあるかも!?
6月18日(日)高遠城/6月25日(日)松代城/7月2日(日)上田城/7月8日(日)松本城
しなの城ヨガHP:http://shiroyoga.nagano.jp
そして、インタビューの中で「女性性に奉仕するヨガ」は ”ハート オブ オダカ” でもあります、という言葉が出てきましたが、Shunsukeさんは10月7日(土)に、小野洋輔先生とのコラボで「Yoga is Yoga 〜ハート オブ オダカ」を東日本橋のロータスエイトで開催します。こちらもぜひ♡ 私も参加予定です!
【スタジオ情報】
BRIGHTON Studio DAIKANYAMA
渋谷区鶯谷町1-2 PAL BLDG 3F+RF TEL/070-5574-7019
http://brighton-studio.com/daikanyama/
【講師プロフィール】
・青木トモヒト
Matsumoto Blue Yoga studio http://matsumoto-blueyoga.com
・Shunsuke Sakami
Odaka Yoga®︎(オダカヨガ) Advanced teacher https://www.facebook.com/sunsuke.sakami
平地紘子(ひらち・ひろこ)
フリーライター/ヨガインストラクター。10年以上お堅い新聞記者だったのに、3年間のアメリカ生活でヨガインストラクターに転身。でもやっぱり、書くのも好き。かなり色黒なので「サーファー?」と聞かれるけれど、見かけ倒し。スッピンのまま自転車で中目黒界隈を駆け抜けているだけです。ヨガウェアで魅せる筋肉美が最近のプチ自慢。フィットネスやマッサージなど、体にいい情報をお伝えします!
yoga teacher HiRoko HiRachi